ECCP(論理的思考)Ⅲ
担当者
単位・開講先選択  2単位 [国際経済学科]
科目ナンバリングSEM-303

授業の概要(ねらい)

 ECCPプログラム修了のための必修(論理的思考)として行います。対象学生は2年ECCP論理的思考クラスを履修できた学生と、新たに規定条件を満たした新3年生から選抜された学生諸君です。西田クラスと合わせ、3年4クラス編成。教育効果を上げるため、各クラスほぼ均等数の履修生とするため、ECCP委員会が該当学生のクラス分けを行います。他の必修と重なる場合、クラス替えなどの適切な措置をとるので申告してください。基本は、指定されたクラスで登録履修です。
 論理的思考クラスは、成果を上げるために通年で実施します。論考Ⅲ、Ⅳを通して受講するよう努めてください。ECCP論理的思考クラスは3年次に実力を試されます。2年時の多様なテーマを「考える」から「思考して組み立てる」へと成長してもらう段階と位置づけます。
 実社会で求められる「論理的思考力」をつけるために、小論作成を通じ、それを人に読ませられる力を養成します。学生諸君が国語として読み書きできて当たり前と考えてきた「日本語」を、英語など外国語と同じように客観的にとらえ直し、社会におけるレベルの高いコミュニケーションの道具として学び直してもらう。それを通じ、自分の思考を整理し、より論理的に考え、表明できるようにする。ただし、クラスは作文教室ではないので、基本的な作文能力は前提条件として要求されます。
 ここでいう論理的思考力とは、第1に小論にまとめた見方や論旨の筋が通っていること、第2に文章の一つ一つの筋が通り、主語と述語が対応した日本文を書けていることーを指します。そのためには、対象となるテキストの要点をつかみ、理解できていることが前提となります。素材として現代日本が直面する経済・政治・社会・外交など諸問題にかかわるテーマをとりあげるので、幅広い知識や関心を求められます。目標を達成するために、日経、朝日、読売など全国紙の社説あるいはインタビュー記事、評論誌の小論文などを基本資料あるいはモデルとして活用する。
 自分の思考回路を点検するには、書くことから始まる。航海する船の航跡を点検するように、それが自分の考えた道筋を客観的に見直せる第一歩となるからです。「話し言葉とおしゃべり」でその養成はできません。

授業の到達目標

 論理的思考力の基本は数学とされています。ただし、日常の諸問題を数学の問題を解くように理解したり、解決したりはできません。また我々は「ことば」で考える。数字にかえて、「ことば」をどう論理的に組み立てられるか。それが社会が求め、また文科系学生が培わなければならない論理的思考力です。情報を整理し、自分の考えをまとめ、他人に伝えて理解してもらう技術を磨いていく。そのために、あるテーマについて一定のスペースで簡潔にまとめていく練習をたくさん重ねる必要があります。またしっかりした論考を理解し、レジュメを作成することで、理解と表現の両方のレベルアップを目指す。関連する分野の知識を確かなものとし、自分の意見や小論に反映できるようになりたい。きちんとした日本語で書ける、使えるようになることが何よりも必要です。

成績評価の方法および基準

 随意行う小論課題、テキストのレジュメ作成(何度か行う)と意見発表の内容、受講態度(以上50%)、最終小論テスト(50%)を総合評価する。小論あるいはレジュメ作成では400字詰め原稿用紙を配布使用します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書全国紙(日経、朝日、読売が主)社説や長文記事コピーを用意する。そのほか、時事的問題点の長文解説記事のコピーなど適宜使用する。一回の講義で一テーマを扱い、教室で書籍は使用しないが、関連材料を自分で考え書籍を参考にしてかまいません。
参考文献

準備学修の内容

 自分の発言や小論を良いものにするには調査と確認作業が不可欠です。学生諸君には常に知識量をあらゆる分野で増やすことが求められます。インターネットの活用だけでなく、当然ながら図書館の図書資料活用を奨励します。一般的に本学経済学部生の読書量が、自分の専門分野を除いた書籍を除くと、低いと判断されています。できるだけ多くの本を手に取り、かつしっかり読まないと、インプット量が足りず表現力が低位にとどまる。その結果、自分の思考力を狭い範囲にとどめてしまう悪循環に陥るのです。「読み、理解する」ことの大切さをかみしめてもらいたい。

その他履修上の注意事項

 講義の最初の段階では、指示された社説を日本語テキストとして手書きし、うつす作業を設定します。それに使う手書き用の専用ノートを用意すること。当然ながら、国語辞書あるいは電子辞書も必携。講義中でも不明なことばを辞書でどしどし調べてください。また、教室へ来ないと、訓練のプロセスに参加しないことになる。逆に過去、出席してさえいれば、良い評価を得られると勘違いした学生が少なくありません。出席が義務、だからといってよい評価が保証されるのではないと理解しておくこと。以下の各回授業内容は昨年度までの内容を参考としたもの。実際にはできるだけ新しいテーマを扱うので、随時切り替えるのでおおよその目安としてください。なお、第1回ガイダンスと第7回の2回分をLMSオンライン講義で行う予定なので注意してください。

授業内容

授業内容
第1回 初回はLMSオンラインで講義ガイダンスを行います。シラバスの「狙い」と「到達目標」を講義形式で説明します。
第2回 日本の国語研究者による日本・アメリカ・フランスの小学生の思考方法、論理の組み立て方の、その書き方の特徴を比較した研究発表をもとに、その違いを理解して論証する。
第3回 上記の研究発表論文をもとに、レジュメを作成する。その解説と評価。
第4回 コロナ感染によるリモート出社など働き方が変わる中で人材採用も変わろうとしている。日本型の就活一括採用の是非。日本型雇用はどう変わっていくのか。専門家の議論を通じて方向性を知ること、彼らの議論のレジュメを作成する。
第5回 1964年東京オリンピックとは何だったのか。それは今回の2021東京五輪を歴史的な視点から考えるのに避けて通れない。市川崑監督の映画「東京オリンピック」の一部映像資料を使い、解説する。
第6回 1940年東京オリンッピクが予定されたが、戦争で中止となった。その3年後、オリンピックが行われる予定だった明治神宮外苑競技場で若い学生学徒の出陣式があった。かれらが見た戦争の現実を知り、日本で開催するオリンピックの意味をさらに深く考えてみる。総括的な小論を書く。
第7回 LMSオンライン講義。オリンピック議論の補足と履修生の小論を議論する。
第8回 コロナ感染が与えた社会的、経済的影響は計り知れない。その出口はどこにあるのか、専門家3人の議論を読み、その主張のレジュメを作成する。
第9回 SNSを交信手段としてだれもが使う時代になり、アメリカでは目上の人(たとえば大学で講義を受けた教官に対し)にそれにふさわしい表現で電子メール文を書けない若者が増大しているという。その問題の根幹に何があるのか。これから社会に出る学生諸君にも教えるものが多い論考を読み、考える。
第10回 戦争被害からの復興を経て、経済成長を遂げた日本の戦後史を歌謡曲の変遷から考える。日本人はどんな歌を聞いてきたか。歌詞を通じて時代背景を知ること。
第11回 医学部入試で起きた男女選別の入学許可問題。入試の合格決定に男女比を配慮した大学当局の判断はどんな問題をはらむのか考察する。医師という特殊な職業で男女比を設定することが、社会全体にプラスなのかマイナスなのか。それが男女平等の普遍的な価値と両立するのか考える。
第12回 前記課題の小論作成。その論評を行う。
第13回 コロナ感染が経済に与えた影響をその時点の論調から選び、レジュメ作成の訓練を行う。
第14回 小論作成の予備日として、これまで扱ったテーマをもとに、設問を設定して小論作成を行う。
第15回 まとめと最終小論作成テスト。長文の論説を読み、与えられた設問に答える形式で小論作成を行う。
もしくは前期で扱ったテーマなどから事前に課題テーマを設定し、小論を作成するか、そのいずれかで前期の最終講義をしめくくる。