担当者 | 安部 良 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | SCE-104 |
21世紀は生命科学(ライフサイエンス)の世紀と言われている。近年、ヒトを含めた生物の持つ遺伝情報やゲノムの解読が進むにつれ、我々の健康や病気を取り扱う生命科学は単に生物学や医学の世界を超えて、地球環境や、政治、経済、文化を含むヒトの活動のあらゆる分野に影響を与えている。今や、生命現象の理解や、組み換えDNA技術に代表されるバイオテクノロジーは、理系、文系を問わず必ず学ぶべき学問領域である。なぜなら、我々は地球という惑星に生きる多様性に満ちた生命体の一つの生物種であるとともに、地球上のすべての生命体の運命を握る唯一の生物種であるからある。
また、我々人類は、生命誕生以来38億年にわたって営まれてきた生存と繁殖の追求というルールの下で、選択と淘汰により形作られてきたという点では他の生物と変わりはないが、巨大化した脳により作り出される宇宙的広がりをもつ内的世界を有するという点では、唯一無比の存在でもある。従って、一回しかない人生を充実し、幸福に満ちたものにしていくためには、人間とは何か、人間が作る世界とはどのようなものかを学び、それをベースに、今、我々の周りで何が起こっているのか、これから何が起こるのかを関心を寄せ、それにふさわしい行動をとっていくことが、充実した、幸福な人生を送っていくために誰しも必要なことと思われる。
本講義は内科医であり、また免疫学者として生命科学の最先端の研究を長年続けてきた研究者が講師として担当する。
前期(ライフサイエンスI)では、宇宙の誕生から生命の出現、人類の出自である霊長類への進化について考察した。後期(ライフサイエンスII)においては、人類の誕生、進化、言語の発生を通じて意識や知性を生み出した認知革命、文明社会の形成を通じて繁栄への道を踏み出すきっかけとなった農業革命について、生物学、遺伝学、医学的な視点を交えて学んでいく。そして人類の繁栄の陰で次々と失われていく地球生物の多様性や環境破壊などの事実を見据えながら、今後とるべき課題解決を模索する。
後期においても、本題に入る前に特別企画として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、概説し、治療やワクチン接種、さらには今後の見通しなどについて2回にわたり解説し、来るべき、With Corona, After Corona社会について考察する。
新型コロナウイルス感染症についての科学的事実の基づいた正しい知識を身に着け、それに基づき、感染拡大を防ぎ、健康や社会を守る行動を実践する。また、生命の誕生から、人類の繁栄の歴史を生命科学の視点から学習し理解する。さらに、現在人類が直面している課題の解決法について自分なりの見解を表現できる。
本講義では知識の習得とともに、ディベートなどを通してコニュニケーション力の向上も目指す。また、課題に対する回答やレポート作成を通じて、論理的な思考と、自分の考えを相手に正確に伝える力を身に付ける。
授業中に行われる質疑応答やディベートへの参加(15%)と各授業ごとに出される課題に対する回答・レポートの評価(85%)により成績を決定する。
課題は、授業時間内に担当教員より示され、回答・リポートはLMSを通じて1週間以内に提出する。受講者からの回答を基に授業内でのディスカッションを行う場合には、その準備のために、授業実施日の3日前を締め切りとするケースもある。
レポートについては、授業で取り上げたテーマや考察した内容が論理的、かつ的確に表現されているかどうかで評価する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 購入テキストなし | ||
参考文献 |
授業を実りあるものにするためには、受講者が授業のテーマについて一定の理解をしておくことが必要で、そのための準備が求められる。受講者は各回の授業内容について「生物」の教科書、科学雑誌、新聞、インターネットなどの関連事項に目を通しておく。
この授業は、知識の習得を目標にしたものではなく、授業内で取り上げられた内容や課題を理解し考察することを通じて受講者がそれぞれの人生に役立てることを目標にしている。従って、授業に集中することを特に求める。また、課題を出す目的は、講義で話したこと、他の講義などで学んだこと、書籍やネットを通じて集めた様々な情報を基に、自分で考え、それを相手にわかってもらえるように表現するという機会を提供することである。それを念頭に作成し、提出する前に、十分に読み返して、論理に矛盾がないか、自分の考えが伝わるように書かれているかを確認すること。
回 | 授業内容 |
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第1回 | オリエンテーション、授業の狙い 特別企画 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(1)COVID-19とはどんな病気か |
第2回 | 特別企画 新型コロナウイルス感染症(2) COVID-19の現状、ワクチン、治療法、With Corona, After Corona社会 |
第3回 | 人類史(1)ヒトの誕生:我々はどこから来たのか 600万年前に大型捕食者におびえひっそりと生きる弱小哺乳類として現れた人類が地球の征服者に駆け上った奇跡の幕開け |
第4回 | 人類史(2)ヒト族の進化 直立歩行と火の使用により生まれた始まった脳の巨大化:その時何が起こったか? |
第5回 | 人類史(3)文化―遺伝子共進化、 生物から、超生物への道、累進的文化進化:文化がヒトを進化させた |
第6回 | 人類史(4)言語の発生から、認知革命 5~10万年前の言葉の出現により、「意識」という内的世界が生まれ、「知性」「感情・感性」、「創造性」に彩られた世界」が生まれた。 |
第7回 | 人類史(5)狩猟採集から農耕牧畜へのパラダイムシフト 品種改良:自然の利用から、自然(生命・生物)の支配へ 農業革命は文明への道を開く、人類史から世界史へ |
第8回 | 人類史の中の感染症(1) 狩猟採集から農耕牧畜へのシフトがもたらした感染症の脅威 感染症が歴史を作る ペストパンデミック:中世封建社会の終焉とルネッサンス 新大陸征服と植民地化における感染症の決定的な役割 インフルエンザパンデミック:第一次世界大戦の終結 現代、及び未来社会の直面する新興・再興感染症 |
第9回 | 人類を救った“神の恩寵”、免疫 疫病の広がりの中で、人類はどのように生き延びたのか。歴史書に語られる“神の恩寵”、免疫 生体防御の要 免疫機構:生命進化が培った自然知能について概説する |
第10回 | 科学革命と近代生命科学の誕生、自然科学への展開 ヒトの繁栄は科学の進歩抜きには語れない。科学革命がいかに人類繁栄の道を開いたかについて学ぶ。 |
第11回 | 健康と幸福 300万年にわたる狩猟採集民としての心と身体を持ち、1万年前の農耕牧畜の開始いらいの食生活に適応・進化して来た臓器をもつ我々人類が、250年前の産業革命により激変した現代社会でどのように、健康で幸せに生きていくのかを考えよう。 |
第12回 | 病気と医療 繁殖・生殖という進化の基準を超えて生きる人類にとって、40億年の選択・淘汰によって用意された生命維持装置は使用期限をはるかに超えている。ほとんどの先進国で死亡原因の上位を占める、がん、動脈硬化による心疾患、脳血管障害や、医療経済学、医療福祉制度上の大きな問題となっている認知症、ロコモ症候群などの加齢関連疾患は生物学的にどこまで“病気”であるのか、なども含めて考えてみよう。 |
第13回 | 生命科学の暴走 今や人類はゲノム編集技術により、動物、植物、微生物の遺伝子に直接手を付け、病気に強く、経済性の高い農作物や家畜を容易に短期間で作ることができる。これらのトランスジェニック生物が広く使われる中で、食品の安全性や生態系への影響への懸念が広がっている。本授業ではバイオテクノロジーの進歩によって生みだされた諸問題について議論する。 |
第14回 | 医療の進歩と生命倫理、医療倫理 医療、医学の進歩は同時に新たな問題を我々に突きつける。延命技術の発達は“死ぬ権利”の侵害を、移植技術の発達は新たな死の形、“脳死”として死生観の画一化を迫るようにも見える。高額な医療が発生する先進医療は命の値段を連想させ、男女の産み分けや生体臓器移植は人権問題が絡まる。出生前診断には優生思想の影がちらつく。君たちはどう考えるか |
第15回 | 総括 |