心理学研究演習Ⅰ
担当者敷島 千鶴教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングSEM-301

授業の概要(ねらい)

 人間の心は、その個人が持ち合わせる遺伝子の影響も受けますが、その時々の状況を反映します。また、その個人がどんな家庭に育ち、どの発達段階にあるのかにも依存します。さらにその個人がどのような社会を生きているのか、時代背景によっても変動し得ます。つまり人間の心理は、個人の中でも、人々の間でも常に変化に晒されています。 
 逆説的ですが、東日本大震災後、幸福感が低下した個人よりも、上昇した個人の方が多いことが質問紙調査より明らかにされています。その理由として、惨事が生きることの幸せや人と人との絆の有難さを改めて感じさせたことが指摘されています。そしていま、コロナ禍と新しい日常が、個人の心にどのような短期的、長期的影響を与えるのか、社会心理学は明らかにすべき大きな研究課題に直面しています。
 本科目では、こうした多様な人間の心を質問紙を使って測定した心理調査データを分析することによって、心理の違いを生じさせる要因について検討を行います。そして、履修者ひとり一人が現代社会の中から問題を提起し、個人の心と社会との間に生じる相互作用を探究していくことを目指します。そのために、「心理学研究演習Ⅰ~Ⅳ」を通じて、①公開された社会調査データの2次利用、及び、②オリジナル尺度開発と質問紙調査の実施という2つのアプローチに依拠した量的調査データの統計的分析を行います。2021年度は、春期に「心理学研究演習Ⅰ」「心理学研究演習Ⅲ」として①を、秋期に「心理学研究演習Ⅱ」「心理学研究演習Ⅳ」として②を行います。
 ①では共通のデータセットを借り出し、②では共同で質問紙の作成、データ収集を行いますが、研究計画の立案、データ分析、研究成果のプレゼンテーション、レポートの執筆は個人で行います。

授業の到達目標

 大量調査データから、これまで気がつかなかった社会の新たな一面を発見し、互いに成果を報告し合うという刺激的な知的作業を体験してもらいたいと思います。

成績評価の方法および基準

 ディスカッションへの参加、プレゼンテーションのパフォーマンス、研究レポートの内容によって評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献

準備学修の内容

 「心理学研究法Ⅱ(心理調査計画法)」及び「パーソナリティ心理学(感情・人格心理学)」の履修を望みます。

その他履修上の注意事項

 現代日本社会に特有な課題に問題意識をもち、それを2年間かけて緻密に解明していくことのできる意欲と持続力の高い履修者を歓迎します。統計ソフト使用スキルの既習は求めませんが、量的データの解析を進めていくため、授業時間外にもパソコンを使った統計解析作業に積極的に取り組むことが求められます。
 LMSの本授業のページ内に、授業に関する情報を掲載しますので、履修者は毎週アクセスするようにしてください。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス(対面授業は行いません。アップロードしたファイルを視聴していただきます。)
第2回自己紹介と各自の研究関心の報告
―ゼミのメンバーと知り合いになろう
第3回4年生:研究成果のプレゼンテーション(1)
3年生:統計ソフトSPSSの演習(1)―データセットの構造を知り、基礎統計量を算出しよう
全員:分析するデータセットの探索
第4回4年生:研究成果のプレゼンテーション(2)
3年生:統計ソフトSPSSの演習(2)―t検定や分散分析を行い、平均値に差があるか明らかにしよう
全員:分析するデータセットの決定
第5回4年生:研究成果のプレゼンテーション(3)
3年生:統計ソフトSPSSの演習(3)―相関分析を行い、2つの変数に関連があるか明らかにしよう
全員:分析するデータセットの配信
第6回4年生:研究成果のプレゼンテーション(4)
3年生:統計ソフトSPSSの演習(4)―重回帰分析を行い、どの変数に効果があるか明らかにしよう
全員:分析するデータセットの整理
第7回3年生:統計ソフトSPSSの演習(5)―因子分析を行い、複数の変数の背後にある共通の因子を探そう
全員:分析するデータセットの概観
第8回全員:研究計画の発表
ー自分が行う研究の目的を明確にしよう
第9回全員:先行研究の紹介
―既に明らかにされていることを調べよう
第10回全員:データ分析
―必要な統計的分析を施そう
第11回全員:統計量の紹介
―結果を図表で表現しよう
第12回全員:データ分析
―結果をどう解釈できるか考えてみよう
第13回全員:研究発表
―スライドを使って研究成果をプレゼンテーションしよう(1)
第14回全員:研究発表
―スライドを使って研究成果をプレゼンテーションしよう(2)
第15回全員:研究論文の完成
―研究成果をレポートにまとめよう