絵画Ⅰ
担当者森  覚
単位・開講先選択  2単位 [人間文化学科]
科目ナンバリングARL-109

授業の概要(ねらい)

有史以来、人間は、「描く」という行為によってさまざまな絵画を生み出してきました。

しかし絵を描くことは、意識に思い浮かぶ思考やイメージをもとに、ある特定の作者個人が自由に表現する創作行為として、はじめからなされてきたものではありません。美術史をひも解くと、絵画は、同じ社会集団に属す人々へ情報を伝える手段として、あるいは、宗教的な意味を持つもの、さらには、みずからの威光を示そうとする権力者の依頼を受けて制作されてきた過去があります。

また、描写表現についても、西洋において画家が芸術家の地位を確立したルネサンス期に、現在見られるような抽象画が描かれることはなく、その当時は、モデルやモチーフを本物のように美しく描くことが求められました。それが描きたいものを描き、自分の個性や主張を表現に反映する行為として、絵画が描かれるようになっていくのは、近代以降に見られる変化となります。

絵画を描くことに対する価値観の移り変わりという問題に注目する本授業では、絵の中に絵画を描いた画中画とよばれるジャンルの絵画を例にあげながら、受講者とともに、絵を「描く」という行為の歴史的変化について見ていきます。

授業の到達目標

① 絵画表現を観察し、人間が生み出してきた美術文化(視覚芸術)について理解する。
② さまざまな知識にもとづきながら絵を読み解く技術を身につける。
③ 画家という一個人に影響を及ぼした同時代の世相や思想、他分野の文化現象について知る。
④ 人間の文化において、描かれた絵画がどのように利用されてきたのかを理解する。
⑤ 絵を描くという行為に与えられた意義と価値観が、地域や時代とともに変化していることに気づく。

成績評価の方法および基準

① 授業態度(10%)
② 中間レポート(40%)
③ 学期末レポート(50%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『名画に教わる名画の見かた』早坂優子視覚デザイン研究所
教科書『西洋絵画のひみつ』藤原えりみ 著、いとう瞳 イラスト朝日出版社
参考文献『絵を見る技術』秋田麻早子朝日出版社

準備学修の内容

①教科書とレジュメをよく読み、内容を理解する。

②わからない言葉を確認して調べておく。

③課題としてレポートなどを提出してもらうので、毎回、授業の内容をまとめておく。

その他履修上の注意事項

本授業は、受講者自らが描き、表現するという実践型の授業ではなく、絵画を読み解き、作品が生まれた文化的背景について知ることを目的としています。
しかし、視覚的な図像を読み解く技術は、絵画の鑑賞時だけでなく、創作を行う際にも有意義な知識となります。
また、現在のマンガ、絵本、紙芝居、写真、ゲームといったメディア表現を読み解く方法としても応用できますので、その点も意識しながら受講してください。

授業内容

授業内容
第1回オリエンテーション
(初回のみLMSでのオンデマンド開講)
第2回絵画を読みとく技術
第3回アトリエに置かれた絵画
第4回西洋絵画と諸ジャンルの展開
第5回たくさん並べられた絵画
第6回説明を加えるための絵画
第7回自画像の中の絵画
第8回オマージュとは何か
第9回オマージュとしてのジャポニズム
第10回構成の要素となった絵画
第11回状況設定のための絵画
第12回アイコン化する「モナ・リザ」
第13回引用される絵画
第14回現代表現の中の絵画
第15回総括 大量複製時代の絵画