西洋史特殊講義3A-Ⅱ
担当者能勢 和宏教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [史学科]
科目ナンバリングHEA-206

授業の概要(ねらい)

現在のヨーロッパでは、EUという超巨大国際機関の下で、各国政治・経済・社会の統合が進んでいます。こうした動きは第二次世界大戦後に本格化したものですが、ヨーロッパ統合というアイデアはそれ以前から醸成されてきました。本授業では19世紀から現在までの時期を対象として、ヨーロッパ統合の枠組みが構築され、そしてそれが批判に直面していく過程について学びます。授業を通じて、EUの下で進められているヨーロッパ統合がどのような考えを基礎としているものであるのか、そしてなぜEUが現在批判にさらされているのかを学びます。

授業の到達目標

・ヨーロッパ統合とはいかなる現象かを説明できるようになる
・現在のヨーロッパを取り巻く危機的状況を、歴史的な観点から考察できるようになる

成績評価の方法および基準

小テスト(30%)、期末レポート(70%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献ヨーロッパ統合史遠藤乾編著名古屋大学出版会
参考文献欧州統合史益田実、山本健編著ミネルヴァ書房

準備学修の内容

現代史にあまりなじみのない受講者も多いと思うので、まずは高校教科書の内容を復習しておいてください。そのうえで各授業で扱う時代について、参考文献を事前に読み、各時期のイメージを把握してから、授業に臨むようにしてください。

その他履修上の注意事項

授業内容

授業内容
第1回・授業の概要と運営方法を説明する
第2回・19世紀ヨーロッパの見取り図
・肥大化する国家の役割と帝国間の競争について学ぶ
第3回・サンシモンのヨーロッパ統合構想
・初期社会主義思想家とされるサンシモンが描いたヨーロッパ統合構想の特徴を学ぶ
第4回・クーデンホーフカレルギーのヨーロッパ統合構想
・日本ともなじみの深いクーデンホーフカレルギーの構想の特徴を学ぶ
第5回・戦間期ヨーロッパにおける統合機運の高まり
・フランス首相ブリアンによってヨーロッパ連邦構想が国際連盟で発表されるまでの経緯を学ぶ
第6回・「ヨーロッパ新秩序」はヨーロッパ統合の先駆けだったのか?
・一見対立関係にあるナチズムとヨーロッパ統合の関連を学ぶ
第7回・第二次世界大戦中の様々な構想
・イタリアレジスタンスによって作成されたヴェントテーネ宣言を中心に、ヨーロッパ統合が戦後の青写真として提示されたことを学ぶ
第8回・第二次世界大戦後に高まる統合の機運
・第二次世界大戦後、数多く形成されたヨーロッパ統合組織と、その活動の限界について学ぶ
第9回・ジャン・モネによるヨーロッパ統合の実現
・シューマン・プランの成功によってスタートするヨーロッパ統合の特徴を学ぶ
第10回・EUが進めたヨーロッパ統合の実態①
・1950年代から1980年代まで、EUの前身にあたる組織が何を実際に行ったのか学ぶ
第11回・EUが進めたヨーロッパ統合の実態②
・1990年代以降、EUが何を実際に行ったのかを学ぶ
第12回・欧州懐疑主義の系譜①
・1950年代から散見されるヨーロッパ統合への反対意見を取り上げ、その主眼を知る
第13回・欧州懐疑主義の系譜②
・1990年代以降目立ちはじめる極右勢力によるヨーロッパ統合への反対意見を取り上げ、その主眼を知る
第14回・ハーバーマスによるEU擁護論
・ヨーロッパ統合を維持するという目標に、いったい何が賭されているのかを知る
第15回・オンライン授業
・授業を総括し、現在のヨーロッパ統合のあり方を長期の歴史的な文脈の中に位置づける