心理学研究演習Ⅲ
担当者木原 久美子教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングSEM-401

授業の概要(ねらい)

 本演習では、幼稚園の協力を得て遊びの観察を行ってきたが、コロナの感染が広がり、幼児の観察はできない可能性がある。そのため、過去のデータを利用するか、大学生を対象にして遊びを観察するかいずれかを選んで、仲間関係・情動交流・現実と想像・コミュニケーション・学習と遊びなどをキーワードに研究する。研究方法として「観察法」の一種である「実験的観察法=研究目的に沿った状況を意図的に設定して観察を行うこと」を用いた演習となる。年6回の行動観察を予定しているが、状況を見ながら実施可能性を探ることになる。本演習では、最初に文献購読や過去のデータをもとに研究計画を立てることになる。観察は役割分担しながら共同して行うことになる。研究テーマに関しては、各自が自由に設定し、学年末にレポートにして提出する。観察は授業のみで終了するが、観察データの分析等は、各自が学内施設を利用して、授業時間外に行うことになる。分析にあたり、何についてどう見るか、視点を持つことが問われる。過去の研究テーマは、「ごっこ遊びにおけるリーダーシップ」「子どものユーモア」「いざこざのきっかけと解決方略」「一人遊びの意味」「過去20年に亘る子どもの遊びの変容」等である。遊びは人を育てるが、学ぶために遊んでも人は育たない。謎多き遊びを好奇心を持ちながら探究してほしい。

授業の到達目標

 観察の研究計画は演習参加者で共同して立案するが、テーマは各自が設定する。研究に際して、対象児者への安全を確保しながら観察することを基本姿勢として身に着ける。その上で、以下の手順でレポートを執筆する。先行研究をもとに問題意識をまとめ、観察の視点を整理し、観察方法(観察対象者、観察日時、観察場面の設定、観察方法・記録方法、観察資料の転記方法など)を明記し、観察データの質的(エピソードの詳細な記述:エピソードはどのような基準で選んだのか、全体の流れの中のどこに位置づくのか、などの情報も必要)、量的(分析対象とする行動の数を数える:行動の単位をどう決めるのか。カテゴリの定義や該当例はどのようなものかも明記)分析を行い、考察し(エピソード分析の場合、数で説得できない分、どのように読み手を納得させるのかを考える必要がある)、全体的まとめ・今後の課題を導き出す。

成績評価の方法および基準

 文献講読のレポート、観察における役割分担の遂行、他の参加者との共同姿勢、観察のふりかえりと観察したいテーマについてのレポート、出席状況に基づき成績を評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書幼児教育のデザイン:保育の生態学 無藤 隆東京大学出版会
参考文献幼児間の親密性:関係性と相互作用の共発達に関する質的考察 高櫻綾子風間書房
参考文献あそびのひみつ 河崎道夫ひとなる書房
参考文献ごっこあそび:自然・自我・保育実践 河崎道夫ひとなる書房
参考文献

準備学修の内容

 観察の計画の立案のための文献講読のほかに、観察の準備作業・観察4回を予定している。そのため、参考書をすべて読み込む時間は十分取れないことから、空き時間に読んで知識を得ておく必要がある。これ以外の文献についても検索の仕方は紹介するが、学生自身で検索し、入手しておくことが求められる。

その他履修上の注意事項

 観察は共同して行うので、授業の欠席や遅刻は原則認められない。対象児者への倫理的配慮を講じつつ観察することが求められる。

授業内容

授業内容
第1回3年生:本演習の目標と年間計画についてのオリエンテーションを行う。コロナの感染状況によっては、幼稚園からの連携協力は得られない可能性がある。その場合、春期は文献購読を中心に取り組み、大学生を対象とした観察を行うか、過去のデータ分析を行う。
4年生:3年次に分析したデータのレポートについて検討する。問題設定、方法、結果、考察と課題について、3年生に紹介する。(3・4年生 オンライン)
第2回3年生:プレイルームの使い方を検討する。玩具の設定や種類によって、遊び方がどう変わるのかを検討する。
4年生:3年次のデータをもとに、何について分析するか、どうしたら分析可能かを考えて研究計画を練る。
第3回3年生:年齢クラスや性別に応じた遊びの違いについて学ぶ。教科書を輪番で読み込む。
4年生:3年次のデータをもとに、何について分析するか、どうしたら分析可能かを考えて作業を進める。
第4回3年生:第1章「遊びとは何か」の輪読 :遊びに関する哲学的な論考と、保育における考え方は違うことを理解し、遊びの研究の意義について学ぶ。
4年生:3年時のデータを分析し直す。
第5回3年生:第5章「積み木と組み立て遊び」の輪読 :構成遊びとして分類される積み木であるが、大型積み木と普通の積み木との違いや、レゴブロックと積み木との違いがあることを学ぶ。
4年生:3年時のデータを分析し直す。
第6回3年生:第6章「ごっこ遊びの分析」の輪読 :ストーリー性のある筋書き(スクリプト)に沿った役割を演じるごっこあそびの特徴を、行為の連鎖や発話からいかに分析するかを学ぶ。
4年生:3年時のデータを分析し直す。
第7回3年生:第7章「造形活動とは」:描いたり、制作したりする活動がどのように始まり、展開していくのかについて学ぶ。
4年生:3年時のデータを分析し直す。
第8回3年生:第8章「協同性を育てる」:遊びを通して、仲間との協同性がいかに育つのか、それは就学後にどのようにつながるのかについて考える。
4年生:3年時のデータを分析し直す。
第9回3年生・4年生:研究計画を立てる。何について研究するのかテーマを考える。
第10回3年生・4年生:研究計画を立てる。何について研究するのかテーマを考える。観察の実施に向けて、役割に応じた行動ができるかチェックする。機器の操作(カメラの操作・映像の保存の仕方・映像の分析の仕方)と観察の流れを把握する。
第11回3年生・4年生:研究計画を立てる。何について研究するのかテーマを考える。観察の実施に向けて、役割に応じた行動ができるかチェックする。機器の操作(カメラの操作・映像の保存の仕方・映像の分析の仕方)と観察の流れを把握する。
第12回3年生・4年生:ゼミのメンバーで、役割交替しながら観察の実施  
第13回3年生・4年生:ゼミのメンバーで、役割交替しながら観察の実施  
第14回3年生・4年生:ゼミのメンバーで、役割交替しながら観察の実施  
第15回3年生:実施した観察の結果を分析する(レポート提出)。
4年生:3年時のデータを再分析する(レポート提出)。(3・4年生 オンライン)