衛生学・公衆衛生学特講
担当者宮川 宗之教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [医療技術学研究科 スポーツ健康科学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 スポーツ健康科学の柱の一つは、日常生活での適切な運動や食習慣などの健康行動を通じて、人々の健康の維持増進をはかるための科学的基礎の確立である。衛生学・公衆衛生学は集団を対象とする社会医学の一分野であるが、超高齢化社会を迎えつつある日本では、健康行動の実践を通じた生活習慣病の予防や認知症対策など心身両面での健康の確保が国民に求められている。本講義では、日本の少子高齢化で予想される衛生学・公衆衛生学上の問題点を解説するとともに、解決策としての健康行動の重要性とその基礎となる行動科学的理論を学修する。

授業の到達目標

(1)日本の少子高齢化の現状とその問題点を公衆衛生の観点から説明できる。
(2)日本の社会保険制度(医療・介護・年金)の概要と問題を説明できる。
(3)主な生活習慣病について理解し予防策としての健康行動の重要性を説明できる。
(4)健康行動を確立するために必要な行動変容の基礎となる理論の概略を説明できる。
(5)ヘルスプロモーションのための諸施策における健康行動の重要性を説明できる。

成績評価の方法および基準

期末レポート(100%)をルーブリックに基づいて採点し、評価を行う。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『わかりやすい公衆衛生学』清水忠彦・佐藤拓代 編ノーベルヒロカワ
教科書『健康行動理論の基礎 生活習慣病を中心に』松本千明 著医歯薬出版
参考文献『公衆衛生マニュアル 2021』柳川洋・中村好一 編 南山堂
参考文献『禁煙学』日本禁煙学会 編 南山堂
参考文献『行動医学テキスト』 日本行動医学会 編 中外医学社
参考文献『行動分析学』 坂上貴之・井上雅彦 著 有斐閣アルマ
参考文献『応用行動分析学』 ジョン・O・クーパー他 著 中野良顯 訳明石書店
参考文献『行動変容法入門』レイモンド・G・ミルティンバーガー 著 園山他 訳二瓶社
参考文献『使える行動分析学 じぶん実験のすすめ』島宗理 著ちくま新書

準備学修の内容

 ウェッブファイルサーバー及びLMSで配布する授業資料及び関連するテキストの章を通読して授業に臨むこと。健康行動に関して、参考書として示した資料に適宜目をとおし、健康の保持・増進に必要な行動変容を促すために効果的な実践・指導について考えること。

その他履修上の注意事項

 授業スケジュールについては柔軟に対応する予定である。授業では積極的な発言を期待している。状況に応じLMSの利用を検討する。

授業内容

授業内容
第1回講義の概要:衛生学・公衆衛生学とスポーツ健康科学
スポーツ健康科学が国民の健康の保持増進に重要なことを説明できる。
第2回衛生学・公衆衛生学研究の基礎:疫学的方法
集団を対象として疾病の原因や対策を考える場合の基礎となる疫学的方法を理解する。
第3回人口の指標:日本の少子高齢化と少子化対策
日本の少子高齢化の現状を理解し具体的な少子化対策について提案できる。
第4回日本の社会保険制度:医療・介護・年金と少子高齢化の影響
日本の社会保険制度の概要を学び、少子高齢化対策の必要性について理解する。
第5回生活習慣病①:メタボリックシンドローム対策としての食と運動
メタボリックシンドロームと特定健康診査・特定保健指導について理解する。
第6回生活習慣病②:たばことお酒
嗜好品による健康影響(含依存性)について理解し対策を提案する。
第7回生活習慣病③:がんと生活習慣
がんの予防と生活習慣(含化学物質等への曝露)の関連について理解する。
第8回働き方と心身の健康:過労死・うつ・ストレス・対処行動
長時間労働による心身の健康障害とその改善策について理解する。
第9回日本人の寿命と死因:平均余命・年齢調整死亡率・主な死因
平均余命の計算や死亡率・罹患率の年齢調整法について理解する。
第10回日本の健康増進政策とヘルスプロモーション:健康日本21・健康増進法・健康行動
健康増進のための政策と人々の健康行動の関連について理解する。
第11回健康行動に関わる行動科学の基礎理論①:実験行動分析
生活習慣改善に必要な行動変容の基礎理論として重要な行動分析学の原理を理解する。
第12回健康行動に関わる行動科学の基礎理論➁:応用行動分析
行動分析理論に基づいたヒトの行動の解析と行動変容のための技法を理解する。
第13回代表的な健康行動理論①:健康信念モデルと自己効力感(セルフエフィカシー)
健康信念モデルと自己効力感について理解する。
第14回代表的な健康行動理論②:変化のステージモデルと計画的行動理論
変化のステージモデルと計画的行動理論について理解する。
第15回まとめ:個人と社会の健康の保持増進に今何が必要か
「今自分(達)に必要な行動変容プラン」について学修結果を踏まえて討論し理解を深める。