宗教文化論Ⅱ
担当者濱田  陽教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングRES-102

授業の概要(ねらい)

 数万年、数千年の宗教文化を、人と人知を超えるものの関係性から生じる事物、及び、その継承として、広く受けとめたい。人知を超えるものは、人の知性、感性、意思などの能力でとらえられない存在をいう。逆に、これらの能力でとらえられる存在を、自然という言葉で表現しよう。さらに、わたしたちは、生きもの、人を自身の判断によって見出している。そして、人の精神的、物質的作為がなされた事物を、つくられたもの、と呼ぼう。こうして、自然、生きもの、人、つくられたもの、人知を超えるもの、の五つの存在から、世界をとらえる視座が開けてくる。
 この視座に、前期で扱った共有可能性と新たに「生なるコモンズ」の概念を加え、人の文化、文明を考察し、その中で、宗教文化の意味を探っていく。共有可能性と生なるコモンズは、宗教文化、文化、文明を考えるために、また、人工知能、パンデミック、人新世などの現代的問題を扱う上でも、今後、重要な鍵となってくるはずだ。

授業の到達目標

 宗教文化と文明へのやわらかな知的視座を養い、複数領域にまたがる知見をバランス良く説明、自身の考察を展開できる思考力、文章表現力を身につける。

成績評価の方法および基準

 授業参加、期末レポートにより総合評価

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『生なるコモンズ−−共有可能性の世界』 濱田陽春秋社、2022年5月刊行
※必ず大学内の書店等で購入して下さい。授業、期末レポート作成に必須です。
教科書
参考文献

準備学修の内容

・毎回の授業の事前・事後学修として、平均して毎週30分以上の教科書通読が、到達目標達成に最低限基本となる。一回の授業で平均11ページほど進むことを目安とする。
・学修内容の理解、期末レポートの準備に役立てるため、教科書から、印象に残った見出しと本文箇所を引用し、その理由を数行書いてLMSオンライン上で提出する課題を出すことがある。

その他履修上の注意事項

・コロナなどの状況を考慮し、対面授業のなかでアプリ・ツイキャスも活用して、欠席時には授業内容をオンラインでリアルタイム、事後に聴講できるようフォローアップを行うなど、多くの履修者が学修ペースをつかみやすくなるよう工夫、授業参加度も履修者の立場から、柔軟かつ公平に評価する。
・「7.授業内容」には教科書各章が割り振られているが、章によって分量の差があるため、じっさいの授業進行はある程度前後することがある。
・授業に沿って教科書本文の着目すべき箇所を自分の判断でマークし、気づいたことや考えを主体的にメモすることで(教科書に書き込んでもポストイットなどを用いてもよい)、授業の到達目標に近づくことができる。
・LMSオンライン上で重要情報はUPしていくため、対面授業前後にLMSの方も確認してほしい。
・出欠についての申告(公欠、学生証忘れ、出校停止、発熱などによる病欠等)は当科目のLMSオンラインの「掲示板」に統一する。掲示板の出欠申告に関するフォーラムをクリックし、スレッドの作成から件名に学籍番号、該当授業月日、欠席理由を簡潔に記入、メッセージ欄に具体的な状況を書いて送信すること。

授業内容

授業内容
第1回第一章〜第六章の前期の学びを振り返り、授業で用いる教科書の特徴について解説する 
第七章 現代文明における共有可能性の危機 一 現代文明と共有可能性
  現代文明に特有な共有可能性の危機について学ぶ 
第2回第七章 現代文明における共有可能性の危機 二 つくられたものの超越性
  (つづき)
第3回第七章 現代文明における共有可能性の危機 三 存在への脅威 
  (つづき)
第4回第八章 持続可能性&共有可能性から、生なるコモンズへ 一 五つの存在と文化、文明
  限定的で開放的な関係可能性の領域としての生なるコモンズの概念について学ぶ
第5回第八章 持続可能性&共有可能性から、生なるコモンズへ 二 持続可能性&共有可能性とコモンズ 三 生なるコモンズ
第6回第九章 共有文化の創出と発見 一 文化の素顔 二 共有文化の創出と発見 三 共有文化遺産
  共有文化について学ぶ
第7回第十章 共有宗教文化 一 共有される宗教文化 二 共有、共存、共振
  無宗教や他の宗教の立場から共有可能な宗教文化について、具体的事例を通じて学ぶ
第8回第十章 共有宗教文化 三 こころの共有宗教文化
  (つづき)
第十一章 共有文明と共有軸 一 自然、生きもの、人
  共有文明の諸条件について学ぶ
第9回第十一章 共有文明と共有軸 
 二 人、つくられたもの、人知を超えるもの 三 共有文明の軸―共有軸
  文明の軸という哲学者ヤスパースの思想を学び、共有文明の軸について考察する
第10回第十二章 共有権―所有権世界を相対化する 
 一 祈りとは何か―カズオ・イシグロ『クララとお日さま』
  小説『クララとお日さま』に登場するAIアンドロイドの祈りについて考察する
第11回第十二章 共有権―所有権世界を相対化する 
 二 所有権世界を相対化する―フランチェスコ&キアラからピケティへ
  アッシジの聖フランチェスコとその弟子聖クララからトマ・ピケティの『資本とイデオロギー』まで、所有権を前提とする世界を相対化する思想について学ぶ
第12回第十二章 共有権―所有権世界を相対化する 三 共有権
  限定的で開放的な権利としての共有権について、その構想を展望する
外のそとへ
第13回後期の授業の到達目標に向けて、期末レポート提出直前のまとめ
 第七章から第十二章までの学習内容で得た新たな視座、知識のポイントをふりかえる
第14回講義のまとめ 
第15回期末レポートのテーマ発表・解説 *LMSオンデマンド形式による授業、第11回前後(12月上旬)に実施予定