日本文化と哲学Ⅰ
担当者濱田  陽教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングPHE-201

授業の概要(ねらい)

 近代日本は、世界に誇る、すばらしい哲学者、思想家を輩出している。
 名もなき職人たちの日常の手仕事に目を向けその美を思想のことばにまで高めた柳宗悦(Yanagi Muneyoshi)、日本初の独創的な哲学世界を切り拓いた西田幾多郎(Nishida Kitaro)、大正期最大のベストセラー小説の作家にして社会事業家として東洋の聖人と讃えられ世界的名声を得た賀川豊彦(Kagawa Toyohiko)、西洋文明の精神的中核としてのキリスト教に向き合い独自の立場を貫いた内村鑑三(Uchimura Kanzo)は、未来につながる開かれた可能性を強く感じさせる存在だ。
 その哲学的、思想的テーマは、ほんものの魅力に満ちている。新型ウイルスのパンデミックや人工知能など新テクノロジーの急激な発展、広がる社会矛盾と格差、解決の困難な地球環境問題に身を置くわたしたち現代人にとっても深い意味を有するため、新たなトピックを効果的に織り交ぜて進めたい。(例:2021年度は西田哲学と合わせ大ヒットドラマ『イカゲーム』を視聴・考察、賀川の協同組合思想と比較しトマ・ピケティ最新刊で日本未訳の『資本とイデオロギー』のエッセンスを解説)
 哲学者、思想家たちがしたためた気骨の文章にふれ、哲学や思想の体験を深めていこう。

授業の到達目標

 哲学的問いと日本文化への関心と思考を養い、他者と対話し、複数の知的テーマを解説しながら自身の考察をまとめることのできる思考力、文章表現力を身につける。

成績評価の方法および基準

 授業参加、期末レポートにより総合評価 

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献 必要な資料は電子データやプリントで配布

準備学修の内容

・次回授業で扱う予定の参考文献を通読しておく。
・学修内容の理解や期末レポートの作成に役立つ予習課題を設けることがある。

その他履修上の注意事項

・コロナなどの状況を考慮し、対面授業のなかでアプリ・ツイキャスも活用して、欠席時には授業内容をオンラインでリアルタイム、事後的に聴講できるようフォローアップを行うなど、多くの履修者が学修ペースをつかみやすくなるよう工夫し、授業参加度も履修者の立場から、柔軟かつ公平に評価する。
・授業中に参考文献中の着目箇所を自分の判断でマークし、気づいたことや考えを主体的にメモするなど、一歩一歩理解を深めて欲しい。
・授業進行は前後することがある。
・小規模授業の特色を生かし、対話ディスカッションの機会を設けることがある。
・LMSオンライン上で重要情報はUPしていくため、対面授業前後にLMSの方も確認してほしい。

授業内容

授業内容
第1回授業の進め方について 注目すべき哲学者、思想家が他に多く存在するため、履修者の関心や授業の進行によって、合わせて取り上げる可能性も検討する
第2回一 柳宗悦と対話する 「民芸」概念を提唱した思想家による白眉のエッセイで、国境を超える文化の不可思議を論じた「喜左衛門井戸を見る」『茶と美』を扱う(2021−2022年に東京国立近代美術館で「民藝の100年」展が大々的に開催されるなど注目が高まっている)
第3回一 柳宗悦と対話する 美と醜の二項対立を超える美についての思想を展開し、世界的版画家・棟方志功をはじめ弟子たちに大きな影響を与えた『美の法門』を扱う
第4回一 柳宗悦と対話する 文化が伝わり、創造される不思議と美について対話ディスカッションを行う
第5回二 西田幾多郎と対話する 日本初の独創的哲学書にして日本でもっとも有名な哲学書『善の研究』を扱う
第6回二 西田幾多郎と対話する 第二次世界大戦中も、人類の思考を文明の破綻から救うべく、根源的な探求を続けた哲学者の「哲学論集」を扱う
第7回二 西田幾多郎と対話する 自己と無をテーマに対話ディスカッションを行う
第8回三 賀川豊彦と対話する ガンディー、シュヴァイツァーとともに東洋の三聖人と讃えられた作家・社会事業家・キリスト者による、日本デモクラシー初の400万部大ベストセラー小説『死線を越えて』を扱う(哲学、家族、恋愛、貧困、資本主義の矛盾、宗教などのテーマがあざやかに展開される、驚くべき作品世界にふれる)
第9回三 賀川豊彦と対話する 与謝野晶子のこころを揺さぶった詩集『涙の二等分』と現代の最先端の社会思想に響き合う協同組合論を扱う
第10回三 賀川豊彦と対話する 孤独と協力について対話ディスカッションを行う
第11回四 内村鑑三と対話する 近代日本が生んだ独立不羈の武士的思想家による「後世への最大遺物」を扱う
第12回四 内村鑑三と対話する 敗戦の逆境において、いかに自らと国を救うかをテーマに論を展開する、インスピレーションに満ちた「デンマルク国の話 信仰と樹木とをもって国を救いし話」を扱う
第13回四 内村鑑三と対話する 信念と環境をテーマに対話ディスカッションを行う
第14回講義のまとめ 期末レポートのための下書きを各自用意し、まとめの対話ディスカッションを行う
第15回期末レポートのテーマ発表・解説 *LMSオンデマンド形式による授業、第13回直後に実施予定