生命倫理
担当者冲永 隆子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [スポーツ医療学科]
科目ナンバリングPHE-102

授業の概要(ねらい)

 生命倫理(バイオエシックス)は、欧米を中心に1970年代に体系立てられた学際的学問で、従来のパターナリズム(医師の独善的医療行為やその態度)に対する反省から、「インフォームド・コンセント」(患者の熟知同意)や「患者の自己決定権」を求める医療消費者運動を契機として、自然環境保護・人種差別・反戦平和・女性解放の社会運動と連動しながら学問的に確立された。
 世界的試練を迎える2020年ーは、パンデミック時代の生命倫理の課題を中心に扱い、本授業ではこれまでの生命倫理とは異なる内容(新型コロナ感染症の医療倫理)、方法(オンラインZoomやYouTubeと対面のハイブリッド方式*希望選択)で実施予定。この授業では、教室に参加、あるいはZoomリアル参加やオンデマンド視聴というかたちのリモート参加での選択希望を認めること、様々な専門をもつ外部講師ゲストスピーカーの招聘授業開催を特徴とする。日時は未定。
https://youtu.be/2UDPyojVk2w(*三脇康生 精神科医「東西の精神医学」)https://youtu.be/b0A8gjF8z9Y(*臼井・秋葉(山梨大学医学部)「安楽死」)
参考までに授業YouTubeのURL。カーソルをURLにもっていき右クリックで「コピー」下あたりの「https…移動」で画面に飛びます。具体的内容は以下の通り。ゲストを呼んだり時宜に適ったテーマ設定ゆえ、シラバス内容予定、随時変わる
◎ コロナ時代の生命倫理1 :1. 限られた人工呼吸器を高齢者から若者に譲る「トリアージ」問題(NHKスペシャル)「公衆衛生の倫理」2. COVID-19末期患者を診続けた医師たちー「死」をどう考える(BBCニュース)  https://youtu.be/R7LbupMizpk、厚生労働省の「人生会議」(ACP)ーコロナを境に従来から積み残されてきたエンドオブライフケアの倫理的課題はどう変化していくか、死生学や臨床倫理学をテーマに扱う。また、最近の医療倫理の出来事、例えば、ALS患者京都嘱託殺人事件や安楽死問題について https://youtu.be/z_DZE_C1TIA 
◎コロナ時代の生命倫理2 :1 .緊急事態下の「限られた医療資源の配分」、「高度集中医療を若者に譲る意志カード」、コロナ前からのテーマ「脳死・臓器提供意思表示カード」
2.「高齢者は早めの"人生会議”を」コロナ禍で日本老年医学会がまとめた、新型コロナウイルス感染症流行期にACP実施を進める提言。「命の選別しないで、コロナで「仕方ない」を恐れる障害者」…の報道。コロナ禍で苦悩する不妊治療の現状ー「不要不急」「延期」問題について。加えて、2019年の公立福生の透析中止 https://youtu.be/hP9dMelVcA8、厚労省「人生会議」ポスター撤収…最近の医療報道を扱う。

授業の到達目標

 受講者が、各教授項目のキーワード(KW)について正しく説明することができること、また、グループ討論「哲学対話」演習によって、他人の意見と比較し、自分の見解を他に示すことが可能になること。時事問題に強くなること、時宜にかなったテーマに向けて専門家との対談ベースにした授業に積極的に参加すること。
 当事者としての自己決定意思能力を養い、決定できる自己をつくるアイデンティティ形成に参与しうるこうした訓練が、大学卒業後、医療従事者として社会で活躍する学生各人に役立つことを期待したい。具体的には、医療現場で遭遇する倫理的なジレンマを扱い、関係者間での倫理的調整を行うための基礎となる倫理に関する諸理論、倫理原則・倫理綱領について教授する。医療現場の倫理的課題に直面するにあたり、倫理原則に則った推論を経て結論を出すことを本講義の到達目標とする。

成績評価の方法および基準

 定期試験(リモート式Googleフォームテスト。持ち込み可)を70%、平常点として1-14回授業での提出課題(10行程度のVTR感想文や授業感想、簡単なアンケートをLMS「課題」提出)など提出状況を30%とする。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『終末期の意思決定―コロナ禍の人生会議に向けてー』冲永隆子晃洋書房

発行年日:2022年4月20日(発行予定)

*購入は強制ではありませんが、試験やレポート等は本書から出題予定です。詳細は教室で説明します。
参考文献『いまを生きるための倫理学』(*冲永共著)
盛永・松島・小出編 丸善
参考文献 『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』 梶谷真司 幻冬舎(新書)
参考文献 『第三版 生命倫理・医事法』(*冲永共著) 塚田・前田編 医療科学社
参考文献 『薬学生のための医療倫理(新版)』(*冲永共著) 松島・宮島編 丸善
参考文献 *教室で参考文献リストを配布します(上記参考文献を含め、「必ずしも」購入の必要はありませんが、中でも『終末期の意思決定ーコロナ禍の人生会議』から試験問題を出すのでできれば購入が望ましいです)

準備学修の内容

 配布資料コピーの次回授業部分を事前に読んでおくこと。
 次回の授業内容を予習し、専門用語の意味等を理解しておくこと。

その他履修上の注意事項

毎回課題をLMS「課題」に提出することで参加・出席点とします。長くなりますが、参考までに、前年度の授業内容・課題をあげておきます。
◎課題1はコロナ生活で困ったこと、逆にプラスになったこと(収束しても続けていきたいこと)、課題2はトロリー問題(一人を救うか5人を救うか…)、課題3はトリアージ問題(限られた人工呼吸器の配分問題、必要なのは3人に対し、呼吸器が2台、高齢感染患者から若者感染者へ移し替えるか?課題4は高齢者から若者へ高度集中治療を譲る意志カードについて、
課題5はトリアージ(優先順位をつける)と反トリアージ(優先順位のトリアージの考え方は優生思想になるからトリアージには反対)、
課題6はCOVID-19末期患者を診続けた医師たち「死」をどう考えるか…BBCニュース)、
課題7は竹之内裕文『死とともに生きることを学ぶ死すべきものたちの哲学』Q1-5、課題8はナチズムと優生思想、課題9は厚労省人生会議ポスター炎上問題、課題10は冲永博論京大こころの未来研究センターACP意識調査、課題11は公立福生病院の透析中止問題、課題12はNHK彼女は安楽死を選んだ、課題13はNHK外部講師の「表現の自由、匿名報道を考える」、課題14ー15はZoom対談 京都嘱託殺人事件…

以上のテーマについて、基本的に行う対面授業の他、ジャーナリスト、医師、哲学・倫理学分野の研究者等、各方面の専門家を交えたZoomでの対談式講義を数回行います。オンデマンド授業で繰り返し、基礎知識を得たり、Zoomでのリアルな双方向授業でその都度わからないことを確認したりするメリットがあります。資料を見ながらの択一Googleフォーム・記述式のGoogleフォームテストと課題提出によって総合評価します。120点満点で60点以上が合格です。試行錯誤して行う関係で、予定が変更するかもしれません。
Zoomのレコーディング収録mp4ファイルをYouTubeにアップしますので、参加できなかった人はオンデマンドYouTube動画を観てください。
対面参加できない人は、Zoomでのリアル参加、YouTubeでのオンデマンド参加いずれかで出席となります。加えて一回ごとの課題提出で参加とします

授業内容

授業内容
第1回生命倫理学成立史(1):軍事医学研究上の倫理(独:ナチスの人体実験、日:731部隊の人体実験)→臨床・医学研究の倫理確立、被験者の権利保護 KW:ナチス犯罪「夜と霧」、ニュールンベルク綱領(1947)、ヘルシンキ宣言(1964)インフォームド・コンセント(IC)【課題1】ナチズムと優生思想を説明できる。 
第2回生命倫理学成立史(2):医学研究上の倫理(米:タスキーギ事件、ウイロー・ブルック事件、ユダヤ人慢性疾患病院事件)、臨床現場の倫理、患者の権利保護 KW: 患者の権利章典(米1973、日1991)、リスボン宣言(1981)、患者の自己決定権、IC 【課題2】 トリアージ、緊急事態の公衆衛生の倫理 を説明できる。
第3回患者の権利(1):治療選択権、Case Study―エホバの証人輸血拒否問題 KW:ヒポクラテスの誓い、パターナリズム、生命倫理4原則(ビーチャム)、臨床倫理4分割表(ジョンセン)J.Sミルの他者危害原則、QOL、SOL【課題3】トリアージ、トロリー問題を説明できる。
第4回患者の権利(2):治療拒否権、Case Study―終末期医療・緩和ケア、延命措置の問題を説明・ディスカッションできる。【課題4】死のリアリティ、COVID-19末期患者を診続けた医師(BBCニュース)KW:緩和ケア、エンドオブライフケア、ホスピスケア、ビハーラケア、スピリチュアルケア、WHOの健康定義を説明できる。   
第5回 外部講師ゲストスピーカー 三脇康生講師による「精神医学」 哲学対話 *日時は未定。前後する…   
第6回終末期医療(1)安楽死・尊厳死 KW:慈悲殺、6要件(山内事件)、4要件(東海大事件) Case Study―日本の現状「山内事件(1962)」「東海大事件(95)」、「国保京北町事件(96)」(DVD:クローズアップ現代「私の呼吸器を外してください」2009、NHK)を説明できる。【課題6】 福生病院の透析中止
第7回終末期医療(2)安楽死・尊厳死 KW:尊厳死、事前指示、リビングウイル、蘇生拒否(DNR)、患者の持続的委任権法(1983)、患者の自己決定権法(1990) Case Study―米国の現状「カレン・アン・クインラン事件(75-76)「ナンシー・クルーザン事件(83-92)」を説明できる。 【課題7】ACP意識調査冲永博論
第8回終末期医療(3)ACP人生会議 KW:「生きハラ」「デスハラ」「死の自己決定権」(NHKバリバラ死生観ラジオ2020)「厚労省の人生会議ポスター撤収問題」(生命倫理学会冲永オーガナイザーWS2020)を説明・ディスカッションできる。 【課題8】厚労省「人生会議」ポスター炎上問題
第9回コロナ禍のメンタルヘルス KW:若年層、女性の自殺率増加、生きにくさを覚える「社会的弱者」いのちの価値についてディスカッションできる。リカバリー回復支援、自殺予防対策の外部講師による授業 【課題9】コロナ禍であぶり出されたテーマ
第10回脳死と臓器移植 KW:脳死、脳死判定、死の三徴候、臓器移植、ドナー、レシピエント、ドナーカード、臓器移植法、有機的統合体説、パーソン論、長期脳死、自殺児童・被虐待児からの臓器提供 遷延性意識障害(持続的植物状態)と脳死の違いを説明できる。【課題10】小児脳死臓器移植の問題
第11回再生医療ー中絶胎児の細胞利用(NHKスペ2005) KW:再生医療、体性幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、中絶胎児細胞(EG細胞)、パーキンソン病患者、脊髄損傷患者の問題を説明できる【課題11】
第12回 生殖医療―選択的人工妊娠中絶、異常胚の破棄 KW:出生前診断、着床前診断、生命の選別、優生思想 Case Study―生命の選択と摂取(DVD:「92’NHKプライム10「あなたは“生命”を選べますか~ここまできた胎児診断」」(NHK)1992)を説明・ディスカッションできる。【課題12】
第13回 生殖医療―生殖補助医療(不妊治療)の現状 KW:人工授精、体外受精‐胚移植、顕微授精、代理懐胎を説明・ディスカッションできる。【課題13】                     
第14回外部講師ゲストスピーカー 蒔田栄講師による聖書の世界観からみた命 *日時は未定。前後する…
第15回期末テスト(Googleフォーム)の答え合わせ、Zoom解説会、随時質問会