基本文献研究Ⅱ
担当者木村 康平教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングJLT-220

授業の概要(ねらい)

 古事記を読みます。
 古事記は和銅5年(712)に成立したと、序文にしるされた、わが国に現存する最古の書物です。上・中・下の3巻からなり、上巻は世界の始まりから神武天皇の誕生までの神代、中巻は神武天皇から応神天皇までの、神と人の中つ代、下巻は仁徳天皇から推古天皇までの人代を語り、推古天皇までの時代を古代とする歴史認識のもとに編まれています。
 天皇王権の由来と正統性を、神話に規範を仰ぎつつ説くもので、中巻には神武東征やヤマトタケ(ル)ノミコトの全国征旅など、王権の確立を語る物語が置かれています。一方で、サホビコ・サホビメきょうだいの叛乱伝承など、王権に抗して倒れた人々の物語をもしるし、その悲劇性が古事記の豊かな文学性のみなもとともなっています。また、下巻には儒教的君子仁徳天皇を先立てて、人の代の、国の統治のあり方が、多くの恋物語に絡めて語られています。
 古事記を読むことを通じて、古典の面白さにふれます。
 また、「三輪山伝説」などを題材として、古代から中世にかけての説話文学の特色や歴史についても学びます。
 さらに、古代の散文と和歌の関係や表現の特質、物語の構造について理解を深めます。
 後期は主に、上巻の終わりと、中巻の神武天皇の伝承とヤマトタケ(ル)の物語を読みます。

授業の到達目標

 古代文学の魅力について、人に説明することができる。
 神話や、古代の物語の、主題や方法について理解することができる。
 古事記についての基本的な知識をもち、人に説明することができる。
 古典語や古典文法について、基本的事項を説明することができる。
 神話や説話文学の歴史について理解し、説明することができる。
 以上を目標とします。

成績評価の方法および基準

 期末試験(50%)と平常点(授業への意欲や参加度・毎回のコメントシート・レポートなど。50%)をあわせて評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 プリントを用意します。テキストは用いません。
教科書
参考文献『『古事記』神話の謎を解く』西條勉中公新書
参考文献『神話で読みとく古代日本』松本直樹ちくま新書
参考文献『古事記注釈』全八巻西郷信綱ちくま学芸文庫

準備学修の内容

・授業後、毎回配付するプリントを参照して復習をすること。
・配付プリントには毎回「質問」がしるされています。各自で、これについてさらに調査・研究すること。
・授業時に紹介した参考書を読むこと。
・自分なりに疑問を立てることが大切です。また、その疑問をもとに発展的に学習すること。

その他履修上の注意事項

 出席することが大切です。
 試験を受けるだけでは単位を修得することはできません。
 また、授業マナーを守るようにしましょう。おしゃべりはせず、スマホは仕舞うこと。
 毎回コメントシートの提出があります。配付プリントの「質問」の答えを記述してください。
 各回の授業内容は、進行状況により、一部変更することがあります。ご了承ください。

授業内容

授業内容
第1回古事記についての基本的な説明
国譲りと天孫降臨神話
第2回出雲大社の創建ー身を隠す神
第3回天皇の死の起源(食べ物として、石とバナナのどちらを選ぶか)
第4回海幸彦・山幸彦①(異界訪問譚)
第5回海幸彦・山幸彦②(山海におよぶ天皇の霊威の起源)
第6回海幸彦・山幸彦③(ウガヤフキアヘズの誕生)
第7回古事記中巻ー神武天皇の東征(天孫降臨と東征の関係)
第8回崇神天皇と王朝交代説
第9回三輪山の神話(日本の神とは、どのような存在か)
(オンライン授業)
第10回ヤマトタケルの物語①(ヲウスノミコトの兄殺し―暴力性と天皇統治の理念との関係)
第11回ヤマトタケルの物語②(クマソタケル討伐―少年英雄の物語)
第12回ヤマトタケルの物語③(父に疎まれる子の悲しみー心の葛藤を散文で描く)
第13回ヤマトタケルの物語④(望郷と死、白鳥と化す皇子ー鎮魂の物語)
第14回古事記下巻の世界(父を殺され、母を奪われたマヨワ王の復讐ー物語の視点について)
第15回古事記下巻の世界(雄略天皇の伝承ー歴史の語り方)