心理学研究法Ⅳ(観察法)
担当者木原 久美子教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングPSY-206

授業の概要(ねらい)

 「観察」は文字通り、「見ること」である。日常的な行為としての「観察」が心理学研究法の1つとして位置づけられる背景には、科学技術の進歩に伴う研究手法の発展にもかかわらず、データの解釈には、それを読み解く作業としての「観察」を欠かすことができないためである。つまり、「観察」は「考える」行為でもある。そのため、考え方によって同じ行動でも「見え方」が異なることが生じる。それを、心理学研究における弊害と見なし、主観を排除した「観察」を行うための工夫が必要と考えるか否かは、実証的研究と実践的研究で異なる。一方、いずれも妥当性や信頼性が担保される「観察」でなければならない点に変わりはない。そこで、本講では、最初に、実証的研究でも実践的研究でも基本とされる会話と映像の「観察」方法について学ぶ。その後、「実践を通して何がどう変化したのか」についての主観を観察するアクションリサーチを体験してもらう。本講を通して、「観察」は単純ながら奥深い研究法であることを実感してもらいたいと考えている。

授業の到達目標

1.「観察」の特徴や方法について知る。
2.3種類の「観察」方法と特徴を学ぶ。
3.研究の目的により「観察」の方法が異なることを学ぶ。

成績評価の方法および基準

 「観察」についてのレポート課題(90%)と出席(10%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献基礎から分かる会話コミュニケーションの分析法 高梨克也ナカニシヤ出版
参考文献ELAN入門:言語学・行動学からメディア研究まで 細川宏通、菊池浩平ひつじ書房
参考文献質的研究のエスノグラフィーと観察(SAGE質的研究キット)  マイケル・アングロシーノ、ウヴェ・フリック他新曜社

準備学修の内容

1.「観察」の方法による配慮点を学ぶ。
2.3種類の「観察」結果をレポートにまとめて提出する。
3. 研究目的に応じた「観察」方法を学ぶ。

その他履修上の注意事項

1.授業はPC教室で行うため、履修出来る人数は最大60名となる。それを超えた場合には抽選となるので、初回の授業に必ず出席すること。
2.分析結果を保存する容量の大きな記憶媒体(USBであれば30GB以上、できれば外付けHDDで容量1TBを推奨)を各自が用意する必要がある。
3.会話分析では、ICレコーダーもしくはスマホなど、音声を記憶する機器が必要となる。

授業内容

授業内容
第1回発達心理学における「観察」の取り組みについて学ぶ。
第2回観察法の「種類」と研究例を学ぶ。
第3回参与観察について学ぶ。「発話行為」を分析する視点について学ぶ。
第4回会話分析1:手法を学ぶ。
第5回会話分析2:データの採取・トランスクリプションの作成。
第6回会話分析3:会話の定義とカテゴリー作成・レポート提出。
第7回動画分析1:分析ソフト(ELAN)の操作を学ぶ。
第8回動画分析2:行動を定義し、カテゴリーを作成。
第9回動画分析3:時間軸に沿ったカテゴリーの展開を分析する。
第10回動画分析4:結果をまとめる・統計処理の仕方を学ぶ。
第11回動画分析5:結果をまとめる・レポート提出。
第12回アクションリサーチ1:PDCAサイクルについて学ぶ。
第13回アクションリサーチ2:データを取る・トランスクリプションを基にPDCAサイクルを整理する。
第14回アクションリサーチ3:仮説モデルを作成する・レポート提出。
第15回最終課題のレポート提出。(オンライン)