特別演習・民法Ⅱ
担当者中田 好泰
単位・開講先選択  2単位 [法律学科 2017年度以前]
科目ナンバリングCIL-402

授業の概要(ねらい)

 この授業は、教科書の設問を検討することにより、具体的な事例の分析能力を高め、公務員試験などの各種資格試験に対応できる力を養うことを目的としています。
 分野としては民法の物権法・担保物権法を取り上げ、基礎的な知識や思考の流れを板書して理解を深めていきます。
 LMSには、教科書の各設問に関する答案例や参考判例等の資料を掲載します。授業では私が作成した答案例をたたき台として検討することで皆さんの答案作成能力のレベルアップを目指します
 授業を進めていく中で、適宜、実際の民事裁判の在り方や弁護士の弁護活動の模様について言及します。

授業の到達目標

➀ 具体的な事例に対して条文や原理原則を当てはめて分析し解決する能力を身に付ける。
➁ 分析結果を踏まえて答案として形にする能力を身に付ける。
③ 知識の整理と確認を行うことにより公務員試験などの各種資格試験に対応できる能力を養う。

成績評価の方法および基準

 定期試験(100パーセント)で判断するのが基本です。試験の形式は、①正誤問題(4問)、②簡潔な事例問題(1問)を出題します。正誤問題では知識の正確性を確認し、事例問題では事例の分析能力を問うことを主眼としています。なお、試験に際しては、教科書・ノート・六法・電子辞書などの持込みを全て許可しています。
 ただ、一昨年と昨年度はコロナ禍の影響もあり、LMSを利用した課題の提出により成績評価を行いました。事例問題について期日内にレポート(A4のレポート用紙3枚程度)を提出していただきました。今年度も諸般の事情を考慮し、皆さんの意見も伺った上で対処したいと思います。
 なお、定期試験の実施内容に関しては、授業中に適宜言及します。LMSの「連絡事項」でもお伝えしますので確認をお願いしたいと思います。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書Law Practice民法Ⅰ【総則・物権編】(第4版)千葉恵美子・潮見佳男・片山直也編商事法務
参考文献民法判例百選Ⅰ 総則・物権〔第8版〕(2018)潮見佳男・道垣内弘人編有斐閣

準備学修の内容

 教科書ではテーマとなる設問が各項目ごとに記載されています。この設問は実際の裁判例をモデルとして作成されており、世の中で生起する現実のトラブルを感じ取る上で非常に有益です。そこで、この設問をなかば小説のように読み込んで授業に出席していただきたいと思います。民法の実力の1つに事例分析能力が挙げられますが、教科書の設問の読み込みはこの事例分析能力の向上に最適といえるからです。
 LMSに、答案例や参考判例等の資料を事前に表示します。答案例を参考にしてご自身でも各設問に関する答案構成を行うことをお勧めします。具体的事例の分析能力の向上に役立つからです。

その他履修上の注意事項

① 各種資格試験への対応を配慮していますが、事例分析能力と答案作成能力の向上を目指していますので、法的感覚を磨くことを目標とする学生諸君の参加を希望します。
② 授業では教科書の重要な箇所について適宜言及します。定期試験は重要箇所をチェックした教科書と板書内容を記載したノートで十分対応できるよう配慮していますので、その点に留意して授業に臨んで頂きたいと思います。
③ LMS上に表示した答案例は授業で検討しますので、教科書と六法と答案例は必ず持参していただきたいと思います。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス
教科書や定期試験の実施方法等について説明します。また、教科書の設問を使用して模擬的な授業を少し行う予定です。みなさんに授業に関するイメージを持って頂くことが狙いです。
第2回物権的請求権
所有権に基づく請求権とその相手方~行為請求権説について~同説に対する批判
第3回物と添付
賃借人の費用によって賃借物に物を附属させた場合の法律関係~同時履行の抗弁権及び留置権の成否~賃借人が建物を増築した場合の法律関係
第4回所有権の移転時期
他人物売買と民法116条の類推適用~所有権移転時期に関する一般理論~契約の性質決定・契約の成立時期・所有権移転時期の特約の認定
第5回取消しと登記①
法律行為の取消しと物権変動~所有権に基づく妨害排除請求としての登記請求
第6回取消しと登記②
詐欺による取消しと第三者
第7回民法177条の第三者の範囲
第三者無制限説vs第三者制限説~第三者の客観的要件と主観的態様~背信的悪意者排除説の確立~背信的悪意者の認定基準~背信的悪意者排除説への批判
第8回即時取得:192条
即時取得制度の意義~占有取得の形態と即時取得の成否
第9回共有物の管理①
共有物に関する条文理解の確認~共同相続人間の明渡請求~共同相続人の「占有」・「使用・収益」
第10回共有物の管理②
共有物の明渡しが認められる場合~合意による無償使用関係成立の可能性
第11回留置権の成立および効力
留置権の意義~留置権の成立要件~被担保債権と物との牽連関係~不法行為によって占有が始まった場合
第12回抵当権の効力の及ぶ範囲
抵当権の効力は石灯籠に及ぶか~石灯籠につき物権的請求権を行使することができるか
第13回抵当権に基づく明渡請求
価値権としての抵当権~不法占有者の排除~権原占有者の排除~抵当権に基づく妨害排除
第14回総復習①
第15回総復習②