社会調査法Ⅱ
担当者池 周一郎教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSTS-202

授業の概要(ねらい)

 社会学は実証的な学問として19世紀に構想されましが、19世紀中頃になりやっと実証的な調査が行われるようになりました。信頼性の高いデータを集めることは、実証的な学問の基本です。それゆえ、社会学の基礎は実証的な社会調査にあると考えることもできます。社会調査とは、信頼できるデータを収集し、社会のさまざまな問題を正確に捉えて、その原因を分析し対策を考えるという、きわめて現実的な目的を持って行われることが多くあります。その中でも質問紙調査は、特に重要な位置を占めています。社会調査法Ⅱでは、質問紙調査=調査票調査の企画・設計・実査・集計分析までのプロセスを系統的に学びます。すぐれた社会調査は正確なデータ収集の為に、漫然と調査結果を眺めているだけではあずかり知らぬ、いろいろな工夫がなされています。受講者は、それらの工夫がなされた効率的な社会調査の実施方法を知識として修得することになります。しかし、社会調査で判ることには限界もあります。限界を知るのが真の知性です。社会調査の限界を自ら考えることもねらいです。

授業の到達目標

 社会調査に関する基礎的な知識を身につけます。特に質問紙調査の企画・設計・実査・分析を理解します。社会学科卒業者にふさわしい社会調査に関する教養を修得すること。

成績評価の方法および基準

 試験の得点60%とLMSでの課題15%と平常点25%を加算して評価する。試験は中間テスト(50点満点)を授業中に行い。試験期間に期末テスト(100点満点)を行う。期末テストの結果が重視されるが、中間テストで学習達成度を各自確認されたい。平常点のウェイトが小さいが、出席しなくてよいというメッセージではない。出席状況とテストの得点は正の相関関係があり、出席してテストの結果が出ると理解されたい。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『社会調査の基礎 社会調査士A・B・C・D科目対応』篠原 他 著弘文堂
教科書
参考文献『新・社会調査へのアプローチ: 論理と方法』大谷 他 編著ミネルヴァ書房

準備学修の内容

 各回の範囲に該当する教科書の箇所を前もって読んでおき、疑問点などを明確にしておくこと。授業後に出されたLMSでの宿題をきちんと処理すること。中間テストを行い答案を返却するので、その結果をしっかり復習しておくこと。期末試験の問題の幾つかを、受講生に作問してもらうので、どのような試験問題を作ろうかという問題意識を持って作問の準備をしておくこと。

その他履修上の注意事項

 出席して静かに講義を聞いてノートを取ってもらいたい。社会学に対する一般的な教養を身につければ、講義内容のよりよい理解が期待できます。わからないことはそのままにしないで、すぐに質問してください。自分でも教科書を読んでノートを見て勉強してください。LMSの復習を行いましょう。

授業内容

授業内容
第1回社会調査の設計と仮説  
 仮説を立てて調査する
 仮説とは何か.理論命題と作業仮説と指標
第2回調査票とは何か
 調査票の成り立ち
第3回全数調査と標本調査
 全数調査と標本調査を比較しその得失を論じる.調査の精度
 
第4回サンプリングの重要性
 サンプリングの重要性をアメリカ大統領選の予測の歴史から検討する
第5回無作為抽出法と有意抽出法
 無作為抽出法と有意抽出法の違いを理解させる
第6回無作為抽出法と標本誤差
 単純ランダム・サンプリングによる標本誤差と系統的抽出法の具体的手順
第7回空間的に広範に分布する大規模な母集団に対する方法
 多段抽出法と層化抽出法
第8回調査票配布・回収方法のアラカルト(中間テスト実施予定)
 郵送法,留置き法,集合調査法 
 面接法,電話調査法,Webページの得失
第9回調査方法の選択
 クロスセクショナル調査法,パネル調査法,繰り返し調査法
第10回調査票の設計
 調査項目の列挙と先行研究へのリファー,検証の目標設定
 サブクエスチョンの設定.項目のスリム化の必要性
第11回調査票の作成
 ワーディング,回答選択肢の選択
 ワーディングの留意点(ダブルバーレル質問,キャリーオーバ効果等)
 単一選択,多肢選択,スケール,自由回答等の各形式をコーディングを意識して選択させる
第12回社会調査の実施
 調査票の回収時の留意点
 ダブル・チェックの必要性と低回収率が系統誤差を大きくすることを理解させる
第13回集計作業
 エディティングとナンバリング,有効標本数の確定・有効回収率
 コーディングとデータ・フォーマット
 単純集計とクリーニング
第14回分析
 基本的な集計作業
 統計ソフトの選択,単純集計表,クロス集計表の作成
第15回報告書の作成
 報告書の作成と次なる調査に向けて