西洋政治思想史Ⅱ
担当者石川 敬史教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [史学科]
科目ナンバリングHIT-206

授業の概要(ねらい)

政治思想史という学問は、歴史学とリンクしながらも歴史学とは趣の異なる学問です。歴史学とはエビデンス(証拠)とファクト(事実)からありのままの真実を追求する学問ですが、政治思想史という学問は、「人間が世界をどのように観てきたか」、そして「価値判断」の基準をどのように構築してきたかを考察する学問です。規範を持っている、あるべき価値判断ができるというのが、人間と動物を分ける違いだとするなら、政治思想史とは人間学でもあります。それを歴史的に外観するのが政治思想史です。そして、今日我々が生きている世界の「あるべき姿」の支配的思考様式となったのが西洋政治思想です。この授業を通して、西洋的価値観とは何かを把握するのが授業の狙いとなります。それはとても楽しい営みですので、ぜひ楽しむつもりで参加してください。
後期は、初期近代における社会契約論を入念に行い、さらに現代に至る思想状況を検討します。

授業の到達目標

現在の世界で目にする状況を、思想史の文脈から理性的に考えることができるようになる。
西洋中心主義を相対化し、多様な世界を理解することができるようになる。
今日、教養と言われるているものの基本的概念を獲得することができる。

成績評価の方法および基準

前期に2回提出する小レポート:20%
授業最終日に行われる授業内試験:80%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特に指定しない。授業毎に資料を配布します
参考文献政治思想史入門堤林剣慶應義塾大学出版会

準備学修の内容

復習中心で学修を行なってください。配布した資料をよく読み返し、ノート作りを行なってください。

その他履修上の注意事項

教員への質問は遠慮なく行なってください。よく分からない箇所を消し込んでいってください。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス
授業の運営方針、後期授業の概要、単位取得要件の説明
第2回トマス・ホッブスの政治思想(1)
1 近代国家への道
2 ホッブズの哲学と思想
第3回トマス・ホッブズの政治思想(2)
1 『リバイアサン』と社会契約説
2 自然状態という思考実験
3 科学と法学による伝統の打破
第4回ジョン・ロックの政治思想(1)
1 革新的にして敬虔なるジョン・ロック
2 ロックの自然状態と政治社会
第5回ジョン・ロックの政治思想(2)
1 『統治二論』と社会契約説
2 ホッブスとロックの比較
3 ロックの『統治二論』の背景とその影響
第6回ジャン=ジャック・ルソーの政治思想(1)
1 異常なる才能の理想と現実
2 『学問芸術論』と『人間不平等起源論』の検討
第7回ジャン=ジャック・ルソーの政治思想(2)
1 『社会契約論』という奇怪なる書物の内容
2 『エミール』という偉大にして歪な教育論
第8回ルソーの政治思想の「その後」としてのフランス革命(1)
1 フランス革命ー人民主権を求めた苦闘の果て
2 「人権宣言」、「1791年憲法」
第9回ルソーの政治思想の「その後」としてのフランス革命(2)
1 ジャコバン派の台頭と恐怖政治
2 ナポレオン帝政とフランス革命の伝搬
第10回アダム・スミスと経済思想
1 スコットランド啓蒙
2 市場の発見
第11回資本主義を考える
1 マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
2 エリック・ウィリアムズの『奴隷制と資本主義』
第12回社会主義思想
1 空想的社会主義
2 カール・マルクスの「科学的」社会主義
3 『資本論』と『共産党宣言』
第13回現代民主主義を考える
1 政治思想史における民主主義の再確認
2 民主主義とポピュリズム
第14回まとめと授業内試験
第15回LMSによる総括講義