児童生徒の心のケアと精神科学
担当者藤井 靖史教員紹介, 蒲地 啓子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [教職研究科]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

【教育と医療の連携】関連科目 
 講義を通じて、児童生徒の心の定型発達を理解する。
 様々な異常行動について鑑別すべき身体疾患を理解する。
 心のケアに対する科学的根拠を精神科学の立場から理解する。
 児童生徒の心の課題に対して、教育現場でどのように対応していくかを考え、討論を通じて理解する。
 院内学級などの特殊な環境におかれる子どもをサポートする上で考慮すべき問題点を整理して理解する。
 事例検討を通じて、児童生徒の心のケアにおける家庭、学校、地域社会、保健医療機関との連携の必要性を理解し、学校と関連機関との連携をコーディネートする能力を養う。
 なお、講義では履修生の知識・経験に即して、ゲスト・スピーカーを3回程度招聘する。ゲスト・スピーカーの助言により本講義内容を多角的視点から捉える力を身につける。

授業の到達目標

 <A類>
  ・情動や行動に関わる脳の働きを理解する。
  ・子どもの心の発達に関する医学的知識を身につける。
  ・子どもの心の問題を理解し、その対応方法を身につける。
 <B類>
  ・子どもの心の問題に対して、家庭と学校、保健医療施設との連携を図る能力を身につける。
  ・所属する学校を超えて、他校や地域教育委員会との連携を図る能力を養う。

成績評価の方法および基準

 児童生徒の心の発達に対する理解度(レポート)60%と、リアクションペーパー20%、演習に取り組む姿勢20%を基にして評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献達障害医学の進歩10有馬正高 他診断と治療社
参考文献小児ケアのための発達臨床心理岡堂哲雄へるす出版
参考文献神経心理学評価ハンドブック田川晧一西村書店
参考文献小児心身医学の臨床冨田和巳診断と治療社
参考文献思春期医学臨床テキスト別所文雄 他診断と治療社
参考文献乳幼児期の脳の機能三宅良昌新興医学出版社
参考文献ナースとコメディカルのための小児科学白木和夫 他日本小児医事出版
参考文献発達臨床教育相談マニュアル杉原一昭 他 編集川島書店 他

準備学修の内容

 第1回の授業で配布される授業用オリジナル・テキストをもとに、授業で取り上げるテーマについての基本的知識については事前に調べておき、教育現場における課題について予め整理しておくこと。

その他履修上の注意事項

 学習した知識内容を常に最新のものに置き換えて行くことが必要である。その為には、学生各自が在学中から知識を更新していくための学習方法や情報獲得手段を獲得することが望まれる。リアクションペーパーには事前学習で調べた内容、授業内容に関する質問・意見を記載する。質問や意見に対しては授業者が回答するので、リアクションペーパーを利用し、学びを深めて欲しい。

授業内容

授業内容
第1回教育現場における子どもの心の課題について、A類学生は実習等の経験から、B類学生は教職経験から整理して発表する。
第2回情動や行動に関わる脳のはたらき
情動や行動に関わる脳の解剖と生理機能について理解する。
第3回幼児期の心の発達とその背景
幼児期の心の発達とその背景にある脳の生理機能の発達、環境要因の影響について理解する。
第4回学童期の心の発達とその背景
学童期の心の発達とその背景にある脳の生理機能の発達、環境要因の影響について理解する。
第5回幼児期の問題(夜尿、頻尿、夜驚、指しゃぶり、チック)
幼児期にみられる異常行動に対する医学的アプローチを理解し、実例を通じて家庭や医療機関との連携を学ぶ。
第6回幼児期・学童期の問題1(登園拒否・登校拒否、ひきこもり)
登園拒否・登校拒否、ひきこもりに関して、心理学的アプローチと医学的アプローチについて理解する。
第7回幼児期・学童期の問題2(登園拒否・登校拒否、ひきこもりの事例検討)
・A類学生は、登園拒否・登校拒否の実態を調査して発表する。
・B類学生は、自験例について問題点を整理して発表し、全体討論の司会をする。
第8回幼児期・学童期の問題3(いじめと被虐待児)
いじめと被虐待児に関して、心理学的アプローチと医学的アプローチについて理解する。
第9回幼児期・学童期の問題4(いじめと被虐待児の事例検討)
・A類学生は、いじめと被虐待児の実態を調査して発表する。
・B類学生は、自験例について問題点を整理して発表し、全体討論の司会をする。
第10回学童期の問題1(外傷後ストレス障害、適応障害)(LMSで実施する。)
外傷後ストレス障害や適応障害に対する心理学的アプローチと医学的アプローチについて理解する。
第11回学童期の問題2(友達と遊べない子ども、人前で話せない子ども)
・交友関係の確立に障害を認める子どもや、人前で話せない子どもの背景に見られる疾患について理解し、学校での対応方法を学ぶ。
・A類学生は、自身が学校教員になった際に注意すべきことをまとめて報告する。
・B類学生は、自験例について問題点を整理してまとめて報告する。
第12回学童期の問題3(完全主義、神経質、潔癖症)
完全主義、神経質、潔癖症などの性格特性について、心理学的アプローチと医学的アプローチについて理解し、学校での対応方法を学ぶ。
第13回学童期の問題4(10歳の壁)
10歳前後の児童の精神発達と様々な精神的な課題を理解する。
第14回学童期・中学期の問題1(思春期の身体の変化と心のケア)
思春期の心と身体の変化について医学的知識を身につける。B類学生の経験を授業に取り入れる。
第15回学童期・中学期の問題2(きれる子、家庭内暴力、自殺企図)
きれる子、家庭内暴力、自殺企図について、心理学的アプローチと医学的アプローチについて理解する。A・B類学生と分かれてグループを作り、学校での対応について教師が留意し、活動していくべき事柄について協議し、その成果をまとめて発表する。