西洋社会史Ⅱ
担当者山下 雅之教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングHEA-102

授業の概要(ねらい)

 近現代の西洋社会の成り立ちを考える上で重要と思われるのが衣食住についての歴史であるが、とくに食事やファッションそして部屋のつくりなど洋式化したスタイルが明治期以降に私たちの生活のベースをなすものとして輸入されてきており、たとえば現代の生活で和服を着て歩くことは特定の儀式や職業以外では考えられないほどとなっている。そこでこの授業ではフランスをおもに対象として20世紀以降のファッションの変化を中心に、生活全般の近代化の中で衣服の占めてきた位置を考えることを通し、私たちの生活を形作っている衣服の歴史文化的な意味を理解する。あわせてファッションに関連した化粧品、香水、アクセサリーまたフランスを代表する食文化についても一定の理解を得る。

授業の到達目標

20世紀はじめの第一次世界大戦のころから現代に至るフランスのファッションの変化と、それに関連する社会や文化の発展について、おもな時期の代表的な衣服のスタイルを理解し、それを生み出した社会的背景についての歴史的な知識を得ることが目標である。
学科の修得目標としては
グローバルな社会状況に関心を持ち、自分と異なる背景をもつ人々と価値観・文化・歴史を尊重しながら積極的に交流できる、を掲げているので、これに沿った内容を目標とする。

成績評価の方法および基準

中間レポート20%と期末試験70%及び授業への積極的な参加10%を基準として評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献花咲く乙女たちのかげにマルセル・プルースト岩波文庫
参考文献ココ・アヴァン・シャネルオドレイ・トトゥーほかYoutube、DVD
参考文献パリの恋人、おしゃれ泥棒オードリーヘップバーンほかYoutube、DVD
参考文献勝手にしやがれジャン=ポール・ベルモンドYoutube、DVD
参考文献サンローランピエール・ニネYoutube、DVD

準備学修の内容

授業内容に関連した資料等の自主学習

その他履修上の注意事項

授業内容

授業内容
第1回植民地主義の発展に伴いファッションがグローパル化する
1900年ごろまでのフランスの海外領土について歴史を調べて下さい。とくにアフリカ北西部、東南アジア地域、カリブ海地域などです。いつだれがどうやってこれらの地域を領土化したのか。
第2回第一次大戦とともに女性の地位が向上しファッションに大きな変化が訪れたot
第1次大戦における激戦地について調べ、どのような人たちがどれくらい犠牲になったのか予習して下さい。
女性がどのような分野に進出し働くようになったのか、調べて下さい。
フランスのことが難しければ、日本のことでいいので、明治から昭和にかけての戦争による男性の犠牲と女性の社会進出がどのように行われたか、調べて下さい。
第3回ココ・シャネルと女性たちの地位
シャネルとはどういう人物か、いつどこで生まれどのように育ったか、どうやってファッション界にデビューしたのか、調べて下さい。どのような製品で有名になったのか、とくにシャネルのスーツといわれるのはどのようなものか、調べて下さい。
第4回ジョぜフィン・ベーカーとロシアバレー
20世紀初めのパリでは外国の舞台芸術に触れることが多くなり、絵画や音楽そしてファッションなど多彩な芸術に影響を与えます。中でも当時一世を風靡した大衆芸術の一つがアメリカからやってきた黒人のダンスグループでした。のちにそのスターの一人がフランスに長期滞在し、さらに人気を博しました。ジョゼフィン・ベーカーとはどこで生まれてどのように育ち、どうやってダンサーになったのか、どのようなグループに属したのか、どのような曲や踊りで有名になったのか、その後フランスにどのような形で居住したのか、調べて下さい。また画像や動画も必ず見つけて見ておいて下さい。もう一つがロシア・バレー団です。ディアギレフなどがいました。調べておいて下さい。
第5回クリスチャン・ディオール:New Lookの誕生
第2次世界大戦中はドイツによるヨーロッパ各地への進行などで戦火が広がり、ファッションへの関心も下火となりました。ノルマンディー上陸作戦に始まる英米仏の進攻でドイツ軍は敗北します。その後、戦後復興は急速に進み、1947年には早くもフランスのファッション界に革新的な出来事が起きました。クリスチャン・ディオールのデビューです。そこで生まれたファッションについた名前がニュールックでした。これはいつだれがどこでどのようにして、何について述べたものか、調べて下さい。そこで話題となったファションとはどのようなものだったのか、調べて下さい。とくにディオールのデザインした服装はいろいろなスタイルがあるので、画像も含め調べておいて下さい。
第6回オードリー・ヘップバーンのジヴァンシー:女優とファッション ―パリの恋人―
ディオールの力により復活したフランスのファッション界は、その後も世界のファッションの中心としての役割を担うこととなります。シャネルやバレンシアガあるいはランヴァンなど戦前からの著名デザイナーはもちろん、次々と若手のデザイナーたちも高級婦人服の世界に誕生しました。そのひとりがジヴァンシーでした。清楚で高級感のある彼のデザインをほとんどの映画で着こなして登場したのがオードリー・ヘップバーンでした。ショートカットの彼女はボーイッシュなパンツスタイルから、フェミニンなドレス姿までスクリーン上で新しい女性の姿を演じ続けました。ディオール、自ヴァンシー、オードリー・ヘップバーンらについて経歴や主なスタイル、おもな作品などを調べて下さい。また映画も見て下さい。パリの恋人やおしゃれ泥棒などです。
第7回アラン・ドロン、ジャン・ギャバン、ジャン=ポール・ベルモンド
男性も映画を通して新しいファッションそして新たな男性像を次々と生みました。戦後の新しいアメリカの若者を演じたのがジェームス・ディーンです。そして歌手でありながら俳優としても成功したのがエルヴィス・プレスリーでした。二人の経歴、おもな作品を調べ、またいくつかの映画をYoutubeでみてください。エデンの東、監獄ロックなどです。
さらに60年代に入るとフランスでは新たな映画俳優の世代が育ち、次々とヒット作を連発します。とくに人気となった俳優は2枚目のアラン・ドロン、戦前から活躍し渋いギャング役などを演じたジャン・ギャバン、そしてコミカルでシリアスな役を演じたのがジャン=ポール・ベルモンド、とりわけ「勝手にしやがれ」は衝撃を与えました。これらの俳優や作品を調べ、見ておいて下さい。
第8回イヴ・サン=ローランとピエール・べルジェ
戦後のファッション界をリードしたディオールはわずか10年ほど活動して急死してしまいました。このためディオールのブランドの後継者となったのが弱冠21歳という若者、それがサンローランでした。彼はいつどこで生まれどのように育ったか、どうしてこの世界に入ったのか、調べて下さい。しかしその時代もまた続きませんでした。その原因は何か、現代でいうと韓国の男子アイドルにも同じことが生じていますが、これは何か。同時フランスは軍の兵士を必要としていたのですが、その理由は海外にあるいくつかの領土でした。とりわけ重要だったのがアルジェリアとベトナムです。それぞれの歴史、フランスとのかかわり、そしてフランスからの独立について調べて下さい。
サンローランがディオールを離れ、自分のブランドとして成功していった裏には彼のパートナーとなったピエール・ベルジェという人物が重要とされています。どのような経歴の人か、どんなことをしたか、最近ではどうしているか調べて下さい。
第9回68年5月そしてウッドストック:ヤングの爆発
これまでフランスのファッションがリードする形で世界の流行が作られてきたわけですが、60年代末から新しい潮流が生まれ、それがファッションだけでなく、世界の動きそのものを変えることになります。例えばその代表となるのがビートルズの活躍と人気、彼らに刺激を受けて生まれるさまざまな若者文化の潮流です。後期のビートルズといえば当時の若者を代表する長髪とジーンズ、さらに若者の間で広がったのがTシャツというカジュアルなスタイル。ここにきて若者が社会の中心にいきなり躍り出た、まさにヤングの爆発でした。戦争の終わりとともに誕生したベビーブーム世代の彼らが街にあふれ新しい音楽を作り、新たな政治や社会を主張し、世界各地で音楽フェスや学生運動、反戦運動が盛り上がりました。もっとも有名な最初のフェスというとウッドストック、そしてアメリカの反戦といえばベトナム戦争に対する抗議、日本でも東大をはじめ日大などで起きた学生運動・・・社会を変えるという若者の熱気がファッションも、音楽も、芸術も、政治も動かす勢いがありました。以上のできごとやアイテムなどを予習して下さい。ウッドストックの様子をYoutubeでみてください。
第10回アンドレ・クレージュやピエール・カルダンーーミニとコスモルックーー
こうした新しい時代の到来を告げた最も革新的なファッションの一つは、当時イギリスで誕生したと言われるミニスカートである。フランスでもこうした若者のファッションをより伝統的なスタイルと融合させる新感覚のデザイナーが登場した。その一人がアンドレ・クレージュ、彼のカラフルでスポーティーなミニやパンツスタイルの新しいファッションは当時の流行となった。また、日本の大阪万博を彷彿とさせるような、新時代感覚のファッション、その名も宇宙ルックを想像したのがピエール・カルダンである。長寿だった彼はつい先日に亡くなっている(2021年1月)。この二人の経歴を調べて下さい。どのような服装か、代表的なものを画像で見て下さい。
大阪万博とはいつどこで行われたどのようなものだったか、そのときのスタッフのファッションはどのようなものだったか、どのような展示があったか、入場者数なども調べて下さい。
第11回香水の町グラース・ラヴェンダーの南フランス
シャネルを始めディオールなど多くのファッションブランドで重要な位置を占めているのが女性用そして男性用の香水です。香水が始まった町として有名なのが、南フランスのグラースと言われています。どこにある町か調べ、その歴史を調べて下さい。どうして香水が作られるようになったのか、昔の香水は何からどのように作っていたのか、調べて下さい。また香水をつくるのに必要だとされるのがバラやラベンダーなどの植物です。これらはどのように栽培されているか、その花からどのようにして香水の原料を取り出すのか、調べて下さい。家にある女性用あるいは男性用の香水を探してどのようなものか試して下さい。香水の広告はどのようなものがあるか調べて画像を見て下さい。
第12回ルビンスタインや資生堂:メイクのグローバル化
女性のファッションの進化とともに重要となったのが化粧品です。とくに20世紀に入り、ファッションブランドが香水産業にも進出。また以前から基本的なコスメを生み出してきたフランスの企業、ブルジョワやウビガン社なども、アメリカでの大衆消費時代の到来とともに大きな変化を迎えます。そのインパクトとなったのがアメリカの化粧品メーカーが、ヘレナ・ルビンスタインとエリザベス・アーデンでした。ともに女性によって起業された会社で、フランスでの評価を高めることでアメリカでの地位を築くという手法を取りました。女性の社会進出とともに、肌の基礎を作り口紅をつけるという基本が世界に普及していきました。両社の歴史、創設者の経歴を調べて下さい。現代のコスメにはどのようなものがあるか、調べて下さい。家にある化粧品類はどのようなものがあるか実際に見て調べて下さい。ブランド、価格、使い方など・・・
第13回コムデギャルソン、ヨージ・ヤマモト、ケンゾー、ミヤケ・・・
これらのブランドはいつだれによってどこで作られたものか、どのようなファッションが特徴か、調べておいて下さい。
第14回ファッションと味覚
ヌーベル・キュイジンとデュカス
このテーマについては、簡単にどのようなものか、どんな人物か調べておいて下さい。詳しくは授業で説明します。
第15回カジュアルとファストファッション
現代のファッションブランドとして代表的なものは、ユニクロ、ザラ、H&Mなどがある。これらはファストファッションと呼ばれているが、それぞれのブランドがどのようなものか、どのようなアイテムがあるか、いつだれによって創設されたか、調べて下さい。またユニクロではジル・サンダーとのコラボなどにより、ブランド価値を高める動きも見られる。その理由とは何か。