心理学特殊実験演習Ⅰ
担当者元永 拓郎教員紹介
単位・開講先必修  0単位 [心理学科 2017年度以前]
科目ナンバリングSEM-301

授業の概要(ねらい)

 この演習では、心理専門職(公認心理師や臨床心理士など)が、カウンセリングやコンサルテーションといった広い意味での心の支援サービスにおける臨床心理学的かかわりのプロセスを研究する。特に、多職種の専門家や専門家以外の人(ボランティアなど)、家族、本人など、多職種メンバー(コミュニティチーム)の形成過程や役割や基本的姿勢等にも焦点をあてる。また、ボランティア体験やフィールドリサーチを通して、心の支援からまちづくりへと展開する可能性も考えていく。
 研究方法は、文献研究、フィールドリサーチ、面接調査、質問紙調査など、心理学のあらゆる研究手法を用いる。グループワークやディスカッションなど体験的学修を重視する。特にフィールドリサーチの前段階として、学校や福祉施設といった対人支援の現場にボランティアとして参加する体験も大切にする。
 心理専門職を目指す学生も一般就職を考えている学生も、専門職としての職業発達、または人生の各局面での多様な分野での心理支援について、深い理解をすることは重要であろう。自らの関心に従って研究テーマを設定し、文献をじっくりと読み込み、演習でのディスカッションを積み重ねる中で、その分野については誰よりも詳しいという手ごたえを得ていってほしい。
 過去の研究テーマ例としては、「心理専門職の職業イメージに関する研究」「心理専門職の職業的発達に関する研究」「知的障害児支援施設におけるボランティア体験の役割と意義について」「スクールカウンセラーの守秘義務に関する大学生の意識」「スクールカウンセラーの常勤化に関する研究」「学生ボランティアに関する期待感に関する研究」「専門家でない人(いわゆる素人)の心理支援に関する意識調査」「大学生のうつ病への偏見(スティグマ)に関する研究」「援助希求行動に関連する要因に関する研究」「認知症とまちづくりに関する研究」などがある。
 心理学研究演習Ⅰでは、上級生が行っている研究計画を検討しながら、自分の関心のある研究テーマについて、文献収集と読み込みを行う。また、上級生がすでに行っている研究のサポートも行い、自らのテーマを見つけ研究手法を検討し、研究計画を作成することとなる。
 心理学研究演習演習Ⅰは3年次前期に履修するが、自分の関心のあるテーマについて、先行研究の読み込みを行い研究の動向を把握するとともに、研究手法の実際を上級生の研究のサポートを通して体験的に習得する。
 後期開講の心理学研究演習Ⅱは3年次後期に履修するが、自分の関心のあるテーマを決めて、実際に研究計画の策定に取り組む。そのための先行研究の読み込みも充分に行い、研究計画の内容を吟味し、最終的なレポートとしてまとめ上げる。
 心理学研究演習Ⅲは4年次前期に履修するが、心理学研究演習Ⅰ・Ⅱで検討した研究計画に基づき、調査を開始する。卒業研究を履修している学生は、心理学研究演習Ⅲにおいても、研究の進捗を報告する。また心理学研究演習Ⅰを履修している学生に対して、一緒に研究計画を検討する。
 心理学研究演習Ⅳは4年次後期に履修するが、研究計画に基づき研究を実施しデータを得た上で、研究レポートとしてまとめ上げる。卒業研究として行う場合は、より高度な研究としての質が求められることには留意したい。
 この演習は、心理学科のディプロマポリシーにある、「1.心理学の幅広い分野にわたる、こころに関する知識や法則を理解できる」「こころの働きを科学的に理解するための科学的思考力とデータ分析力を有する」「3.こころに関わる様々な問題に実践的な解決を与えうる、柔軟な思考能力と実践力を有する」の獲得に向けての臨床心理学に焦点をあてた重要な必修科目となる。

授業の到達目標

1)臨床心理学的アプローチのプロセスについて概説できる
2)心理専門職の活動において課題となっているテーマ検討のための研究の企画を行える
3)研究遂行のための方法論を理解し、データを得て分析する研究を実際に行うための立案ができ、研究を実施できる
4)将来に向けて、臨床心理学的研究を行うための基礎を身につける

成績評価の方法および基準

 演習内のプレゼンテーション20%、ディスカッション20%、研究計画の内容40%、レポート20%で総合的に評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献サイコセラピーは統合を希求する元永拓郎著遠見書房

準備学修の内容

 研究手法の概要について、指定した教科書をもとに学習して、研究計画書を作成した上で演習に臨むこと。演習において、3,4年生の研究内容の紹介をもとにディスカッションをすることになるので、その内容を理解するために必要な基本的な専門用語を調べるようにする。

その他履修上の注意事項

 心理学研究法Ⅱ(心理調査計画法)及び、心理学研究法Ⅲ(面接・質的研究法)を履修していることが望ましい。
 実際の現場に出てのフィールドワーク(ボランティア体験含む)を行うこともあるので、フィールドワークを行う上での倫理、基本的姿勢、社会的責任、リスク管理について、充分に身につけていく必要がある。
 研究実施については、倫理委員会の承認を得た上で、高度な倫理性や責任を持ち行うことが求められる場合もある。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス/演習をどう進めるか、スケジュールの確認
第2回どのような分野に関心があるかのグループワーク➀
先行研究の調べ方
第3回どのような分野に関心があるかのグループワーク②
研究手法の設定について
第4回研究の進捗の報告➀ *グループワークディスカッション
研究目的はどのように設定されるか
第5回研究の進捗の報告② *グループワークディスカッション
方法論はどのように記述されるか
第6回研究の進捗の報告③ *グループワークディスカッション
研究計画のプレゼンテーションの方法について
第7回研究の進捗の報告④ *グループワークディスカッション
研究倫理について/倫理委員会
第8回関心テーマと関連するフィールド研究➀ *グループワークディスカッション
第9回関心テーマと関連するフィールド研究② *グループワークディスカッション
第10回関心テーマと関連するフィールド研究③ *グループワークディスカッション
第11回関心テーマと関連するフィールド研究④ *グループワークディスカッション
第12回関心テーマと関連するフィールド研究⑤ *グループワークディスカッション(オンライン)
第13回臨床心理学的研究のポイント➀
第14回臨床心理学的研究のポイント②
第15回まとめ
後期の演習Ⅱにむけて
夏期期間のフィールドワークについて