史学概論Ⅰ
担当者楯身 智志教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [史学科]
科目ナンバリングHSG-201

授業の概要(ねらい)

 学生諸君は大学入学までに、歴史科目の学習にかなりの時間を費やしてきたことと思う。そこでは、日本史・世界史・地理・政治経済・現代社会・倫理の教科書や参考書に記されている「歴史的事実」をただひたすらに理解し、暗記してきただろう。そのため、大学で学ぶ歴史学に関しても、「歴史的事実」の理解・暗記が必須になると考えている者も多いのではないか。
 しかし、実際はそうではない。歴史学とは本来、特定の「歴史的事実」をただ受動的に暗記するだけの学問ではない。過去の人々が遺した種々の歴史資料をもとに、さまざまな知見(社会学・政治学・経済学など)や自らの想像力を駆使して、過去を積極的に復元しようとするものである。それゆえ、諸君は2年時より「史籍講読」や「実習」を通じてさまざまな歴史資料に触れ、それらを読解する方法を学んでいるのである。大学で学ぶ歴史学とは、「無心で暗記する」学問ではなく、「歴史資料を前にしてひたすら考察する」学問と言える。歴史教科書や参考書に記された「歴史的事実」がどのような歴史資料に基づいて復元されたのか、またその過程でいかなる問題が生じ、どのような議論が繰り広げられたのか。これらを知ることは、現代社会が抱えているさまざまな課題や問題点を克服する上でも大いに参考になろう。
 本講義では、そのような本来の歴史学の方法論について、実例をもとに考えていきたい。前期はオムニバス形式で、可能な限り多くの時代・地域の「歴史学的なテーマ」を取り上げ、「歴史学とは何か」ということを体感してもらう予定である。

授業の到達目標

・個々の歴史的事象がどのような資料に基づいて復元され、その過程でいかなる問題点が生じるのか、それらのプロセスを理解する。
・個々の歴史的事象が内包するさまざまな問題点に基づいて現代社会の課題・問題点について考察し、自分の意見を述べることができる。

成績評価の方法および基準

・確認テスト・コメントペーパー40%
・中間レポート30%
・期末レポート30%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特になし
参考文献必要に応じて授業中に紹介する

準備学修の内容

・授業終了後、配布プリントなどを見直し、授業内容の概要について振り返るクセをつけておくこと。

その他履修上の注意事項

・私語など、他の受講者の迷惑になるような行為は控えること。
・授業内容をただ鵜呑みにするのではなく、その中から積極的に疑問点や問題点を探し出すように努めること。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス
第2回蘇我氏は「悪者」か――乙巳の変にまつわる偏見
第3回とあるオスマン帝国軍人の生涯――ムハンマド・アリーの行動原理について
第4回人は水がなければ生きてはいけない――「水の理論」と「文明の生態史観」
第5回スペインの「宝物船団(トレジャー・フリート)」はどこへ行った――世界史教科書における「価格革命」の問題点
第6回ガンディーは本当に「偉大なる魂(マハートマ)」か――歴史における人物評価をめぐって
第7回乙女はなぜ2度も裁かれたのか――ジャンヌ・ダルクの「利用価値」
第8回中間レポート出題およびレポート作成指導
第9回儒教を使って漢王朝を滅ぼした男――王莽の「権力」をめぐって
第10回暴君と名君の境界線——唐・太宗李世民の「黒歴史」を暴く
第11回竜のアワから生まれた美女?——周の「襃姒説話」の形成過程
第12回秦の始皇帝の政治は本当に厳しかったのか——「支配」とは何か
第13回金で買えないモノはないのか――中国古代の貨幣の「価値」とは
第14回桶狭間の戦いを「分解」する――歴史資料の「階層性」について
第15回総括 ※オンライン