担当者 | 影山 亮 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [日本文化学科] | |
科目ナンバリング | SOC-202 |
この授業では時代小説作家、山手樹一郎の作品と、同時代メディアとの相関関係について講義する。
現在では忘れ去られた作家である山手は、「桃太郎侍」や「夢介千両みやげ」など、生涯で800作以上の著作を発表し、〈明朗時代小説〉を確立、占領下から戦後に大衆読者から爆発的な喝采を博した。また作品の映画化が61度、舞台化が4度、ラジオドラマ化が10度、テレビドラマ化が5度と、あらゆるメディアを越境して獅子奮迅の活躍を見せた。さらに毎日新聞の『読書世論調査』では「あなたの好きな著者と著書」のランキングの常連であり、文壇所得番付の首位に輝くなど、大流行作家であった。
山手の活字メディアとの結びつきは、小学新報社や博文館などにおいて雑誌編集業に携わっていたことに始まる。加えて戦時下での不遇や、占領下での躍進、週刊誌ブームや貸本などの読書形態など、山手作品と同時代メディアとの相関関係は日本の大衆文化や出版文化の様相を照射している。そこで本講義では、山手の作品や創作活動と同時代メディアとの関係性に着目することで、日本の大衆文化や出版文化への理解を促す。
具体的には以下の授業計画を予定しているが、変更もあり得る。
今日では、読者にとっても、作者にとっても、さらには研究者にとっても、いわゆる純文学とエンターテイメント性の高い文学との垣根は、ほぼ意味を失っており、文学の周辺にある様々な表現ジャンルや表現メディアを含めた文化状況総体の中で、個別的な作家や作品を考えることが当たり前になっている。しかし明治期から戦後の高度成長期に至る文学状況においては、両者を全く別のものと区別する思考が一般的であり、エンターテイメント性の高い文学はアカデミックな研究の対象とみなされない傾向にあった。
しかし、映画の原作、テレビ時代劇の原作となることで影響圏を大きく広げた山手樹一郎の活動を視野に入れることによって、文学的コンテンツのマルチメディア的展開の実態を解明する視野を深めることが可能になるだろう。また、2022年に全国初の山手樹一郎に関する企画展が開催され、宝塚歌劇団雪組で「夢介千両みやげ」が公演される。このような点からも、エンターテイメントと芸術がシームレスにつながる今日の文化コンテンツを理解する力を修養する。
期末レポート(60%)と授業内リアクションペーパー(40%)。ただし出席率も加味して総合的に評価。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | なし。教員側でレジュメ、適宜パワーポイント等を用意する。 | ||
参考文献 | 『大衆文学の歴史』(1989.3) | 尾崎秀樹 | 講談社 |
対象となる時代の歴史的事項や、発表された作品について年表などをもとに知識を得ておくこと。事前に読んでおくことを指示された資料等には、目を通しておくこと。
電子媒体による調査だけでなく、可能な限り雑誌・新聞の実資料に触れてみることが望ましい。
回 | 授業内容 |
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第1回 | ガイダンス |
第2回 | 「ニヒル剣士」と「明朗タイプ」 |
第3回 | 青春時代・雑誌編集 |
第4回 | 博文館・名編集長 |
第5回 | 新人作家・「桃太郎侍」 |
第6回 | 戦時下・歴史小説 |
第7回 | 占領下・「夢介千両みやげ」① |
第8回 | 占領下・「夢介千両みやげ」② |
第9回 | 躍進・世代交代(オンライン授業・LMSによるオンデマンド形式) |
第10回 | 週刊誌・氾濫時代 |
第11回 | 貸本・映画 |
第12回 | 捕物帳・乱歩 |
第13回 | 文壇の崩壊と日本作家クラブ |
第14回 | 大家・逝去 |
第15回 | まとめ・現代における山手樹一郎作品と時代小説 |