経済体制論特講Ⅰ
担当者杉浦 史和教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経済学研究科 経営学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 ソ連が崩壊してから四半世紀が経過し、地球規模で、社会主義経済体制から資本主義経済体制への体制転換という壮大な実験が行われた。これは日本など西側の経済にとってはグローバル化の進展として受け取られるプロセスだった。このグローバル化は、虹色の桃源郷を我々にもたらしたのではなく、現在の世界経済の様相は、体制転換が本来企図していたものとは異なり、政治状況の混乱も相まって大いなる不安定化の状況の下にある。そこでこの授業では、体制転換プロセスを社会主義経済体制の問題点から辿ることにより、再検討を試みようとするものである。
 対象となる国は、主として、旧ソ連諸国、広義の東欧諸国、そして中国である。これらの国が体制転換をはたすなかで、国際的な経済関係が大いに複雑化してきた。この国際経済への統合プロセスは作用・反作用という双方向の形で、国内にも、国際的にも影響を及ぼしている。これらのことを踏まえて、体制転換の出発点と着地点を明らかにする。分析にあたっては、比較の視点を大いに取り入れ、その差異や異同が意味することに注意を払っていくことにする。

授業の到達目標

 体制転換プロセスについて理解できること。1990年代から起こっているグローバル化について、世界各地域の特色を理解できること。資本主義経済諸国にとって、体制転換とは何であったかその意味が理解できること。

成績評価の方法および基準

 授業への参加・貢献60点。最終レポート40点。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 特に教科書は指定しない。
参考文献『比較経済講義』 岩崎一郎編著日本評論社

準備学修の内容

 事前に指定される参考文献に目を通しておくこと。

その他履修上の注意事項

 毎回授業終了時に、簡単な感想文を書いてもらう。その際、自分自身の問題意識を持って、体制転換の問題に向き合って欲しい。

授業内容

授業内容
第1回 授業オリエンテーション:この授業でとりあげる内容についてのガイダンス、成績評価の方法などを案内します
第2回 体制転換の出発点:社会主義経済体制の機能不全(1)社会主義の理想と現実を議論します
第3回(オンライン授業)体制転換の出発点:社会主義経済体制の機能不全(2)社会主義の成功面にも注意を払います
第4回 体制転換の出発点:西側経済におけるパラダイムシフト(1)1970年代から始まるME革命や流通革命などグローバル化につながる動きを検討します
第5回 体制転換の出発点:西側経済におけるパラダイムシフト(2)広い意味での脱工業化について検討します
第6回 体制転換の出発点:経済体制移行戦略の再考(1)ハンガリー人経済学者のコルナイが考えた体制移行戦略を検討します
第7回 体制転換の出発点:経済体制移行戦略の再考(2)国際機関の政策パッケージを検討します
第8回 体制転換プロセスの進展:ショック療法とショックドクトリン(1)ショック療法と呼ばれる厳しい財政金融政策の与えた大きな影響を検討します
第9回 体制転換プロセスの進展:ショック療法とショックドクトリン(2)ナオミ・クラインが提唱したショック・ドクトリンの考え方を検討します
第10回 体制転換プロセスの進展:ショック療法を採らなかった国々(1)ハンガリー、ウズベキスタン、トルクメニスタンの体制転換プロセスを検討します
第11回 体制転換プロセスの進展:ショック療法を採らなかった国々(2)中国の体制転換プロセスを検討します
第12回 体制転換プロセスの困難:社会保障制度改革と世代間衡平(1)体制転換プロセスが目指した資本主義化の実相を社会保障制度の面から検討します
第13回 体制転換プロセスの困難:社会保障制度改革と世代間衡平(2)年金制度改革に見られる体制転換の思想を検討します
第14回 体制転換プロセスの困難:失業と賃金未払のトレード・オフ(1)ロシアの体制転換プロセスで発生した未払問題について検討します
第15回 体制転換プロセスの困難:失業と賃金未払のトレード・オフ(2)体制転換プロセスが労働市場に与えた影響について検討します