日本語のしくみⅡ
担当者奥村  徹
単位・開講先選択  2単位 [初等教育学科 こども教育コース]
科目ナンバリングJLE-103

授業の概要(ねらい)

 この授業は、日本語教員を目指す学生を対象として行われる。春季は、日本語以外の世界の言語にも視野を広げながら、日本語の語彙、音声などについて、紹介したが、秋季は、より実践的な、日本語学習者から、質問されやすい「文法」の基礎について、学ぶ。できるだけ、範囲を網羅したいとは思うが、週一回の授業では限界があり、本当に日本語教育の現場に立つためには、さらなる自己研鑽が必要であることは言うまでもない。したがって、重要な知識の定着も図るが、自ら、文法現象を解析する能力も身につけてもらいたい、と願っている。
 「日本語を話せること」と「日本語をわかりやすく教えること」とは、まったく別の技能である。日本語母語話者として、諸君が日本語を何不自由なく、話していることは当然であるが、それで、日本語を教えることができる=わかりやすく説明できることにはならない。
 各回の学習内容に関し、最低限の高校卒業レベルの知識に関しては、宿題として、毎回、レポートを課し、積極的な参加を促す。そのうえで、より高い専門的な知見を紹介し、ペアワーク、討論などで、その理解を深める。また、「日本語教育」にとって必要な「学習者の目線に合わせた」わありやすく、かみ砕いた、豊富に適切な例を挙げた説明、イラストや図の使用など、授業内で重視する。
 具体的には、品詞論、体験などを織り交ぜながら、紹介していく。オンライン授業となるので、レベルの低い学生の面倒は見切れない。よって、上位者に焦点を当てて、レベルの高い授業にする予定である。単位が欲しいだけの学生は、今年は遠慮してもらいたい。

授業の到達目標

 品詞論、動詞の活用、ヴォイス、テンス・アスペクト、モダリティなどについて、自ら例を挙げて、初学者にわかりやすく説明する能力を身につける。特に、小学校レベルなど、かみ砕いたわかりやすい説明ができるよう、実践的な能力の向上を目標とする

成績評価の方法および基準

 小レポート10回=50%、毎回のフィードバックペーパー30%、テスト1回=20%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『はじめての人の日本語文法』

準備学修の内容

 毎回、予習を指定し、それを前提として授業を行うので、予習は必須である。テーマごとに宿題を課すので、怠惰な学生には向いていない

その他履修上の注意事項

 教育学部以外の履修希望者は、日本語教員養成コースへの登録が必要である

授業内容

授業内容
第1回 授業説明、前期の復習
 日本語の音声的な特徴、日本語のアクセント
 語彙の種類と変化
第2回 品詞論 品詞とは? 学習者にとって、品詞はどのように「必要」なのか?
第3回 品詞論 動詞・形容詞・名詞
 学校文法とは異なった名称、整理の仕方
 単純に分けられない品詞の様々。「自由」「同じ」の品詞は?
第4回 連語論 動詞のタイプによって、「助詞」を選ばなければならない
 友人(と・に) 相談する : 「と」と「に」を使い分ける場合、どういうルールがあるか?など
第5回 動詞の活用1
 活用とは何か
 日本語学習者は、なぜ「活用」を学ぶのか
 日本語の教室で、どのように「活用」を教えるのか
第6回 動詞の活用2
 動詞の活用をわかりやすく、説明する際のポイントを学ぶ
第7回 動詞の「て形」の作り方
 初学者が最も苦労する項目「て形」をどのように教えているのか、実践的に学ぶ
第8回 は/がの使い分け
 コリア語以外の母語話者は、日本語の「は・が」の使い分けに苦労する
 わたし(は・が)、田中です。 この文の「は・が」の使用は、どういうルールがあるのか? など
 わかりやすく、説明することが必要である
第9回 現代日本語のテンス・アスペクト1
 日本語の「する」は、現在形なのか??
 「したところです」「しているところです」「するところです」の3パターンの使い分けは?
第10回 現代日本語のテンス・アスペクト2
 「窓が開いています」「窓を開けています」この二つの違いは?
第11回 ヴォイス1 受け身文
 どの言語にもある「受け身」の他、「雨に降られた」など、日本語に特徴的な受け身文の教え方を学ぶ
第12回 ヴォイス2 使役、使役受け身
 「白状させる」「自由に話させる」どちらも「させる」の使役文である。その違いは?
 「白状させられた」「「自由に話させてもらった」の意味の違いは?
第13回 日本語の文法領域における変化
 ら抜き言葉など、現在進行中の変化も視野に入れ、言語の変化が日本語にも見られることを理解する。話し言葉、方言など、社会言語学の領域に接する事柄を紹介する
第14回 モダリティ
 話者の「述べ方」の文法的なしくみを「モダリティ」と呼んでいる。事態を「現実」として述べるか、「可能」「予想」として述べるか、「仮定」としてか、「必然」としてか
 中上級の学習者にとって、混乱しがちな項目である。その整理と教え方につて、学ぶ。そして、自分で「説明する」能力を身につける
第15回 助詞、助動詞相当句、授業のまとめ
 「~について」「~をめぐって」「~に対して」など、頻用される「助詞相当句」
 「~とみられる」「~という声がある」「~趨勢である」など、「助動詞相当句」
 これらも、日本語学習者にとって、必須の学習項目である。これについて、簡単に学び、授業全体のまとめを行う