憲法特講Ⅱ
担当者金澤  誠教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [法律学科 2017年度以前]
科目ナンバリングPUL-202

授業の概要(ねらい)

 学生さんはよく言います。「人権はわかる。でも公共の福祉も大切。法律の不備が多い」。え、公共の福祉って「マジックワード」なの?この単語さえ知っていればいいわけ?「法律の不備」って自分(国民)の望みが叶えられないときに多用したがる表現かも?世の中そんなに願いがすべて叶うかな?
 さらに学生さんは言います。「わたしツィッターやるよ。でも他人を傷つけない。マナーが大切。私も気を付けたい(レポートの「おわりに」によくある「よく分からない」道徳的な「決心」で結審)」。
 教員は思う。見事な道徳論。それよりもどういう表現が「具体的に」ダメか知っている?たまに学校の先生の悪口をいってない?そして(検索サイトのコメント欄にありがちな)「極端な意見」が「なぜ」採用されないかを考えたことはある?おそらく議論の前提が「嚙み合って」いないだけかも。
 この授業では、「表現の自由に関する判例」を主戦場として、最近の判例理論を観察する。ときには「学術文献」という地図を使って国内&国際比較を、ときには映画や新聞、アニメやスマホという羅針盤を使って紛争を滑稽に描くことで、判例に対する理解(批評・比較分析)をより深めたい。
 この授業のゴールはどこか?検索サイトの「コメント欄」の意見が正しいわけではないことに気づくこと。空気を読まないこともたまには重要。リツィート(賛同?拡散?)や「まとめサイト」、コピペで責任が問われる時代……まずはその理由を考えてみませんか?

授業の到達目標

①憲法の分野における高度な知識を獲得し、既存の法的枠組みの中で紛争の解決策を見出し説明できる。
②新聞や法律雑誌、さらにはツイッターで議論されている法律問題について、法的根拠を挙げながら批判もしくは受容できる(紛争の背景にある法的論点を把握する。検索サイトのコメント欄の意見がいつも正しいわけではないことに気づく)。

成績評価の方法および基準

試験による評価が原則です(50%)。講義中の貢献と小課題(25%)、中間レポートによる評価(25%)もあります。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特になし
教科書
教科書
参考文献判例回顧と展望2021共同執筆日本評論社
参考文献ネット検索が怖い~「忘れられる権利」の現状と活用~神田知宏ポプラ信書
参考文献その「つぶやき」は犯罪です~知らないとマズイネットの法律知識~鳥飼重和新潮社新書
参考文献情報法概説(第2版)曽我部真裕弘文堂
参考文献
参考文献
参考文献

準備学修の内容

資料として配布する文献(判例)の要約、関連する日本の条文の理解(問題演習)が毎回求められます(90分)。人数にもよりますが、授業中の双方向コミュニケーションを重視します。判例や文献を読むという積極的な作業をおこないます。そうしたことに興味ある好奇心のある学生さんの受講を歓迎します。

その他履修上の注意事項

難しくいえば、社会生じている法的現象に興味を持つことが求められます。ニュース報道を見ながらそれと照らし合わせる癖をつける必要があります。
なお、「イベントde投票」という機能を使って携帯やスマホを使ったクイズ大会をおこなったことがあります。

授業内容

授業内容
第1回はじめに・「覚えるだけ」ならAIにまかせたら?(どうして、公共の福祉じゃだめなの?)
第2回表現の自由の意義(基準ってどうやって作るの?限定解釈?適合的解釈?泉佐野市市民会館事件)(愛知トレエンナーレその後)
第3回放送の自由とクレヨンしんちゃん(見せたくない作品を見たい権利?)(誰が誰を訴えた?裁判のしくみ)(訂正放送・謝罪広告)
第4回名誉毀損(リーガルハイ2より)(ラーメン花月事件)(インターネットだから何でも書いてよいか?)(刑法230条?)
第5回弁護士なら「どう」攻める?(食べログにあのラーメンまずいって書いても捕まらないのはなぜだ?アイドルにはプライバシーはないの?スポーツ選手は?大学の先生は?ウチの会社がブラック企業って書いたら訴えられる?)
第6回出版差止めとネットの削除請求?匿名表現の自由とは?(北方ジャーナル事件)(最一小決令3・3・18をめぐって)(スクショして転送しただけで?)
第7回プロバイダ責任制限法って?(コメント欄は勝手に消してもよいの?どういう場合に消すの?通信の秘密)(誹謗中傷ってどこから?)
第8回まとめサイトは「嘘ばかり」か?(じゃあ「内容についてはいっさい責任を問いません」と先に書けば許されるか?)
第9回拡散・追及(いいね、リツィートって「独立した」表現なの?SNS「特定班」は正義か?判例はどう対応しているか?)
第10回忘れられる権利(自分の名前を検索すると…どんなことを、いつから消してよいの?ツィッターを削除してもらう「基準」とは?最三小決平29・1・31の射程)
第11回補助金と芸術の自由 ・図書館戦争(逮捕されたら俳優が出ている映画が見られなくなる?これって日本だけ?不倫でもだめ?)
第12回わいせつの定義(税関訴訟、メープルソープ事件、ろくでなし子事件、そして児童ポルノ)(世論は常にひとつ・正しいか?)
第13回ヘイトスピーチ(ドイツのSNS対策法・通信品位法230条)(企業におけるヘイトスピーチ)(公私の境界)
第14回ありがちな風景(イラストでも権利侵害?プロフィールが違法?被告人のイラスト、なりすまし、スクショで違法?画像の引用)
第15回コロナと表現の自由(発信者情報開示)(まとめと到達度の確認)(公務員試験の該当箇所のチェック)