日本経済史Ⅰ
担当者佐藤 光宣教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経営学科]
科目ナンバリングECH-201

授業の概要(ねらい)

 この授業は、アメリカにおける制度派経済学の創始者であるソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)の制度の概念を俯瞰し、その累積的因果関係の原理と独自な文化の発展段階説を検討することから開始する。ヴェブレンの制度すなわち文化の発展段階説は、有閑階級の生成と発展とを究明していく際の歴史の舞台であるばかりでなく、日本経済の歴史を考究するうえでも極めて有益であろうと考えられるからである。
 そこで授業は一旦、原始共同体時代に遡る。その後順次、人間生活の経済的局面を近世そして近代の入り口を目指して理論的に跡付けるべく進展する。かくして、前期授業において私は、日本経済の歴史を制度の累積的変化の過程として先入観を極力排除しながら描き、もってこれを批判的に概観することを授業の概要とする。

授業の到達目標

 この授業において私は、資本主義という金銭文化段階(pecuniary stages of culture)において極めて不安定な様相を呈する昨今の経済社会の性質と機能について、先入観を排除しながら歴史的思索を重ねることを通じ、一定の批判能力を養うことを授業の基本的な到達目標とする。授業の到達目標の細目は、これを次のように定める。
 (1)原始共同体時代から日本の戦国時代までの経済生活の歴史が説明できる。
 (2)日本の経済社会の変遷を世界史の流れのなかで捉えることができる。
 (3)現今の経済社会について妥当な見解を提言することができる。
 (4)中世までの日本史を中心とした教養を深めることができる。
 (5)日本経済の建設者たちに対して敬意をもつことができる。

成績評価の方法および基準

 前期期末試験の点数を中心に、学修到達度調査小テストと平常点によって成績を決定する。その配分基準は次の通りである。
 期末テスト60%/学修到達度調査小テスト20%/平常点20%
 なお、平常点は主として、LMSを通じて提出予定の課題により算出する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書テキストは使用しない。プリントを配付する。参考書は下記の通りである。
 
参考文献岩宿の発見相澤忠洋講談社、昭和44年刊
参考文献海を渡った縄文人―縄文時代の交流と交易― 橋口尚武 著小学館、平成11年刊
参考文献縄文時代の商人たち―日本列島と北東アジアを交易した人びと―小山修三・岡田康博 著洋泉社、平成12年刊
参考文献人はなぜ戦うのか―考古学からみた戦争―松木武彦 著中央公論新社、平成27年刊
参考文献日本の米―環境と文化はかく作られた―富山和子 著中央公論社、平成5年刊
参考文献Rediscovering Rikyu and the Beginnings of the Japanese Tea CeremonyHerbert PlutschowLeiden, Netherlands: BRILL/Global Oriental, 2003
参考文献茶道と天下統一篠田綾子 訳日本経済新聞出版社、平成22年刊
参考文献 近世日本の経済社会速水 融 著麗沢大学出版会、平成15年刊
参考文献現代語訳 論語と算盤渋沢栄一 著・守屋淳 訳筑摩書房、平成22年刊
参考文献昭和経済史中村隆英 著岩波書店、平成19年刊
参考文献「鎖国」と資本主義 川勝平太 著藤原書店、平成24年刊

準備学修の内容

 総合基礎教育科目の「経済史Ⅰ・Ⅱ」と「経済学Ⅰ・Ⅱ」とを履修し、それらの内容を的確に理解していることが望ましい。そのことが、「日本経済史Ⅰ」の授業理解を容易にするであろう。また、歴史について深く真摯な関心を持つことは、授業の準備として何より幸いである。併せて、哲学や心理学にも学問的関心を持って、それらの関係書物を渉猟してもらいたい。
 また、新聞各紙の経済面を重点的に欠かさず読み通し、この要約作業を反復すること。同時に、日々の経済生活に関心を持つよう心掛けること。これらのことは、経済事象にかかわる正確な知識を自ら広く求め、現行の金銭文化とその構成要素間の相互作用を深く理解する必要を、自らに知らしめるであろう。また、このような準備学修は、日本経済史以外の諸分野についても多方面から総合的な思索を重ねるべき必要性を、得心させるに違いない。学生は授業本体を離れて、かかる準備学習の過程を通じて日本経済の歴史のみならず、より幅広い歴史、哲学および心理学などで構成される体系的教養の涵養に向かっていくことであろう。また、そのように努めてもらいたい。
 なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学修時間が必要である。本授業も、その例外ではない。

その他履修上の注意事項

 日本経済の歴史を理解することは、先人が歩み築いてきた経験と知識および文化に対して尊敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。授業時間内とそれ以外の時間を充てて行うべき日々の勉学は、この授業が学生に対して最も欲するところである。
 なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が進展するよう、併せて要望する。

授業内容

授業内容
第1回プロローグ:日本経済史Ⅰの開講に際して【オンライン授業】
 ―授業の進め方・授業の目標および評価方法について―
第2回経済の歴史と経済学の歴史
 ―「経済学の三部門」をめぐって―
第3回ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)の所説 ①『有閑階級の理論』
 ―制度とその累積的因果関係の原理―
第4回ソースタイン・ヴェブレンの所説 ②進化論的経済学
 ―文化の発展段階説と日本経済の歴史―
第5回原始共同体時代とその生活史
 ―共同体の共有財産としての技術知識―
第6回所有権制度の発生と資本主義経済社会
 ―掠奪的思考習慣とその展開―
第7回縄文生活とその交流のネットワーク
 ―縄文人たちによる交易とその範囲―
第8回弥生時代と戦争の始期
 ―稲作と戦争の文化―
第9回日本列島における稲作の本格的開始
 ―稲作の生産性とその経済的効果―
第10回律令国家の経済構造
 ―大土木工事の展開と農業―
第11回荘園制度とその崩壊
 ―貴族と武士の経済生活―
第12回中世社会と産業の発展
 ―商品経済の発達と貨幣需要の増大―
第13回貨幣経済の興隆
 ―平清盛の経済政策と渡来銭―
第14回前期試験
 ―複数のキーワードから特定の授業内容を説明する論述試験―
第15回エピローグ:日本経済史Ⅰを終えるにあたって【オンライン授業】
 ―後期試験の講評・その他―