社会学演習Ⅰ
担当者山下 雅之教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSEM-301

授業の概要(ねらい)

現代フランスの社会学者、ピエール・ブルデュー(1930~2008)がとらえた文化資本についての社会学的研究を、彼の主著の一つである『美術愛好』によりながら理解し、あわせてその背景となるフランスの社会的特徴にも関心をもつ。

授業の到達目標

ピエール・ブルデューの文化社会学とくにその理論的な支柱となっているhabitusやディスタンクシオン、文化資本などの概念について、基本的な理解を得るとともに、理論の背後にあるフランス社会の特性についても一定の知識を得る。
また学科の修得目標としては
多様な価値観を持った社会の成員が存在することを理解し、包摂できる社会を構想できる、
現代社会の諸問題について他者と意見を交換し、自他の意見を深めて結論を導くことができる、
収集した資料を論理的に読み解き、客観的な視点よりそれぞれの解決手法の評価を行い、課題の解決案を考え出すことができる、
個人的な意見と根拠に基づく知識との違いを理解したうえで、自分の考えを表明することができる、
第三者が理解できるようにプレゼンテーションを行うことができる
を掲げているので、これに沿った内容を目標とする。

成績評価の方法および基準

テキストについての内容把握とゼミでの発表
また自分の関心を持つ文化領域について自主的なテーマ設定と調査
グループワークにより、個別の美術館や美術作品に関するプレゼンテーションを行なう。
以上を総合的に評価する

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献美術愛好ピエール・ブルデュー木鐸社
参考文献ディスタンクシオンピエール・ブルデュー藤原書店
参考文献映画 最強のふたりOmar syほかYoutube、DVDなど
参考文献映画 アマデウスフォアマン監督Youtube、DVDなど
参考文献スノーマン、キンプリジャニーズ公式アカウントYoutube、facebookなど

準備学修の内容

自分の興味のある文化的領域について自主的に調べて発表することが望ましい。

その他履修上の注意事項

授業内容

授業内容
第1回ピエール・ブルデューの文化社会学の基本概念
ブルデューとはどのような人物か、経歴と主な研究について調べて下さい。
第2回ピエール・ブルデューの文化社会学の諸領域、美術館、写真撮影、読書や食生活など
彼の主著である『ディスタンクシオン』を参考に、文化的な実践がどのようにして社会的な意味を明らかにするのかを考察します。自分自身や、家族、友人などの趣味や生活の中から、社会的に意味を持つ実践がどのようなものであるか、前回の授業を参考に探して見て下さい。
第3回美術館の観衆調査の方法
ブルデューの初期の重要な研究である『美術愛好』を参考にして、美術館を訪れる人々についての調査がどのようにして行われたのかを考察します。事前に美術館を訪れて、どのような施設になっているのかを観察しておいて下さい。授業での主体的なプレゼンが望ましい。
第4回フランスの美術館と日本の美術館
日本の美術館に比べてフランスの美術館は大規模で有名なところが多い。フランスの美術館についてその歴史や現在の様子を調べて下さい。ルーブルを始め、オルセー美術館、ピカソ美術館など、パリだけでもたくさんあります。画像もあわせて調べて下さい。前回に続いて、参加者によるプレゼンを予定しています。準備をお願いします。
第5回最近の美術展、マネやミュシャ、ロートレックやピカソなど
美術館の展示といっても、日本ではフランスの美術に人気が高く、とくにここにあげた19世紀後半の画家は有名です。これらについて市知己を得てもらうため、どのような人物かどのような作品があるか調べて下さい。授業での発表をおこなってもらいます。
第6回フランス社会の特性、上流と中流
ブルデューの文化的実践の社会学を読み進めると、その背景にはフランス社会の日本社会との違いがかなり色濃く表れています。つまり文化が階級的な違いとして現れるという考えです。日本の社会ではこうしたアプローチが薄いように思わるので、この点をいっそう詳しく考察していきます。参考としてはフランスでの生活を描いた映画や小説などがあげられます。例として人気となった映画「アメリ」や「最強のふたり」をYoutubeでみてください。内容の紹介を発表してもらいます。
第7回フランス社会の変化、移民と郊外地区
日本との大きな違いというと、アメリカやヨーロッパの社会では最近特に大きく取り上げられるのが多様性です。性的マイノリティーや女性の地位という問題は日本にも共通しますが、なんといっても最大のポイントなるのが人種的な多様性です。その背景となっているのは19世紀からの植民地政策と、その後の移民政策による、社会の激変です。これについても調べて発表してもらいたいと考えています。
第8回文化のカジュアル化と大衆化(1)
現代の社会では文化の階級的な特徴よりも、多くの人々が好みに応じて多様な文化に触れて、それらを実践するということが重要となっています。スポーツからアウトドア、映画やマンガ、アイドルオタクまで、身近にある文化の中から自分が好きな分野を選んで調べて発表してもらいます。
第9回文化のカジュアル化と大衆化(2)
現代の社会では文化の階級的な特徴よりも、多くの人々が好みに応じて多様な文化に触れて、それらを実践するということが重要となっています。スポーツからアウトドア、映画やマンガ、アイドルオタクまで、身近にある文化の中から自分が好きな分野を選んで調べて発表してもらいます。
第10回学歴と社会的地位
どのような文化に興味を持つのか、ということと、その人の学歴や社会的地位との間に何か関係があるとしたら・・・、ブルデューによるフランス社会の分析ではこう言った考え方が基本になっているので、日本社会の現状と比較することは果たして可能なのか、考えてみたいと思います。
第11回文化のカジュアル化と大衆化(3)
現代の社会では文化の階級的な特徴よりも、多くの人々が好みに応じて多様な文化に触れて、それらを実践するということが重要となっています。スポーツからアウトドア、映画やマンガ、アイドルオタクまで、身近にある文化の中から自分が好きな分野を選んで調べて発表してもらいます。
第12回ブルデュのライバル、レイモン・ブードン
ブルデューのような考え方、つまり社会的な地位に応じた文化的好みという結びつきに対して、各自がそれぞれの好みに応じていろいろなジャンルを選び取るという、個人中心の考え方をすることも可能です。そうして意味から学歴と不平等をめぐるブードンの理論について学びます。フランス現代社会学の理論について予習が望まれるので、その説明をします。
第13回ブルデュの批判者、ベルナール・ライール
同じく、個人の趣味の好き嫌いの大切さを説くのが現代のフランスの社会学者である、ベルナール・ライールです。高級な文化といっても、もともとは庶民的でみんなが楽しんでいたものがだんだんと発達し、洗練されていったという考え方にも触れてみたいです。参考として映画『アマデウス』をみて、内容を発表してもらいます。
第14回日本でのブルデュー
階層社会といわれるフランスに比べ、比較的平等であるとされる日本ですが、中流の文化や大衆文化が広く普及していると考えられます。身近にどのようなものがあるか調べて発表して下さい。
野球、ラーメン、テーマパーク、お取り寄せ、スイーツなど、衣食住や娯楽にかかわる分野を選んで下さい。
第15回ブルデュー社会学の限界と可能性
全体のまとめとして、フランスにルーツを持つブルデュー社会学と、私たちが住む日本という社会、両者に共通する大衆消費社会という側面がみられるものの、社会の成り立ちにおいてはベースとなる部分にかなり違い見られるのではないでしょうか?全体を通して社会とはどういう性質をもつのかを考えます。論理的に考える意見の発表を期待します。