宗教学Ⅱ
担当者高橋 裕史教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングRES-102

授業の概要(ねらい)

*本講義はコロナ対策の一環として、受講者数を抽選によって50~60人程度に制限します。
世の中を宗教という切り口から分析すると、宗教に関心のある人/関心のない人、信仰心のある人/信仰心のない人、という人々の姿が浮かび上がってくる。宗教心や信仰心の有無とその強弱に関係なく、21世紀の今にあって、私たちが宗教を強く意識する機会や場、あるいは人生の局面は少ないかもしれない。しかしよく注意して観察してみると、 私たちが宗教と接する、もしくは接している/接しざるを得ない場面は意外に多いのではないだろうか。例えば、通夜葬式・法事はいうまでもなく、宗教に伴う食のタブーや宗教に端を発した紛争、宗教法人団体が経営する教育機関への進学などが、その典型的な「場面」ということができる。このように宗教を信じる/信じない、信仰心を持つ/持たないといった問題とは全く無関係に、私たちにとって宗教とは「すぐそこにある」けれども「気づかされることの少ない」存在である。その一例がニュースなどで取り上げられるパレスチナ問題であろう。この問題は、一般的にはパレスチナとイスラエルの対立に米英仏などの大国が介入した、国際政治として説明されることが多い。しかしこの問題の根本原因は『旧約聖書』の「創世記」に記された神ヤハウェの言葉が発端となっている。このように現代の国際問題には宗教が背景となった民族問題や社会問題が存在しているのである。そこでこの「宗教学Ⅱ」では、宗教の持つ様々な側面や役割について、歴史の文脈を中心に見つめ直し、宗教に関する歴史的知見の涵養に努めることにする。つまり宗教学Ⅰでは宗教学の基本的要素および私たちの日常生活の中での宗教との接点を「宗教現象」を中心に論じたが、本講義ではキリスト教と仏教に焦点を当てた「宗教史」の文脈で宗教学を論じることにする。全15回の宗教の歴史を通して見た社会や人々の姿を知ることで、自分以外の「他者理解」に必要な視点を身に付け、それを他者と共有して考え方の幅を広めることができる筈である。

授業の到達目標

・宗教の歴史が人類の長い歴史において果たしてきた役割と現代との連続性に関する基本的な知識を理解することができる。
・宗教史という分野を通して歴史的な物の見方や考え方の重要性と役割を理解することができる。
・宗教に対する客観的な知識と把握の仕方を習得することができる。
・上記の方法を身につけることで、宗教への偏見や誤解を無くし宗教と理知的に接する姿勢を習得することができる。

成績評価の方法および基準

 まず「評価の方法」であるが、この講義では成績評価を冷静かつ厳格に実施するつもりである。また受講諸君の多様で多面的な能力を、筆記による定期試験だけで測ることはできないので、レポートやリアクションペーパーなども取り入れて多面的に評価をしたいものと考えている(因みに前年度の本講義の単位「非認定」率は34%ほどである)。具体的には、
 ・論述式定期試験のみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+リアクションペーパーの場合:前者80%+後者20%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+レポート課題の場合:前者70~80%+後者20~30%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・レポートのみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
上記4種類の方法で成績評価を行う考えである。なおインターネットでの「コピペ」を防ぐために、レポートの海大は高橋が配布した文献の内容読解を中心としたものとなる。またレポート課題の論文は日本語だけではなく英語の論文も考えている(指定した期日を過ぎてのレポート提出は受け付けない)。講義日の開始時に回収する。従って、友達に依頼された分の回収は受け付けない。
*なお正当な理由で受験できなかった人は、一週間以内に教務課に届け出ること(証明書等の提示が必要)。
 次に「評価の基準」については、筆記による定期試験・レポート共に①問題の趣旨を正確に把握できているか、②過不足なく記述されているか、➂事実関係を正確に把握・理解出来ているか、④事実と意見を明確に書き分け、意見の根拠となる理由を明示しているか、⑤筋の通った論理的な日本語で記述されているか、を要点とする。なおフィードバックは、リアクションペーパー実施後1~2週間後をめどに教場内での解説、或はLMS上で実施予定である。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書・高橋の作成したオリジナルのレジュメを配布して用いる。
参考文献・特になし。

準備学修の内容

 この項目では「学習」ではなく「学修」という語がつかわれていることに注意して欲しい。「学習」とは簡単に言うと教室で椅子に座って教員の話を聞き板書された内容をノートに写す、つまり「受け身」の学び方を指す。一方の「学修」の場合、一定の課程にしたがって知識や技術を学んで修得することを意味し、そこには「身に付ける」という「能動的」で「積極的」な姿勢が存在する。このことを踏まえると、本講義の受講希望者は準備学修として、まず宗教もしくは歴史に対する関心の有無を確認して貰いたい。関心のある諸君は、なぜ自分は宗教あるいは歴史に関心があるのか、宗教学Ⅱの講義を通して何を学び習得したいのかということを、反対に関心がなかったり苦手だったりする諸君は、なぜ自分は関心を持てないのか、ということを考えて宗教学Ⅱに使う予定のノートに記しておいて貰いたい。次に本講義を受ける前に抱いている宗教史のイメージを、漠然としたものであっても構わないので、同じく宗教学Ⅱのノートに記載しておいて欲しい。これは全15回の本講義を終えた後に、講義受講前と後とでの自分の宗教/宗教学に対する認識の変化を理解する上で非常に有益なものとなるからである。またメディアで取り上げられる報道の中に宗教の歴史に関わるような問題があるか否かについて注意を払い、新聞記事の場合にはそれを切り抜いて保存して欲しい。その上で講談社現代新書・岩波新書・中公新書・文春新書の中から時代・分野を問わずに歴史関係の本を1冊、時間をかけて読み、宗教史を学ぶ事の意義・歴史的な考え方を自分なりに学んでおいて欲しい。

その他履修上の注意事項

*なお、このシラバスの記載内容とは、多少異なる形やテーマで、実際の講義が進む可能性もあることを、了解されたい。
①「おしゃべり」「電話」は厳禁とする。した場合この講義の履修を事実上「放棄」したものとみなし、即座に教室から退室してもらう。
②受講態度=遅刻、私語、内職、講義の途中退室、やる気のない態度や姿勢(イヤホンやヘッドホンを着用し、椅子にだらしなく腰掛けるなどその他)の悪い学生、真面目に事業を受けようとしている学生諸君の気力に水を差すような言動をする学生については、受講を認めない。
③受講学生である諸君一人一人の態度や姿勢が、帝京大学の「今と将来」の社会的「評価」を、延いては諸君自身の能力・人間性・社会性そのものを決定する、ということを肝に銘じてほしい。
④大学の授業は高校の授業の延長では無いので、その積もりのレベルと内容の講義をするので、心得ていて貰いたい。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス:各回の講義内容の説明・守るべき規範事項の説明・講義の進め方・試験の実施その他について。
第2回代表的宗教に関する「誤解」「無知」:キリスト教や仏教に関して、見落とされている論点、誤認されいてる事項などを学ぶ。
第3回宗教学の中の「宗教史」:宗教学の諸分野における宗教史の位置づけ、宗教史研究の分野・方法論などを学ぶ。
第4回キリスト教の成立:キリスト教がユダヤ教から独立・分派する過程の諸問題などを学ぶ。
第5回キリスト教の展開と拡大:キリスト教がその教勢と影響力を決定的にしたヨーロッパ中世における教会の制度などを学ぶ。。
第6回犯罪者としてのユダヤ人:ユダヤ人はなぜキリスト教史上の「悪者」にされたのか、その背景と過程などを学ぶ。
第7回「聖戦」と「正戦」:後の国際法の成立にも大きな影響を与えた聖戦bellum sacrumと正戦bellum justumとの関係などを学ぶ。
第8回キリスト教と経済の問題:資本主義経済思想の成立に果たしたキリスト教ピューリタニズムとMax Weberの論説などを学ぶ。なおこの授業はLMSでのオンライン授業となります。
第9回日本の仏教史概観:日本仏教の歴史理解の前提なる仏教伝来~江戸時代までの日本仏教の特徴などを学ぶ。
第10回仏教と鎮護国家の時代:日本古代の仏教の代表的事例として律令制国家の運営に果たした仏教の役割と歴史などを学ぶ。
第11回仏教教団の武装化をめぐって:平安~鎌倉初期における仏教教団の武装化の背景・過程・影響などをキリスト教と比較して学ぶ。
第12回宣教師の仏教研究:イエズス会宣教師による仏教研究の背景・目的・内容とその限界などを一次史料を参考に学ぶ。
第13回明治の国家神道と廃仏毀釈:明治政府による国家神道策が、なぜ廃仏毀釈に至ったのか、また各地の廃仏毀釈の実態などを学ぶ。
第14回日本の寺院環境の現状について:現代日本の仏教寺院と住職らが置かれている環境と問題を曹洞宗寺院を事例に学ぶ。
第15回まとめ:全15回の宗教史の学習から「見えてくる」のはどのような事なのか、宗教史を研究する意義などを学ぶ。
試 験(試験は定期試験期間での実施もあり得る)。