宗教学Ⅰ
担当者高橋 裕史教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングRES-101

授業の概要(ねらい)

*本講義はコロナ対策の一環として、受講者数を抽選によって50~60人程度に制限します。
 世の中を宗教という切り口から分析すると、宗教に関心のある人/関心のない人、信仰心のある人/信仰心のない人、という人々の姿が浮かび上がってくる。宗教心や信仰心の有無とその強弱に関係なく、21世紀の今にあって、私たちが宗教を強く意識する機会や場、あるいは人生の局面は少ないかもしれない。しかしよく注意して観察してみると、 私たちが宗教と接する、もしくは接している/接しざるを得ない場面は意外に多いのではないだろうか。例えば、通夜葬式・法事はいうまでもなく、宗教に伴う食のタブーや宗教に端を発した紛争、宗教法人団体が経営する教育機関への進学などが、その典型的な「場面」ということができる。このように宗教を信じる/信じない、信仰心を持つ/持たないといった問題とは全く無関係に、私たちにとって宗教とは「すぐそこにある」けれども「気づかされることの少ない」存在である。しかも日本と海外との接触・交流、日本人の海外進出、また逆に日本における外国人労働者の増加といった現象は、私達がこれまで考えていた以上に、宗教と向き合う局面をもたらすことになってきていると考えられる。そのため、宗教の知識は私たちの生活や労働環境の国際化を進める上で、非常に重要なリテラシーの一つとならざるを得ない。そこでこの授業では、宗教の持つ様々な側面や役割について、歴史・文化・政 治・経済その他の社会的文脈から見つめ直し、宗教に関する知見の涵養に努めることにする。なお、この授業はあくまでも宗教の持つ様々な諸相や問題を取り上げるものであって、特定の宗教の信仰などを勧めるものでは決してない。全15回の宗教を通して見た社会や人々の姿を知ることで、自分以外の「他者理解」に必要な視点を身に付け、それを他者と共有して考え方の幅を広めることができる筈である。

授業の到達目標

・宗教に対する客観的な知識と把握の仕方を習得することができる。
・上記の方法を身につけることで、宗教への偏見や誤解を無くし宗教と理知的に接する姿勢を習得することができる。
・日常生活の中や私たちの身の回りにある宗教を発見することができる。
・宗教信仰の有無に関係なく、宗教を知ることの意味や大切さを理解・認識することができる。

成績評価の方法および基準

 まず「評価の方法」であるが、この講義では成績評価を冷静かつ厳格に実施するつもりである。また受講諸君の多様で多面的な能力を、筆記による定期試験だけで測ることはできないので、レポートやリアクションペーパーなども取り入れて多面的に評価をしたいものと考えている(因みに前年度の本講義の単位「非認定」率は27%ほどであった)。具体的には、
 ・論述式定期試験のみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+リアクションペーパーの場合:前者80%+後者20%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+レポート課題の場合:前者70~80%+後者20~30%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・レポートのみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
上記4種類の方法で成績評価を行う考えである。なおインターネットでの「コピペ」を防ぐために、レポートの海大は高橋が配布した文献の内容読解を中心としたものとなる。またレポート課題の論文は日本語だけではなく英語の論文も考えている(指定した期日を過ぎてのレポート提出は受け付けない)。講義日の開始時に回収する。従って、友達に依頼された分の回収は受け付けない。
 *なお正当な理由で受験できなかった人は、一週間以内に教務課に届け出ること(証明書等の提示が必要)。
 次に「評価の基準」については、筆記による定期試験・レポート共に①問題の趣旨を正確に把握できているか、②過不足なく記述されているか、➂事実関係を正確に把握・理解出来ているか、④事実と意見を明確に書き分け、意見の根拠となる理由を明示しているか、⑤筋の通った論理的な日本語で記述されているか、を要点とする。なおフィードバックは、リアクションペーパー実施後1~2週間後をめどに教場内での解説、或はLMS上で実施予定である。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特定の教科書は使用せず、高橋の作成したレジュメを配布して講義を進める。
参考文献特になし。

準備学修の内容

 この項目では「学習」ではなく「学修」という語がつかわれていることに注意して欲しい。「学習」とは簡単に言うと教室で椅子に座って教員の話を聞き板書された内容をノートに写す、つまり「受け身」の学び方を指す。一方の「学修」の場合、一定の課程にしたがって知識や技術を学んで修得することを意味し、そこには「身に付ける」という「能動的」で「積極的」な姿勢が存在する。このことを踏まえると、本講義の受講希望者は準備学修として、まず宗教に対する関心の有無を確認して貰いたい。関心のある諸君は、なぜ自分は宗教に関心があるのか、宗教学の講義を通して何を学び習得したいのかということを、反対に宗教に関心がなかったり苦手だったりする諸君は、なぜ宗教が苦手で関心もないのか、ということを考えて宗教学に使う予定のノートに記しておいて貰いたい。次に本講義を受ける前に抱いている宗教イメージを、漠然としたものであっても構わないので、同じく宗教学用のノートに記載しておいて欲しい。これは全15回の本講義を終えた後に、講義受講前と後とでの自分の宗教/宗教学に対する認識の変化を理解する上で非常に有益なものとなるからである。またメディアで取り上げられる報道の中に宗教的な問題が関わっているものがあるか否かについて注意を払い、新聞記事の場合にはそれを切り抜いて保存して欲しい。その上で講談社現代新書・岩波新書・中公新書・文春新書の中から時代・分野を問わずに歴史関係の本を1冊、時間をかけて読み、商況を学ぶ事の意義・歴史的な考え方を自分なりに学んでおいて欲しい。

その他履修上の注意事項

・本講義は宗教学ではあるが、宗教と人間との関りは非常に長くて深い。よって歴史に関する知識と学習も本講義受講の前提条件となる。そこで受講希望の諸君には上記の「5.」で挙げた新書類の中から地域・時代・分野を問わずに歴史関係のものを何冊か選び、要点となる箇所をマークしながら読んで欲しい。また宗教学は様々な分野の研究領域・成果に関わっているので、政治学・経済学・法学・語学などに関する知識も、他の講義を通じて同時に学ぶことを勧める。
・講義中に必ず守ってもらうべき「規範事項」は、次の諸点である。
①「おしゃべり」「電話」「メール」は厳禁とする。スマホ、携帯はマナーモードにして貰う。
②受講態度=遅刻、私語、内職、講義の途中退室、やる気のない態度や姿勢(イヤホンやヘッドホンを着用し、椅子にだらしなく腰掛けるなどその他)の    
悪い学生、真面目に講義を受けようとしている学生の気力に水を差すような言動をする学生については厳しく対処する。
➂抜き打ちでの出席調査、小試験を実施する際に、授業を抜け出した友達に、スマホ・携帯・LINEを使って連絡をすることは認められない。
・その他に受講諸君に心得ていて欲しいことを記すと、①受講学生である諸君一人一人の態度や姿勢が、帝京大学の「今と将来」の社会的「評価」と、「将来」の諸君自身の能力・人間性・社会性そのものの「評価」を決定する、ということを肝に銘じてほしい。②少なくともこの講義では、分からない部分が多くても、将来の自分への自己投資と思って我慢強く講義に望 むことを自分に言い聞かせること、ということである。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス:各回の講義内容・守るべき規範事項・講義の進め方・試験その他についての説明。
宗教学の基本事項:宗教とは何か・宗教現象とは何か・宗教学の成立とその分野、などを学ぶ。
第2回私たちと「宗教」:宗教教義の学習だけが宗教ではない・身の回りの宗教・宗教を感じる時、などを学ぶ。
第3回なぜ宗教は「縁遠い」のか:宗教は人間にとって、目には見えない形で役立ってきているのに、宗教はますます遠い存在となっているが、それはなぜなのか、などを学ぶ。
第4回「食と宗教」をめぐって:食文化研究の問題・宗教は食にどう関わっているのか・宗教と食のタブー、などを学ぶ。
第5回「犯罪・罪と宗教」をめぐって:宗教団体の問題・宗教に対する不信感・カルト宗教による犯罪、などを学ぶ。なおこの授業はLMSでのオンライン授業となります。
第6回「医療と宗教」をめぐって:自然科学の特質・自然科学と人文科学・医学の世界の宗教・信仰と医療行為、などを学ぶ。
第7回死のセレモニー:死とは何か・死の意味するところ・死体はなぜ気味悪いのか・火葬の意味するところ、などを学ぶ。
第8回不可思議な体験:理の外の世界・幾つかの体験の事例(保育所、シェアハウス)・不可思議をどう解釈すべきか、などを学ぶ。
第9回心霊現象をめぐる諸問題:心霊と心霊現象・一般的な理解・苦悩する死者・心霊現象の社会問題、などを学ぶ。
第10回臨死体験をめぐって:臨死体験とは何か・臨死体験の共通現象・国際臨死体験学会の報告・3つの体験談、などを学ぶ。
第11回De reincarnatione:輪廻転生とは・江戸時代の『勝五郎再生記聞』・アメリカと日本の事例・生まれ変わりの解釈、などを学ぶ。
第12回「祈り」について:祈りとは何か・キリスト教の祈り・仏教の祈り・人はなぜ祈るのか・祈りに効果はあるのか、などを学ぶ。
第13回「過去」を読み解く「鍵」としての宗教:宗教を知ることで見えてくる「過去」の問題について、ヨーロッパの事例などを中心に、そこから得られる教訓についても学ぶ。
第14回「現代」を読み解く「鍵」としての宗教:宗教が現代社会の様々な局面においても重要な機能を果たしている事を、フランスなどの事例を中心に学ぶ。
第15回まとめ:宗教を学ぶ事の意義・宗教に対する誤解や偏見を取り除いて見えてくるもの、などを学ぶ。
試験(定期試験期間での実施もあり得る)。