公認心理師の職責
担当者元永 拓郎教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングCLI-303

授業の概要(ねらい)

 心の健康の保持増進は、専門家のみならず国民ひとりひとりが意識して取り組む必要がある。専門家も心理学のみならず医学、看護学、福祉学、教育学その他の分野の多職種が担っている。他の職種が国家資格化されてきたのに対して、心理学に基づく専門家が国家資格化されたのは、2015年9月の公認心理師法成立によってである。
 公認心理師法によって、公認心理師という心理学に基づく国家資格が誕生することとなる。しかしこの資格の設立経緯からみても、心理学という学問のための資格ではなく、あくまで国民の心の健康の保持増進に貢献するための資格であることに充分に留意する必要がある。国民の心の健康に関する課題は、複雑化し困難化している現状がある。学問は時としてそれらの現場のニーズを読み取れず、学問のための学問となることもある。公認心理師が真の意味で国民に資するものとなるために、この資格の役割や意義、現状や課題などについて、幅広く学習する必要がある。
 具体的な学習内容は、以下の10点を中心とする。
  1. 公認心理師の役割
  2. 公認心理師の法的義務及び倫理
  3. 心理に関する支援を要する者等の安全の確保
  4. 情報の適切な取扱い
  5. 保健医療、福祉、教育その他の分野における公認心理師の具体的な業務
  6. 自己課題発見・解決能力(コンピテンシーの理解)
  7. 生涯学習への準備(公認心理師の職業的発達)
  8. 多職種連携及び地域連携
  9. 公認心理師における研究の意義
  10. 公認心理師と臨床心理士の関係について
 公認心理師が目指す実践内容のほとんどは、これまで臨床心理学及び臨床心理士の諸活動によって実績が積み重ねられている。心理学を理論的基礎とし、社会に生じるさまざまな「心理的ニーズ」を見立て、心の奥深い部分でかかわり、その営みを総合的に評価するための実践的学問が臨床心理学であり、医療、教育、産業、福祉、司法・矯正といったさまざまな分野においてその実践が積み重ねられている。
 公認心理師は、臨床心理士のこれまでの活動を、国家資格として引継ぎ、日本全国で心の健康をささえる活動が展開できるよう準備が始まっている。将来公認心理師(臨床心理士)になりたい人は、この講義を履修し、具体的な心理専門職としての心構えを身につける必要がある。

 この科目は、公認心理師プログラムを履修している学生のみが選択できる。

授業の到達目標

 1)公認心理師の業務と役割について、心理学のさまざまな側面も含め概説できる
 2)公認心理師の法的義務や倫理について概説できる
 3)公認心理師が活動する諸分野と多職種連携について説明できる
 4)公認心理師としての実践力、自己解決能力、研究、生涯学習、自分の人生展開との関係について、考えを持ち表明できる

成績評価の方法および基準

試験50%、小テスト20%、レポート30%
到達目標に達しているかを問う設問への回答を求める
授業を5回を超えて欠席した場合、試験を受けることができない。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書公認心理師の職責 [公認心理師の基礎と実践➀]野島一彦編著遠見書房
参考文献心の専門家が出会う法律[改訂新版]金子和夫監修
津川律子・元永拓郎編
誠信書房
参考文献公認心理師現任者講習会テキスト[2020年度版]一般財団法人日本心理研修センター監修金剛出版

準備学修の内容

 教科書の次回授業範囲について充分に読み込み、各単元にある確認事項について、簡単にノートにまとめて授業に参加する。そのことを前提として、授業およびLMSで設定されるワークに取り組むことになる。またLMSにて配布する授業レジュメに事前に目を通し、自分自身の意見を用意して授業に臨み、授業内でのディスカッションやグループワークに備える。

その他履修上の注意事項

心理学科の公認心理師プログラムの履修が許可された学生のみが選択できる。
公認心理師となる上での中核科目のひとつであり、心理演習ⅠⅡ、心理実習ⅠⅡとの関連が強い。
「関係行政論」の授業と合わせて学修することで理解が深まる。

授業内容

授業内容
第1回前期ガイダンス/公認心理師とは?/心理専門職の本質とは?
プロフェッショナリズムとは? *グループワーク
第2回公認心理師の業務と役割/公認心理師と心理学、臨床心理学
公認心理師になるための学修の歩み(学部、大学院、初期研修など) *レポート提出
第3回心の健康に関する支援の歴史/公認心理師と臨床心理士/公認心理師と研究
第4回公認心理師法と関連する法律(オンライン)
公認心理師の社会的使命について
第5回公認心理師の法的義務と倫理の基本/心理専門職の職業倫理 *倫理に関するディスカッション
第6回公認心理師の倫理の実際/個人情報保護、多重関係、多職種協働
第7回公認心理師と心理学的支援に関する諸理論
心理支援の多様な展開
第8回保健医療分野における公認心理師の職責
第9回福祉分野における公認心理師の職責
第10回教育分野における公認心理師の職責
第11回司法・犯罪分野における公認心理師の職責
第12回産業・労働分野における公認心理師の職責
第13回分野横断的な公認心理師の活動/地域包括ケア/自殺対策、異文化適応、開業
第14回公認心理師の職業的発達、生涯学習/公認心理師の現状と未来 *グループワーク
第15回まとめ/公認心理師の本質とは?/どのような公認心理師となるか?