日本史概説Ⅰ(教職)
担当者高橋 裕史教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [法律学科 2017年度以前]
科目ナンバリングESS-101

授業の概要(ねらい)

 国際語Lingua francaである英語の知識と運用能力の必要性が声高に主張されて久しく、また実際に高度な英語力を駆使して各界で活躍する日本人も大勢いる。その一方で、日本の文化や歴史に関する知識不足のせいで、欧米人から日本の事を尋ねられても満足に返答できず恥ずかしい思いをしたと述回する、「英語の良く出来る」日本人も少なくない。我が国の基本的な歴史の流れを知り理解することは、決して「右寄り」な考えでも姿勢でもなく、歴史認識の重要性が問われている今だからこそ、日本の歴史を知ることは極めて現実的な課題でもある。また教職志望の諸君にとって日本史の概略や概要を知ることは必須の知識かつ素養となる。そこで本講義では、上述した問題意識に立脚して、原始時代〜近現代に至る長大な日本と日本人の「歩み」や「試行錯誤」の歴史を、政治・文化・外交・社会その他、様々な切り口から取り上げ、日本の歴史の論点を考えて行くことにする。ただし本講義は日本史の諸項目を「暗記する」ことではなく、歴史学の方法論に基づいた「歴史的な思考力を育てる」ことを主要な目的の一つに設定している。従って「暗記すれば何とかなる」という姿勢での受講は、大きな誤算となることを明記しておく。

授業の到達目標

●歴史学習の方法と在り方を「暗記する歴史」から「考え・発見する歴史」へと成長・発展させることができる。
●教育実習で求められる最低限の日本史の知識を習得し、模擬授業を実施出来るようにすること。
●日本史を通して過去の時代に生きていた人々の社会や文化などを追体験し、説明することができる。
●日本史の多様な時代と領域の中から「生涯教養」として学び続けられるようなテーマを「発見」できる。

成績評価の方法および基準

 まず評価の方法であるが、この講義では成績評価を冷静かつ厳格に実施するつもりである。また受講諸君の多様で多面的な能力を、筆記による定期試験だけで測ることはできないので、レポートやリアクションペーパーなども取り入れて多面的に評価をしたいものと考えている(因みに前年度の本講義の単位「非認定」率は35%ほどである)。具体的には、
 ・論述式定期試験のみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+リアクションペーパーの場合:前者80%+後者20%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+レポート課題の場合:前者70~80%+後者20~30%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・レポートのみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
上記4種類の方法で成績評価を行う考えである。なおインターネットでの「コピペ」を防ぐために、レポートの海大は高橋が配布した文献の内容読解を中心としたものとなる。またレポート課題の論文は日本語だけではなく英語の論文も考えている(指定した期日を過ぎてのレポート提出は受け付けない)。講義日の開始時に回収する。従って、友達に依頼された分の回収は受け付けない。
*なお正当な理由で受験できなかった人は、一週間以内に教務課に届け出ること(証明書等の提示が必要)。
 次に評価の基準については、筆記による定期試験・レポート共に①問題の趣旨を正確に把握できているか、②過不足なく記述されているか、➂史実関係を正確に把握・理解出来ているか、④事実と意見を明確に書き分け、意見の根拠となる理由を明示しているか、⑤筋の通った論理的な日本語で記述されているか、を要点とする。なおフィードバックは、リアクションペーパー実施後1~2週間後をめどに教場内での解説、或はLMS上で実施予定である。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『詳説日本史図録 第8版』詳説日本史図録編集委員会山川出版社
教科書
参考文献『新もういちど読む山川日本史』 ・取り上げる論点とテーマが広範囲に及ぶので、その関係の書籍も上記参考書とは別に、該当テーマの講義内で必要に応じて紹介する。五味文彦・鳥海靖山川出版社

準備学修の内容

 この項目では「学習」ではなく「学修」という語がつかわれていることに注意して欲しい。「学習」とは簡単に言うと教室で椅子に座って教員の話を聞き板書された内容をノートに写す、つまり「受け身」の学び方を指す。一方の「学修」の場合、一定の課程にしたがって知識や技術を学んで修得することを意味し、そこには「身に付ける」という「能動的」で「積極的」な姿勢が存在する。このことを踏まえると、本講義の受講希望者は、準備学修として、まず歴史が好きな諸君は、なぜ自分は歴史に魅かれているのか、自分は歴史の講義を通して何を学び習得したいのかということを、反対に歴史が苦手な諸君は、なぜ自分は歴史が苦手なのか、これまで自分は歴史の授業をどのような姿勢で受けて来たのか、ということを第一に考えてノートなどに記して貰いたい。次に世界史・日本史といった教科分野にとらわれず、メディアで取り上げられる報道の中に歴史的な問題が関わっているものがあるか否かについて注意を払い、新聞記事の場合にはそれを切り抜いて保存して欲しい。その上で講談社現代新書・岩波新書・中公新書・文春新書の中から時代・分野を問わずに歴史関係の本を1冊、時間をかけて読み、歴史を学ぶ事の意義・歴史的な考え方を自分なりに学んで欲しい。

その他履修上の注意事項

*なお、このシラバスの記載内容とは、多少異なる形やテーマで、実際の講義が進む可能性もあることを、了解されたい。またアトランダムに講義時間を使って「小試験」を実施することも予定している。
・本講義は日本史ではあるが、日本の歴史は日本単独で形成されたものではない。従って日本史以外の歴史に関する知識と学習も本講義受講の前提条件となる。受講希望の諸君には西洋史、東洋史に関する上記の「5.」で挙げた新書類の中から何冊かを選び、要点となる箇所をマークしながら読んで欲しい。また歴史学は様々な分野の研究領域・成果に関わっているので、政治学・経済学・法学・語学などに関する知識も他の講義を通じて同時に学ぶことを勧める。
・講義中に必ず守ってもらうべき「規範事項」は、次の諸点である。
①「おしゃべり」「電話」「メール」は厳禁とする。スマホ、携帯はマナーモードにして貰う。
②受講態度=遅刻、私語、内職、講義の途中退室、やる気のない態度や姿勢(イヤホンやヘッドホンを着用し、椅子にだらしなく腰掛けるなどその他)の 悪い学生、真面目に講義を受けようとしている学生の気力に水を差すような言動をする学生については厳しく対処する。
➂抜き打ちでの出席調査、小試験を実施する際に、授業を抜け出した友達に、スマホ・携帯・LINEを使って連絡をすることは認められない。
・その他、受講諸君に心得ていて欲しいことを記すと、
①受講学生である諸君一人一人の態度や姿勢が、帝京大学の「今と将来」の社会的「評価」を、延いては諸君自身の能力・人間性・社会性そのものを決定する、ということを肝に銘じてほしい。
②少なくともこの講義では、分からない部分が多くても、将来の自分への自己投資と思って我慢強く講義に望 むことを自分に言い聞かせること。
➂学の授業は高校の授業の延長では無いので、その積もりのレベルと内容の講義をするので、心得ていて貰いたい。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス(講義内容の説明、守るべき規範事項の説明、講義の進め方その他)+授業「なぜ日本史を、そして歴史を学ぶのか」
第2回縄文時代・弥生時代の日本:日本列島の形成、日本人の起源、縄文文化と弥生文化その他、現在の日本の基層となった時代を学ぶ。
第3回小国分立の状態からヤマト政権の誕生へ:邪馬台国成立前後の日本、大陸との歴史的関係、古墳文化、ヤマト政権、氏姓制度など、後の時代の古代日本の前史となる時代を学ぶ。
第4回仏教の伝来・飛鳥時代・大化の改新:仏教公伝前後の日本、聖徳太子を中心とした飛鳥時代の政治、蘇我氏の専横と乙巳の変、天智天皇による大化の改新、壬申の乱を経て政権を取った天武天皇と持統天皇の時代を学ぶ。
第5回律令制国家の諸問題:律令制度の前史、律令制度による政治の仕組み、聖武天皇による鎮護国家の時代などを学ぶ。
第6回平安時代と武士の誕生:桓武天皇による平安遷都と政治、藤原氏による摂関政治、院政と武士の台頭などの時代を学ぶ。
第7回日本古代の文化の諸相:飛鳥時代、奈良時代、平安時代の各文化の諸相について学ぶ。
第8回源平の争乱と鎌倉幕府の時代:平安後期に始まる武士の誕生と台頭、源平の争乱を経て平氏が滅んで源氏が政権をとり、源頼朝による鎌倉幕府の創設とその政治の特色、北条氏の台頭と得宗政権などを学ぶ。
第9回室町幕府の時代:北条氏の没落と室町幕府の誕生、室町幕府による内外政、土一揆など室町時代を特徴づける問題を学ぶ。
第10回鎌倉と室町の文化:鎌倉新仏教、戦記文学、室町時代の禅文化、文化の地方への普及などを学ぶ。なおこの授業はLMSでのオンライン授業となります。
第11回戦国時代の幕開けと戦国大名の領国統治:応仁の大乱と下剋上、室町幕府の滅亡と戦国大名の登場、戦国大名による領国統治、有力戦国大名の群雄割拠などを学ぶ。
第12回織豊政権をめぐる諸問題:織田信長の台頭とその政治戦略、本能寺の変とその原因、豊臣秀吉の台頭とその戦略などを学ぶ。
第13回大航海時代の幕開け:大航海時代の歴史的前提、ポルトガルとスペインの東洋進出とその背景、ローマ教皇とデマルカシオン、一国史観かた地域史観へなどを学ぶ。
第14回西欧勢力の日本進出:ポルトガルの日本進出、種子島へのポルトガル人の漂着とデマルカシオンの問題、武器移転現象としての火縄銃の問題などを学ぶ。
第15回まとめ:「暗記する歴史」から「考える歴史」への思考方法の転換は、なぜ重要で必要なのかについて学ぶ。
試験(定期試験期間での実施もあり得る)。