心理学研究演習Ⅲ
担当者稲垣 綾子教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングSEM-401

授業の概要(ねらい)

《子どもと家族の心理支援に関する理解と研究》
 心理療法には大きくふたつの括りがあります。一つは,精神分析などの個人心理療法が担ってきた「個人の内的プロセスに働きかける介入」,もう一つは,家族療法などが取り組んできた「対人間の相互交流に働きかける介入」です。昨今の臨床現場では,個人レベルの問題と対人間レベルの問題が絡み合い,多種多様の課題や困難が繰り広げられています。とくに,子どもと家族,さらにコミュニティに関わる領域ではこうした多層的なアプローチについて理解を深めていくことは重要です。
こうした視点は心理職をはじめ対人援助に携わりたいと考えている学生だけでなく,一般就労を目指す学生にとっても,広くて奥深い人間理解として役に立つでしょう。

 このゼミではⅠ~Ⅳにて,子どもと家族の心理援助に役立つ,以下の3つの視点を深め,調査や介入研究を行っていきます。
   ① 「個人の心のなかには人がいる」     ・・・ 対象関係の視点
   ② 「安心の基地から探索・社交システムへ」 ・・・ アタッチメントの視点
   ③ 「関係性のなかでしごとをする」     ・・・ 家族療法の視点

 春学期のⅠでは,「個人」と「対人間」それぞれに向ける“目と耳と,感じ考える心”を養うことを目的に,個人・家族臨床事例に関するディスカッションやロールプレイ,ファミリープレイジェノグラムを通して理解を深めます。また,子どもや家族への心理援助に関する文献を読み,同時に,秋学期に行う調査・介入研究に向けて計画を立てていきます。
 4年生が履修するⅢでは,3年次に実施した研究データ分析を進め,進捗を発表し,心理学レポートとしてまとめていきます。また卒業論文Ⅰを履修する学生は,計画・進捗発表をしながら進めていきます。
 なお,子どもにかかわる実践として,ボランティア活動(小学校における子どもたちの放課後支援,障害をもつ子どもたちへの療育支援など)の希望も積極的に受け入れます。

授業の到達目標

1)個人を対象とした心理療法と,家族や地域への心理援助の違いと共通点を説明できる。
2)子ども青年と家族の心理援助でテーマになる諸問題について説明できる。
3)心理援助における,力動的視点と関係システム的視点,それらをつなぐアタッチメントの視点を理解する。
4)判定的な態度ではなく,さまざまな価値観やあり方を尊重する姿勢を身につける。

成績評価の方法および基準

 発表・課題50%,ディスカッション・ロールプレイなどのアクティビティへの参加度30%,授業態度20%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献

準備学修の内容

 授業時間以外にも,先行研究のまとめ,調査,発表準備,ミーティングなどを要します。
 自主的,積極的,協力的な学生の参加を求めます。

その他履修上の注意事項

 ロールプレイやワークでは自分のことを題材にすることがあります。この点を承知の上,希望してください。

授業内容

授業内容
第1回オリエンテーション
個と関係性への心理臨床的アプローチ
―力動的,発達的,関係システム論的視点による実践―
第2回子どもと家族を対象にした臨床事例&ディスカッション
第3回家族療法事例/個人療法事例(DVD)&ディスカッション(/は隔年実施)
第4回実習①:基本的傾聴技法・ロールプレイ
第5回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第6回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第7回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第8回実習②:家族療法ロールプレイ/ファミリープレイジェノグラム(/は隔年実施)
第9回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第10回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第11回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第12回4年生の発表/3年生の輪読・ディスカッション
第13回4年生:調査・中間レポート作成/3年生:秋学期の調査・介入研究にむけての準備
第14回4年生:調査・中間レポート作成/3年生:秋学期の調査・介入研究にむけての準備
第15回まとめ(オンライン授業)