心理学研究演習Ⅳ
担当者稲垣 綾子教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [心理学科 2018年度以降]
科目ナンバリングSEM-402

授業の概要(ねらい)

《子どもと家族の心理支援に関する理解と研究》
 心理療法には大きくふたつの括りがあります。一つは,精神分析などの個人心理療法が担ってきた「個人の内的プロセスに働きかける介入」,もう一つは,家族療法などが取り組んできた「対人間の相互交流に働きかける介入」です。昨今の臨床現場では,個人レベルの問題と対人間レベルの問題が絡み合い,多種多様の課題や困難が繰り広げられています。とくに,子どもと家族,さらにコミュニティに関わる領域ではこうした多層的なアプローチについて理解を深めていくことは重要です。
 こうした視点は心理職をはじめ対人援助に携わりたいと考えている学生だけでなく,一般就労を目指す学生にとっても,広くて奥深い人間理解として役に立つでしょう。

 このゼミではⅠ~Ⅳにて,子どもと家族,コミュニティの心理援助に役立つ,以下の3つの視点を深め,調査や介入研究を行っていきます。
   ① 「個人の心のなかには人がいる」     ・・・ 対象関係の視点
   ② 「安心の基地から探索・社交システムへ」 ・・・ アタッチメントの視点
   ③ 「関係性のなかでしごとをする」     ・・・ 家族療法の視点

 秋学期のⅡは,グループで調査・介入研究を実施し,データを取得していきます。データの整理ならびに分析を通して,何が起きているのかを考え,上記の視点,もしくはいずれかの視点から検討していくことを目指します。
4年生が履修するⅣでは,論文形式で心理学レポートとしてまとめていきます。中盤には,4年生の研究発表会を実施します。パワーポイントで,なるべく原稿をみないで発表するレベルを目指します。卒業論文Ⅱを履修している人は,調査の実施と論文執筆をすすめ,進捗について発表していきます。また,3年生の調査・介入研究の実施ならびに整理・分析作業に,先輩として助言や協力をしていくなど具体的なサポート役を担っていきます。

 Ⅰ・Ⅲより引き続き,個と関係性にかかわる実践として,ボランティア活動(小学校における子どもたちの放課後支援,障害をもつ子どもたちへの療育的支援など)の希望も受け入れます。

授業の到達目標

1)個人を対象とした心理療法と,家族や地域への心理援助の違いと共通点を説明できる。
2)子ども青年と家族の心理援助でテーマになる諸問題について説明できる。
3)心理援助における,力動的視点と関係システム的視点,それらをつなぐアタッチメントの視点を理解する。
4)判定的な態度ではなく,さまざまな価値観やあり方を尊重する姿勢を身につける。

成績評価の方法および基準

 発表・課題50%,調査活動・ディスカッションなどのアクティビティへの参加度30%,授業態度20%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献初心者のための臨床心理学研究実践マニュアル      津川律子・遠藤裕乃著金剛出版
参考文献質的研究法 能智正博著東京大学出版会
参考文献臨床現場で役立つ質的研究法 臨床心理学の卒論・修論から投稿論文まで 福島哲夫編新曜社

準備学修の内容

 授業時間以外にも,先行研究のまとめ,調査,発表準備,ミーティングなどを要します。
 

その他履修上の注意事項

 ロールプレイやワークでは自分のことを題材にすることがあります。この点を承知の上,希望してください。
 「心理的アセスメント論」を履修,ないし,並行して履修することをお勧めします。

授業内容

授業内容
第1回オリエンテーション
第2回4年生:夏休みの課題・発表/3年生:夏休みの課題・先行研究の発表
第3回4年生:結果をまとめ,考察としてまとめる
3年生:問題と目的をまとめ,方法を導き出す
第4回4年生:結果をまとめ,考察としてまとめる
3年生:問題と目的をまとめ,方法を導き出す
第5回3年生:調査・介入研究の実施/4年生:調査・介入研究のサポート
第6回3年生:調査・介入研究の実施/4年生:調査・介入研究のサポート
第7回3年生:調査・介入研究の実施/4年生:調査・介入研究のサポート
第8回3年生:調査・介入研究の実施/4年生:調査・介入研究のサポート
第9回3年生:調査・介入研究の実施/4年生:調査・介入研究のサポート
第10回4年生の研究発表会(パワーポイントにて発表)
第11回3年生:データ整理/4年生:データ整理のサポート
第12回3年生:データ整理/4年生:データ整理のサポート
第13回3年生:データ分析/4年生:データ分析のサポート
第14回3年生:データ分析/4年生:データ分析のサポート
第15回まとめ(オンライン授業)