東洋法制史Ⅱ
担当者田中 俊光教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [法律学科 2017年度以前]
科目ナンバリングFUL-204

授業の概要(ねらい)

日本において東洋(Orient)とは、西洋(Occident)の対義語で、西洋はほぼヨーロッパをいうが、東洋については、アジア全体であったり、東南アジアと北東アジアであったり、極東だけであったりと一定ではない。
この講義では、東アジアの国のなかでも、前近代においては中国の影響、近代以降は日本や欧米の影響を色濃く受けた朝鮮半島における法制史を学修する。朝鮮半島の法制度は本来どのようなものであって、どのように発展し、西洋法の継受から現在に至るまで、旧来の法意識が近代的法制とどのように相互に作用していて、今後どのように変容する可能性があるのかについて、考えていきたい。
後期では、前近代の王朝の中で比較的多くの資料が残り、法と社会の実態を知ることができる朝鮮王朝における法意識、身分と法的能力、家族関係と財産相続、取引法、刑罰論、裁判制度といった側面から、前近代の朝鮮半島の法と社会について認識するとともに、比較法的な視野から現代日本の法制度を深く理解する。

授業の到達目標

①前近代の朝鮮半島における各分野の法制度の特徴に関するある程度応用的な知識を獲得し、説明できる。
②朝鮮半島の前近代の家族法、財産法、刑法、裁判手続法の各分野における様々な法理について知ることで、比較法的視野から現代日本の法制度に内在する東アジア的要素を説明できる。

成績評価の方法および基準

授業への取組み(30%)および期末試験(70%)で評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特定のテキストは使用しない。毎回授業のレジュメを配布する。
参考文献朝鮮朝刑罰制度の研究矢木毅朋友書店
参考文献李朝の財産相続法朝鮮総督府編国書刊行会
参考文献朝鮮の祭祀相続法朝鮮総督府編国書刊行会
参考文献《世界歴史大系》朝鮮史1先史~朝鮮王朝李成市ほか編山川出版社
参考文献《世界歴史大系》朝鮮史2近現代李成市ほか編山川出版社
参考文献その他、講義の中で適宜紹介する。

準備学修の内容

授業は、配布するプリントに従って進めていくので、それまでに配布したプリントを読んで復習しておくこと。
次回の授業で使用するプリントを事前に配布するので、プリントの括弧内に入るキーワードを授業前に自分で調べて書き入れること。
参考書として指示した文献の関連部分をあらかじめ読むこと。

その他履修上の注意事項

興味関心を持って授業に臨むこと。

授業内容

授業内容
第1回《オンライン授業》
ガイダンス
朝鮮における法典編纂史の概説
第2回法思想と法意識(1)―法思想の視角/朝鮮時代の法思想
 法思想の視角
 法思想の変化(変法思想)
第3回法思想と法意識(2)―民衆の法意識/権利意識
 法と民衆の法意識
 開化期および植民地期の法意識
第4回身分制度と法的能力
 身分制度
 身分と法的能力
第5回戸籍制度
 高麗時代までの戸籍
 朝鮮時代の戸籍
 開化期以降の戸籍
第6回宗族法―宗族結合/墓山と位土
 「家」と「宅」
 宗族結合
 墓山と位土
 家長権
第7回家族生活の法(1)―親族の範囲/婚姻
 親族の範囲と喪服制度
 婚姻
第8回家族生活の法(2)―親と子の法的関係
 父母と子女
 養子
第9回家族生活の法(3)―家系・祭祀継承と財産相続
 家系継承と祭祀相続
 財産相続
第10回土地法―土地所有権
 土地制度の変遷
 土地所有権
第11回取引生活の法―田土奴婢の売買/立案手続/権売/典当
 売買
 担保制度
第12回刑法―律の総則的特徴・各論的内容と朝鮮独自法の優先原則
 歴代王朝と中国法
 朝鮮時代の刑罰
 律の科刑上の特徴
 特定の犯罪に対する独自法での刑の加重・減軽事例
第13回裁判制度(1)―詞訟を「聴く」(民事的裁判手続)
 裁判の概念
 裁判機関
 詞訟の手続
第14回裁判制度(2)―刑獄を「断ずる」(刑事的裁判手続)
 朝鮮時代の裁判手続
 詔獄の類型
 断獄(一般刑事裁判)
第15回まとめ