時事問題講座Ⅱ
担当者平林  彰, 清水 美宏
単位・開講先選択  2単位 [自己啓発支援科目]
科目ナンバリングCAE-311

授業の概要(ねらい)

 この科目は副題を『デジタル社会論』として開講し、連絡などでも「時事問題講座Ⅱ(デジタル社会論)」の名称を使用します。
 1990年のwww公開以降、デジタル化の進展でわたしたちの社会は大きく変わりました。とくに大量のデータを収集し分析する技術によって、「石油の世紀」に代わる「データの世紀」が到来しました。買い物がスマホひとつで済んで便利になる一方、個人のあらゆる行動がデータとなって吸い上げられ、所得の格差やプライバシーなどの問題も起きています。皆さんは人類史に残る大変革の時代をどう生きていくのか。日本経済新聞社の論説委員、編集委員らベテラン記者が交代で解説し、政治、経済、産業、社会の各分野についてインターネット社会の課題解決の道筋を考えます。

授業の到達目標

 ①デジタル化がもたらした国際政治、世界経済の新たな枠組みを理解する。
 ②世界と日本のデジタル化の方向、強さ、速さを読み取り、次代を切り開くための長期的な視座を身につける。
 ③さまざまな業種、業界のデジタル対応を学ぶことで、将来の職業選択の参考になる知識を得る。

成績評価の方法および基準

 最終評価は定期試験の点数によって決定します。毎回の授業はオンラインですが、試験は対面で実施します。日時、教室はのちほどお知らせします。問題は4者択一式の50問で、資料、ノートなどは持ち込み不可とします。上記にある授業の目標①~③の到達度を計るため、ガイダンス/プロローグを除く14回の授業内容からまんべんなく出題します。そのテーマに関する一般的な知識があったとしても、授業に参加しなければ正答が難しい問題も含むので、毎回必ず視聴してください。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 とくに使用しません。
参考文献 日本経済新聞、日経産業新聞、日経MJ、Nikkei Asiaなどの掲載記事を資料として随時使用します。いずれも講師が用意します。

準備学修の内容

 毎回の授業後に次回のテーマと予習用のキーワードを提示します。キーワードの意味を自分で調べ、そのテーマに関する主要な論点をつかんだうえで授業に臨んでください。復習としては、授業内容を自分なりに要約し、新たに得た知見や感想をメモにまとめる習慣をつけてください。予習・復習を合わせて所要2時間程度を見込みます。

その他履修上の注意事項

 1)1~15回とも配信授業とします。シラバス上の授業日は毎木曜4限(14:45~)ですが、これに先立つ火曜正午をめどにPDF資料と解説動画を配信し、1週間後の同時刻まで閲覧、視聴可能とします。資料などのURLは科目掲示板を通じて全受講生に通知するので見逃さないようにしてください。
 2)授業内容に関する質問があれば、その週の木曜日中に送ってください。後日、講師から回答します。いただいた質問および回答は、原則として受講者全員に公開します。類似の質問はまとめてお答えするほか、内容によってはお答えできない場合があるのでご了承ください。
 3)最新の情勢に合わせて、授業の内容や順番を変更する場合があります。
 4)日本経済新聞電子版の有料コンテンツが1カ月間、無料で閲覧できるIDを配布します。予習・復習の一環として、関連記事を読んだり用語の意味を調べたりするのに活用できますが、有料会員になっていただくことを推奨するものではありません。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス/プロローグ
 ガイダンスでは今後の授業の狙いやおもな内容、評価方法について説明します。プロローグは科目全体の前触れとして、第4次産業革命とも呼ばれる現代社会の大きな変化をつかみます。
第2回デジタル社会・総論 ①データエコノミーの光と影
 20世紀は石油が自動車や機械を動かす重要な資源でしたが、21世紀の最大の資源は人間そのものです。わたしたち一人ひとりの行動が知らぬ間に集められて記録され、経済活動を支えている実態を学びます。
第3回デジタル社会・総論 ②データサイエンスはどこまで進歩するか
 データは学問のあり方も大きく変えようとしています。仮説を立て検証し理論を導き出すという流れではなく、データの森から直接、結論を見いだすデータ駆動型科学が登場してきました。AIはどのように囲碁王者に勝ったのか、といった身近な問題を通じて解説します。
第4回デジタル化と世界経済 ①GAFAの実態とビジネスモデル
 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど巨大テック企業はどのように生まれ、社会に浸透し、大きな力を持つようになったのでしょうか。今後、GAFAに匹敵するような新たなビジネスは登場するのかについても考えます。
第5回デジタル化と世界経済 ②デジタルと国家と規制と
 データ流通に関して各国が規制に乗り出しています。個人のプライバシー保護をめぐる政府と企業の争いだけではなく、デジタル技術を巡る各国・地域の主導権争いも絡みます。便利さと個人の権利を両立できるルールはどのようなものかを考えていきます。
第6回デジタル化と世界経済 ③デジタル通貨とフィンテック
 仮想通貨が新たな決済手段として出てきましたが、流出などの事故も起きています。対抗する形で、政府や中央銀行が管理するデジタル通貨も検討されています。「おカネ」はどうなるのか。おもに現預金を扱ってきた銀行の役割がどう変わるかを含めて分析します。
第7回デジタル化と国際政治 ①ゆがむ民意
 SNSなどを通じて、だれもが自由に発言できるようになる一方でフェイク・ニュースがはびこり、世論が両極端に分かれる社会の分断が進行しています。多様性を尊重するはずのデジタル社会のなかで民主主義が危機に直面している現状について解説します。
第8回デジタル化と国際政治 ②デジタル覇権争う米中
 歴史上、超大国は軍事力を競ってきましたが、いま米国と中国が争う新冷戦のゆくえを決めるのはデジタル技術です。しかし米国と中国は対立するだけでなく、経済面で互いに依存してもいます。日本、欧州の選択も含め、今後の国際新秩序を予想します。
第9回デジタル化と産業 ①変わるリーディング産業の条件
 20世紀は繊維や鉄鋼から始まり、第2次大戦後は長く自動車産業が経済の中心でした。21世紀に入って情報産業が大きく伸びていますが、これからの「データの世紀」で世界経済を引っ張っていくのはどんな産業かーーその条件を考えます。
第10回デジタル化と産業 ②デジタル時代の個人消費
 買い物はもっとも日常的な行為ですが、ネット通販などのEコマースが年々拡大し、店頭でも支払いはキャッシュレスとなり、無人店舗も登場しています。そもそも何がほしいのかという買い物の動機も大きく変わっているなかで、個人消費の先行きを分析します。
第11回デジタル化と産業 ③会社とは何かーDXと経営の新潮流
 会社という存在はどのように生まれ発展してきたのかをおさらいしたうえで、会社が利益を出す仕組みを解説します。さらにデジタル社会のなかで企業経営はどう変わっていくのか。SDGs、ESGなどの視点で今後の会社のあり方を見通します。
第12回デジタル化と産業 ④メディアはどこへ行く
 だれもが発信者になれるデジタル社会のなかで新聞・テレビなど既成メディアの存在感は大きく揺らいでいます。真に役に立つ情報を得るために、私たちはどのようなメディアを選んで活用していけばいいのかを学びます。
第13回デジタル化と市民生活 ①AIは仕事を奪うか~働き方の変質
 AIが発達すれば、多くの仕事で人手をシステムに置き換えることが可能になり、職を失う人も出るといわれています。同時にデータサイエンティストやAIプランナーなど新しい仕事も登場しています。AIによって消える仕事、生まれる仕事の条件を考えます。
第14回デジタル化と市民生活 ②値踏みされる個人の価値
 スマホのアプリをダウンロードすることで集められる個人データは一見ささいなことがらのようですが、組み合わせればその人を丸裸にしてしまいます。デジタル化がもたらす新たな格差、監視社会、プライバシーと表現の自由などの問題を取り上げます。
第15回デジタル化と市民生活 ③行政のデジタル化と地域社会
 9月に発足したデジタル庁は、むだが多かった行政の効率化を目指しています。しかしカギとなるマイナンバーカードがなかなか普及しないなどの問題を抱えます。政府の「Society5.0」で掲げたデジタル時代のまちづくりについても紹介します。