共生文明論Ⅱ
担当者藤本 龍児教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSOC-322

授業の概要(ねらい)

 現代の世界は、何によって動いているのでしょうか?
 人や社会は、何かに突き動かされ、あるいは何かを目的にして動き、それによって対立や衝突が生じることにもなります。ある論者は、人や社会を動かすものは「政治的な理念」だ、と言います。またある論者は、「経済的な利害」だ、と言います。事実、第二次世界大戦が終わって、1991年にソ連が崩壊するまでの「冷戦」時代には、世界は二つの陣営に分かれ、イデオロギーや富をめぐって対立していました。
 しかし「冷戦」が終結すると、それらとは別に「文化的な価値」が注目されるようになってきました。言語や歴史、宗教などが現代社会を動かしている、ということが改めてわかってきたのです。例えば、カナダにおけるケベックの分離運動や、ロシアにおけるチェチェンの独立運動、中国におけるチベットの抵抗運動などが挙げられます。そこでは、たとえ経済的に不利益をこうむったり、極端な場合には命を犠牲にしたりしてでも、運動に身を投じる人びとがいます。なぜ「文化」は、そこまで大きな力をもっているのでしょうか?
 「文化」をおおよそ共有している広い範囲のことを「文明」と呼ぶことがあります。ふつう「文明」といえば、政治制度や経済システム、法秩序、産業構造など、いずれの社会にも共通する普遍的な仕組みのことを言います。しかし、それらの仕組みは、それを支える世界観や思想がなければ機能しません。ここでいう「文明」とは、個別の文化を含んだ具体的なものであり、それゆえ多様なものです。そして、現代の世界では、多様な文明のあいだで、対立や軋轢が生じているのです。
 本講義では、こうした意味で現代世界を動かしている「文明」を論じます。とりわけ、現代文明のモデルとされている「アメリカ」を中心にして、多様な文明が共生していくためには何が必要か、ということを考えていきます。

授業の到達目標

 ・「文化」と「文明」を思想史的観点から理解し、その成立の背景を理解する。
 ・「文明」と近代社会の関わりを理解し、「近代文明」の特徴を説明できる。
 ・「現代文明」とアメリカの関わり理解し、その問題を説明できる。

成績評価の方法および基準

 ・原則として8割以上の出席を前提とする。
 ・適宜おこなう感想文の提出を必須とする。
 ・試験で講義内容とテキストにかんする理解度を問う。
 ・以上に授業態度をくわえ、総合的に判断して成績評価をおこなう。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『「ポスト・アメリカニズム」の世紀-転換期のキリスト教文明』 藤本龍児筑摩選書
参考文献『アメリカの公共宗教:多元社会における精神性』 藤本龍児NTT出版
参考文献 *他の参考文献は、講義中に紹介する。

準備学修の内容

 リアクション・ペーパーによって明らかになった各自の課題を、次回までの準備学修の内容とします。
 共有の課題については、授業のなかで適宜説明していきます。

その他履修上の注意事項

 この講義だけで一つのまとまりをもっていますが、共生文明論Ⅰを履修していることが望ましい。
 講義は以下のような内容を計画しています。ただし、受講者の理解や関心に応じて柔軟に改変していきます。

授業内容

授業内容
第1回はじめに
*オンラインを実施する回については、状況をみながら判断し、お知らせします。
第2回「アメリカの世紀」
第3回アメリカニズムとは何か?
第4回18世紀のアメリカニズム
第5回19世紀のアメリカニズム
第6回20世紀のアメリカニズム
第7回グローバル・テロリズム
第8回ポピュリズムとデモクラシー
第9回現代のポピュリズムとトランプ現象
第10回社会思想としてのネオリベラリズム
第11回ハイエクの自由主義
第12回政策としてのネオリベラリズム
第13回ネオリベラリズムの改訂
第14回「ポスト・アメリカニズム」
第15回おわりに