人間学基礎セミナーⅡ
担当者冲永 隆子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [スポーツ医療学科]
科目ナンバリングSEM-205

授業の概要(ねらい)

 人間学とは人間にかかわる学であり、「哲学、言語学、心理学、精神病理学、宗教学、芸術学、教育学、社会学、文化人類学、歴史学、人文地理学など、様々な分野にわたっている」(「序―人間学への案内」作田啓一ほか編『人間学命題集』新曜社、1988)。この授業では「知識以上に体験」として体験者との語りを大切にし、ゲスト講師との教育実践を重視する。すなわち、ゲストによる体験講義を通して、将来設計・進路に役立ててもらうことをねらいとしている。
 いのちをめぐる倫理学(生命倫理・バイオエシックス)の視座から、視聴覚教材(本学で導入している「NHKライブラリー」)を使って、人間にかかわる様々な倫理的、社会的問題について共に考えていく。基盤教育としてのリベラルアーツ教育の実践をめざす。具体的には、①生命倫理・医療報道を題材にした発表演習や「哲学対話」、レポート・感想文・卒業論文の作成、発表(プレゼンテーション)実践に対する基本的な指導も併せて行う。②各分野の専門家ゲスト講師による講義。今期はジャーナリストNHK関係者2名を招へいする。一人は、NHK専門委員による「教養としての防災」2回シリーズ。1回目「災害とどう向き合うか」2回目「HUG避難所運営ゲーム演習」で理論的実践的知識を涵養する。もう一人は「時論公論」NHK解説委員によるコロナ関連もしくは再生医療に関する講義。さらに京都大学の死生・臨床人間学専門家、秋田県大曲の「こころの健康相談室」自殺予防カウンセラー、大阪リカバリハウスいちご薬物・アルコール依存症リカバリー支援者、東京大学のノンフィクション作家等を予定。生と死(自然災害、障害者殺傷事件、安楽死、出生前診断…)、セクシュアリティ(女性差別「ジェンダー論」、コロナ禍の貧困女性、パパ活問題、セクシャルマイノリティLGBT、生殖医療…)、人工知能AI等の他、最近の痛ましい出来事、大阪心療内科放火事件、埼玉立てこもり在宅医殺害事件、ウクライナ侵攻等、時宜に適った幅広い生命倫理の問題・テーマを扱う。例えば2019年の公立福生病院の透析中止、厚生労働省「人生会議」ポスター撤収問題、2020年のALS難病患者京都嘱託殺人事件、感染症時代の現在直面している以下の「コロナ時代の生命倫理」の課題。1. 限られた人工呼吸器を高齢者から若者に譲る「トリアージ」問題(NHKスペシャル)、緊急事態下の「限られた医療資源の配分」、「高度集中医療を若者に譲る意志カード」といった「公衆衛生の倫理」 2. COVID-19末期患者を診続けた医師たちー「死」をどう考える(BBCニュース)、厚労省や日本老年医学会が勧める「人生会議」(ACP)。
 各方面の専門家を交えたZoom立ち上げ対面講義を数回行いYouTube動画を配信する(アーカイブ)。受講者は教室でのリアルな対面授業で哲学対話や臨床倫理アプローチを活用しつつバイオエシックス的思考を涵養するのと同時に、自宅でのZoom収録オンデマンド動画で繰り返し基礎知識を得ることができる。このセミナーでは参加者全員の討論が中心になってくる。意欲ある皆さんの受講を期待している。*日ごとに変化する出来事を扱うため、予定する授業内容やテーマ及びビデオ内容は授業の進捗状況により変更する。
*参考までに過去のゲスト招へい授業YouTubeのURLを示します。カーソルをURLにもっていき右クリックで「コピー」下あたりの「https…移動」で画面に飛びますので是非。https://youtu.be/nwGh62J-3AE(眞子さん結婚報道と皇室) https://youtu.be/hFP8l55r7EA(緩和ケア)、https://youtu.be/wzVkrLQRV1w(知る権利 表現の自由)、https://youtu.be/XI2O6crACNg(当事者のACP 入澤仁美)、他にYahoo!やGoogleの検索エンジンで「冲永隆子 YouTube」と入れると幾つかヒットすると思います。

授業の到達目標

 ①受講者は、人間学や生命倫理学に関連するキーワード(KW)について正しく説明することができること。
 ②グループ討論や発表演習によって、他人の意見と比較し、自分の見解を他に示すことが可能になること。大学卒業後、様々な社会で活躍する皆に役立つための思考訓練の場としての活用が可能になること。

成績評価の方法および基準

 授業内の積極的発言状況やプレゼンテーション(発表)と数行のVTR感想文・課題提出(提出はすべてLMSコンテンツ「課題」やGoogleフォームの「アンケート」)を40%、最終授業終了後にLMSコンテンツ「課題」に提出してもらうレポートを60%。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 なし
参考文献『いまを生きるための倫理学』 盛永・松島・小出編丸善
参考文献『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』梶谷真司幻冬舎
参考文献冲永隆子「学生と共に考える『コロナ時代の生命倫理』—リベラルアーツ教育に向けた実践報告」『帝京大学共通教育センター論集』2021年Vol.12、53-75頁(*教室内で配布します)
冲永隆子『終末期の意思決定ーコロナ禍の人生会議に向けて』晃洋書房、2021年冬出版予定(*LMSコンテンツに配布)
参考文献*教室で参考文献リストを配布します(上記参考文献を含め、こちらでコピー配布しますので、購入の必要はありません)
参考文献『いまを生きるための倫理学』(*冲永共著)
盛永・松島・小出編 丸善
参考文献 『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』 梶谷真司 幻冬舎(新書)
参考文献 『第三版 生命倫理・医事法』(*冲永共著) 塚田・前田編 医療科学社
参考文献 『薬学生のための医療倫理(新版)』(*冲永共著) 松島・宮島編 丸善
参考文献 『終末期の意思決定ーコロナ禍の人生会議に向けて』 冲永隆子 晃洋書房
参考文献 *教室で参考文献リストを配布します(上記参考文献を含め、こちらでコピー配布しますので、「必ずしも」購入の必要はありません。もちろん購入は歓迎します)

準備学修の内容

 ①配布資料コピーの次回授業部分を事前に読んでおくこと。LMSの「連絡事項」指示に従うこと。
 ②対面授業の参加者とリモートでの参加者全員は、ほぼ毎回の授業の感想あるいはコメント数行の簡単な文をLMSの「課題」ツールに送ること。

その他履修上の注意事項

 この授業は、春期(人間学基礎セミナーⅠ)・秋期(人間学基礎セミナーⅡ)の半期のみの受講でも対応できるように考慮しています。「ライフサイエンスⅠ・Ⅱ」とも関連しています。
幅広い生命倫理の問題、生と死(障害者殺傷事件、安楽死、出生前診断…)、セクシュアリティ(女性差別「ジェンダー論」、セクシャルマイノリティLGBT、生殖医療…)等のテーマについて、ジャーナリスト、医師、哲学・倫理学分野の研究者等、各方面の専門家を交えたZoomでの対談式講義を数回行います。オンデマンド授業で繰り返し、基礎知識を得たり、Zoomでのリアルな双方向授業でその都度わからないことを確認したりするメリットがあります。試行錯誤して行う関係で、予定が変更するかもしれませんが、原則、毎回の授業を対面授業の予定日程で行い(Zoomを立ち上げます)、参加できない人向けにZoomでのレコーディング収録アーカイブを準備します。Zoomのレコーディング収録mp4ファイルをYouTubeにアップしますので、参加できなかった人はオンデマンドYouTube動画を観てください。対面に参加できなかった(できない)人は、Zoomでのリアル参加、YouTubeでのオンデマンド参加いずれかで出席となります。加えて一回ごとの課題提出で参加とします。

授業内容

授業内容
第1回 はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。人間学・生命倫理学、「哲学対話」等についての序論。
 *予定するテーマ及びVTR内容や順番は、初回~3回授業の参加者全員で決める。3回目以降のテーマ、視聴覚教材の順序変更あり。
第2回 前回のテーマで対話。「哲学対話」とは何か。
第3回 濱田哲郎(NHK専門委員、元NHK社会部記者)
 テーマ:「メディアは果たして斜陽産業か?」上記シラバス
第4回 「哲学対話」について『考えるとはどういうことか』で解説。選んだテーマで対話。
第5回 『考えるとはどういうことか』で解説。選んだテーマで対話。
第6回 渡邊洋次郎(メンタルヘルス リカバリケアハウスいちご)
 テーマ:アルコール・薬物依存症からの回復支援
第7回 「依存症」について対話。
第8回 TBS「ゆがんだ正義 相模原殺傷事件」 (2018) 対話
 KW:障がい者、優生思想
第9回 前回のつづきTBS「ゆがんだ正義 相模原殺傷事件」 (2018) 対話
第10回 NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」 宮下洋一『安楽死を遂げた日本人』 (小学館2019) 対話
第11回 前回のつづきNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」 対話
第12回 蒔田栄(メンタルヘルスサロン 自殺予防プロジェクト 大曲聖書バプテスト教会牧師)
 テーマ:聖書の世界観からみるいのちの尊さ、重さ
第13回 「自殺」「医師による幇助自殺」「安楽死」どこがどう違うのか?徹底討論。LMSコンテンツに提出した「課題」を元に討論・発表
第14回 河合香織『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋2018) 対話。LMSコンテンツに提出した「課題」を元に討論・発表
第15回 前回のつづき 総まとめ