科目名分類学年卒業認定との関連
生化学2講義2年後期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※山下純(生物化学)

授業の概要

 生化学とは生命現象を化学的に理解しようとする学問領域で、薬学部にとって最重要な基礎科目です。1年生の生命科学1・生命科学2、2年生前期の生化学1で糖質、脂質、タンパク質について学んだのに引き続いて、細胞内で起こるそれらの合成と分解、すなわち代謝について学びます。生命にとって不可欠な代謝とその制御を、特にエネルギーの貯蔵や利用という観点から理解することが目標です。代謝の生化学は糖尿病や脂質代謝異常症を始めとする疾患の理解に欠かせません。くすりのプロとしての責任を果たすため、特に一般の人たちに正しくわかりやすく説明できる能力を獲得することが必須です。

授業の到達目標

①生体エネルギーの産生、貯蔵、利用、およびこれらを担う糖質、脂質、タンパク質の代謝の基本的事項を分子レベルで説明できる。

授業形式

教科書、プリント、板書、パワーポイントを使った講義
LMSシステムなどを用いた理解度確認テストと、そのフィードバックを適宜行う

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1エネルギー代謝の概要、エネルギー通貨ATP、糖質代謝(1)エネルギー代謝の概要、エネルギー通貨としてのATP、解糖系および乳酸の生成、解糖系のアロステリックな調節機構、律速段階などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)①1, C6(5)②1
2糖質代謝(2)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸回路、電子伝達系、酸化的リン酸化、リンゴ酸・アスパラギン酸シャトル、グリセロール3-リン酸シャトル、エネルギー代謝におけるミトコンドリアの役割などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)②2, 3
3糖質代謝(3)グリコーゲン代謝、糖新生、ペントースリン酸回路、インスリン、グルカゴンによる糖代謝(グリコーゲン代謝、糖新生、血糖値)の調節、糖代謝と血糖値の関係などについて概説できる。(知識)山下純
C6(5)②4, 5, C6(5)⑤3
4脂質代謝(1)脂肪酸の生合成、脂肪酸の生合成に必要な補酵素、脂肪酸の生合成と糖代謝(ペントースリン酸経路)の関係、脂肪酸の生合成におけるアセチルCoAの供給経路、ミトコンドリアへのアシルCoAの輸送とβ酸化、β酸化の調節などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)②4, 5, C6(5)③1, C6(5)⑤3
5脂質代謝(2)脂質(トリアシルグリセロール)の消化、吸収、リパーゼと胆汁酸の役割、コレステロールの生合成と代謝、コレステロールの貯蔵型、輸送型としてのコレステロールエステルなどについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)③2
6血漿リポタンパク質の種類、構造、機能リポタンパク質の構造と機能、キロミクロン、VLDL、LDL、HDL、リポタンパク質リパーゼ、脂質異常症との関連、LDLの酸化変性と動脈硬化の関係、スタチンのLDL低下作用の機序などについて説明できる。(知識)山下純
C6(2)①1, C6(3)④2
7アミノ酸代謝(1)アミノ酸代謝(アミノ基転移、脱アミノ反応、脱炭酸反応)、アミノ基転移酵素と必要な補酵素、逸脱酵素と診断への応用、分枝アミノ酸代謝とビタミンB1,かっけの発症機序、酸化的脱アミノ反応に必要な補酵素、アミノ酸の脱炭酸反応に必要な補酵素と生理活性アミンの産生について説明できる。(知識)山下純
C6(5)⑤1
8アミノ酸代謝(2)尿素回路、糖原性アミノ酸、ケト原性アミノ酸、アミノ酸代謝の先天性異常症、、尿素回路の律速段階と調節、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、肝疾患とアミノ酸代謝の関係、などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)⑤1
9リン脂質の生合成と機能、生体膜生体膜の組成・構造・物性・機能、リン脂質の生合成、【脂質ラフト】、リン脂質の分解とエイコサノイドの産生、ホスファチジルイノシトール代謝回転とシグナル伝達、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼとインスリンの作用、ホスファチジルセリンとアポトーシスなどについて説明できる。(知識)山下純
C6(1)①1, C6(3)④1
10糖と脂肪酸の相互転換、余剰エネルギーの貯蔵代謝におけるアセチルCoAの意義、糖質・脂質からのアセチルCoAの生成、クエン酸回路、アセチルCoAからの各種分子の生合成、過剰のアセチルCoAからの脂肪酸合成、グリコーゲンとの比較、について説明できる。(知識)山下純
C6(5)④1, 2
11飢餓時のエネルギー代謝飢餓時の貯蔵脂肪の利用、ケトン体、タンパク質分解利用、長期飢餓における糖新生の役割、糖尿病における糖新生の役割などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)④1, 2
12代謝の全体像、疾患との関わり糖・脂質・アミノ酸代謝の全体像、肥満と糖尿病、高血圧など、生活習慣病との関係などについて説明できる。(知識)山下純
C6(5)①1

成績評価の方法および基準

定期試験100%
マークシートによる客観試験と筆記・論述試験を併用して評価します。
中間試験 0%
小テスト 0%
レポート 0%
その他 0%

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書詳解 生化学板部洋之、荒田洋一郎、編著京都廣川書店 (2020年)
教科書“パザパ”薬学演習シリーズ(13)生化学演習野尻久雄、唐澤健、佐々木洋子、山下純 共著京都廣川書店(2013年)
参考書ホートン生化学 第5版Laurence A. Moran、他著、鈴木紘一, 笠井献一, 宗川吉汪監訳東京化学同人(2013年)
参考書衛生薬学 第3版石井秀美、杉浦隆之編著、山下純、他著朝倉書店(2013年)

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1履修についての【1】単位制についてを参考に予復習が必要になります。
2初回講義開始前に、1年次から2年前期に学んだ関連科目(生命科学 1、生命科学 2、生化学1)の、糖質、脂質、アミノ酸、タンパク質に関連する部分を復習し、内容をよく理解しておいて下さい。(3時間程度)
3各回の講義前に予習用の資料を配信します。資料および指定された教科書のページを読んでから講義に臨むようにしましょう。(毎回0.5 ~ 1時間程度)
4講義後に復習用の資料を配信します。次の講義の前までに、教科書・資料を読み、復習問題を解き、講義ノートをまとめて、講義内容を理解しておくようにしましょう。(毎回3時間程度)
5生化学2の内容は病気と密接に関連しているので、日頃から関連する新聞記事に関心を持ち、関連するテレビの報道番組等も積極的に視聴するようにして下さい。

その他の注意事項

1なぜ薬が効くのか、なぜ副作用が出現するのか、効き目があり副作用がない薬を創る原理は何かなど、薬学にとっての最重要課題のほとんどが、生化学を土台にしなければ理解できません。薬学生にとっては絶対におろそかにできない科目です。講義は毎回その日のうちに完全に理解できる段階まで復習すること。
2名前だけの丸暗記は意味がありません。基本的な糖質、アミノ酸、脂肪酸、リン脂質、トリアシルグリセロール、コレステロールなど、名前を聞いたら、直ちに頭の中に構造式が浮かぶようトレーニングしておくこと。有機化学の基礎を片時も忘れないこと。これらが薬学部出身のプロとして評価されるための不可欠な資質です。
3試験やレポート等に対し、解説等のフィードバックを行います。
4この科目と学位授与方針(ディプロマポリシー)との関連をカリキュラム・マップを参照し、理解すること。

主な関連科目

講義1年生命科学1、生命科学2、薬科生物学、基礎生物学
2年生化学1、栄養化学、薬理学1(総論・末梢神経)、薬理学2(解熱抗炎症・免疫・血液凝固・神経)、薬理学3(感染症・悪性腫瘍)、病態・薬理学1(精神・神経・筋)、病態・薬理学2(内分泌・生殖器)
3年分子生物学、衛生化学、病態・薬理学3(呼吸器・消化器)、病態・薬理学4(代謝・血液・骨)、病態・薬理学5(腎・循環器・高血圧)、病態・薬理学6(免疫・アレルギー、感覚器)、薬物治療学1(総論・臓器別治療1)
4年基礎薬学特論3(生物系薬学)、薬物治療学2(臓器別治療2)、薬物治療学3(悪性腫瘍)、薬物治療学4(感染症・統合演習1)
5年薬学最前線
演習1年
2年
3年
4年薬学演習
5年
実習1年
2年薬学実習4(物理化学、生化学、薬剤学)
3年
4年
5年卒論実習

メモ