科目名分類学年卒業認定との関連
有機化学1講義1年後期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※忍足鉄太(創薬化学)

授業の概要

 前期の基礎化学に引き続き、分子の三次元的な構造について理解を深めます。また、有機化合物の構造が化学的な性質にどんな影響を及ぼすかを学びます。さらに有機化合物どうしがどのようにして反応するのかを考えます。分子内での電子の密度の高低を判断する方法、電子の動きを矢印で表す方法とその意味を正確に理解できれば、2年次以降、有機化学を学ぶ際に覚えなければならない事項の量を大幅に減らせます。逆に、これを理解できないと2年次以降、膨大な量を丸暗記しないと単位が取れなくなります。今後、有機化学を楽しみながら理解できるようになるか、4年前期まで毎学期苦戦するようになるかの分岐点だと思って頑張って下さい。
授業時にLMSを利用した小テストを実施するので送受信可能な端末が必要となります。

授業の到達目標

①医薬品と生体分子の相互作用を理解するために、有機化合物の立体配置やキラリティーについて説明できる。
②医薬品の溶解性や安定性を理解するために、酸性・塩基性の強弱と化合物の構造の関連性について説明できる。
③化学反応の本質を理解するために、典型的な反応について電子の移動の仕方とエネルギーの変化を説明できる。

授業形式

教科書及びプリントを併用して講義を行います。出席状況と講義内容の理解度を把握するために原則として毎回、講義時間内または終了時にWeb(帝京LMSを利用)による小テストを実施するため、(タブレットやスマートフォンなどの)送受信が可能な端末を持参するようにしてください。また、演習的な内容も加味した補講を行う予定です(1回分程度)。

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1立体配座と立体配置構造異性体と立体異性体、立体配座と立体配置について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)②1
2立体配置とキラリティー鏡像異性体とキラリティー、エナンチオマー、ラセミ体について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)②2~4
3旋光度と光学純度旋光度、光学純度、エナンチオマー過剰率について概説できる(知識)忍足鉄太
C1(1)③4, C2(4)①5
4絶対配置とR/S表示法絶対配置、R/S表示法、ジアステレオマー、メソ体、Newman投影式とFischer投影式について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)②3~5
5ジアステレオマー、メソ体、Fischer投影式アステレオマー、メソ体、Newman投影式とFischer投影式について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)②3~5,7
6酸および塩基の定義ブレンステッド-ローリーの定義、酸塩基の平衡反応、酸解離定数と pKaについて概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①5,7
7有機化合物の構造と酸性度酸性度を決める要因、有機化合物の構造と酸性度、誘起効果の影響、共鳴効果の影響について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①4, C3(2)③3
8アミンの構造と塩基性度、ルイス酸とルイス塩基アミンの塩基性、アミンの塩基性度を決める要因、ルイス酸とルイス塩基について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①4,5, C3(2)③3
9有機化学反応と電子の動き「反応する」とはどういうことか、結合の切断とその様式、電子の動きを表す矢印、結合の形成とその様式について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①7,9
10化学反応とエネルギー、有機化学反応(その1)発熱反応と吸熱反応、活性化エネルギー、遷移状態、触媒の働き、置換反応について概説できる(知識)
付加反応、脱離反応について概説できる(知識)
忍足鉄太
C3(1)①7~9
C3(2)②1,3
11有機化学反応(その2)、共鳴構造式の書き方転位反応、ペリ環状反応、共鳴構造式の書き方について概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①4,8,9,
12反応を電子の動きで考える共鳴における寄与構造式の書き方、化学反応式における電子の流れと矢印の向きについて概説できる(知識)忍足鉄太
C3(1)①1,2,9 C3(2)②1

成績評価の方法および基準

定期試験原則として100%:マークシートによる客観試験と筆記試験を併用して評価します。
中間試験実施しません。講義の中程で確認テストを行いますが、これは皆さんに自分の現時点での理解度を認識してもらい、その後の学修に役立てていただくためのものであり、成績評価の対象には含みません。ただし、結果は真摯に受けとめ、自分の学習姿勢を考える材料としてください。また、履修要項に記載の通り、確認テストを未受験の場合、原則として再試験の受験資格を失うことになるので必ず受験するようにしてください。
小テスト各回の講義終了時に出席状況とその日の講義内容の理解度を確認するためにWebまたはマークシートによる小テスト(ポストテスト、正誤問題や多肢選択問題、10問程度)を実施します。この結果は原則として成績評価には用いませんが、未回答もしくは未提出の場合や(例えば、白紙で提出するなど)明らかに真剣に対応していないと考えられる場合には(カードタッチを行っていても)その回の講義に欠席したものと判断することがあります。別途、何回かの講義が終わった段階で小テスト形式の課題を実施する予定ですが、それらも成績評価の対象には含みません。ただし、ポストテストの提出状況が良好な(具体的には、初回の回答時に正答率が60%以上のものを10回以上提出している)者に対して、定期試験の成績が合格点を5点を越えない範囲で下回る場合に限り、5点を超えない範囲で加点をする可能性があります。
レポート0%
その他履修要項に記載の基準に従い、定期試験の受験を認めない場合があります。
毎回、講義の終わりに実施するポストテストの結果を出欠確認や受講態度の判断材料として利用することがあります。
前半の立体化学に関する講義では分子模型も使用します。(すでに持っている方が無理に新規購入する必要はありません。)

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書ベーシック薬学教科書シリーズ 有機化学夏苅英昭、高橋秀依 編著化学同人
教科書構造式手帳伊藤 喬編著京都廣川書店
教科書分子模型(HGS分子構造模型、C型セット、有機化学実習用)丸善出版株式会社
参考書有機化学1000本ノック【立体化学編】矢野智文著化学同人
参考書知っておきたい有機反応100日本薬学会 編東京化学同人
参考書はじめて学ぶ有機化学高橋、須貝、夏苅著化学同人
参考書わかりやすい化合物命名法山本郁男、細井信造、夏苅英昭、
高橋秀依 著
廣川書店
その他資料(教科書の内容を補足するためのもの)を随時配信し、印刷したものも配布します。このプリントは教科書の内容を補足するためのものです。毎回の講義には必ず教科書を持参するようにして下さい。構造式手帳は、この科目以外でも有機化学や生化学、生命科学の講義等で参考書として活用して下さい。

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1初回の講義までに、前期の基礎化学の内容のほかに、高校の化学の教科書に記載されている、物質の構成、原子の構造、元素の周期律、化学結合、有機化合物の構造と特徴、脂肪族炭化水素の各項目についても充分に復習しておいて下さい。特に、酸と塩基の定義については、しっかり復習しておくことが望ましいでしょう。
2講義開始後、当面は前回の講義内容を1〜2時間程度復習して、疑問点を解消してから次の講義に臨むだけでも充分かと思います。有機化学が苦手な人に対しては、初回に配布する資料に各回の講義についての教科書の当該ページを示しておきますので、講義の前に通読しておき(教科書の当該範囲の通読だけなら30分から1時間以内で対応可能)、あらかじめよく分からない点を把握したうえで受講して、なるべく講義時間中に疑問点を解消することを強く推奨します。教科書を通読しても理解できなかった内容について、特に注意を傾けて受講することにより効果的な学習が可能になります。(ちなみに、初回の講義では教科書の65〜69頁の内容について、お話しします。)
3前期の基礎化学で苦戦した人は、後半の講義で学んだアルカンの立体化学を十分に復習してからこの講義に臨んで下さい。その際、分子模型を活用すると理解が格段に深まります。また、この講義の前半でも分子模型を駆使することによって立体をイメージしやすくなると思います。
4この講義は1.5単位ですので、予習・復習等の準備学習に必要な最低限の時間数は43.5時間であり、1回の講義あたり3.625時間となります。各回の講義後に配信する資料中に、その回の講義の復習や次回の講義に向けて準備すべき事項について言及するので確認するようにして下さい。

その他の注意事項

1医療現場で他職種の方、特に医師や看護士に対して適切な薬物治療について根拠を示して説明するためには、マテリアルとしての薬の本質を把握していなければなりません。「くすり」の名前をカタカナで丸暗記するのではなく、医薬品の「化合物としての構造」を理解し、体内動態を含めた物理的及び化学的性質を類推できるようになることが大切です。薬の大半が有機化合物であることは厳然たる事実であり、有機化学は薬学部で学ぶすべての科目の根幹です。構造式の読み解き方をしっかりと学びましょう。暗記に頼らず、必要最小限の基本的な考え方を身につけることができれば2年次以降に覚えないといけないことがらの量は激減するはずです。
2講義資料は事前に配信しておくので意欲のある諸君が予習をすることは可能です。また復習として、講義内容をきちんと理解することが重要であり、理解を伴わない暗記のみでは本科目の単位の取得は困難です。不明な点は次回の講義に繰り越さず、毎回、その週のうちに解決するように心掛けて下さい。疑問点があれば、定期試験や追試験の直前にではなく、随時、遠慮なく質問しに来て下さい。また、試験はすべての配信資料に目を通していることを前提に実施しますので、確認漏れの無いように十分に注意して下さい。
3例年、後期になると要領よく単位を取得しようと考える学生の割合が増えるようです。そこで伺いたいのですが、皆さんがこの科目を履修する目的は何なのでしょうか? 単位を取得しさえすればそれでよいのか、それとも、将来、薬のプロフェッショナルとして活躍するために必要な知識や技能を身につけることが目的なのか、よく考えましょう。単位の取得は飽くまで理解の積み重ねに対するマイレージのようなもので、それ自体を目的とするようでは本末が転倒しています。入学当初の志を忘れずに毎回の講義に臨んで下さい。
4試験や小テスト等に対して、解説資料の配布(またはLMS上での配信)、或いは講義時間中や演習時間中の解説などによりフィードバックを行います。また、試験はすべての配信資料に目を通していることを前提に実施しますので、確認漏れの無いように十分に注意して下さい。
5この科目と学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)との関連をカリキュラム・マップを参照し、理解すること。

主な関連科目

講義1年基礎化学、生命科学1
2年有機化学2、有機化学3
3年有機化学4、医薬品化学1、生薬学・天然物化学
4年医薬品化学2、基礎薬学特論2(化学系薬学)
5年
演習1年
2年
3年
4年薬学演習
5年
実習1年薬学実習1(薬学実習入門)
2年薬学実習3(有機化学・分析化学)
3年
4年
5年

メモ