科目名分類学年卒業認定との関連
エコサイエンス講義2年後期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※山本秀樹(環境衛生学), 長田洋一(薬学教育研究センター)

授業の概要

 人類が健康で幸福な生活を送れるには、適切な環境が維持される必要がある。産業革命以降は人間の生活・生産活動が環境を大きく変化させ、自らの生存の危機に陥る危険性(地球温暖化、コロナウイルス感染症に代表される新興感染症など)が懸念されている。本講義では、持続可能な開発(Sustainable Development)の視点から、ヒトと環境因子の密接な関係を、生物を含む環境(生態系)における物質循環の観点から学習して、薬剤師に求められる「公衆衛生」および「環境」に関する基本な考え方をSDGs(国連の持続可能な開発目標)の視点を交えて学ぶ。

授業の到達目標

健康や衛生あるいは環境の安全性を考える能力を身につけるために、地球環境や身の回りの問題点を科学的根拠に基づいて理解する習慣を修得する。

授業形式

教科書とLMSで配信した教材を用いた講義を行う。別途、各回の講義で課題をLMSを用いて課すので、必ず提出すること。

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1地球環境の成立と生命環境と健康、公衆衛生について概説する。地球環境の変遷と生物による地球環境の創成(特に生物による酸素産生の重要性)、生物の進化の概要を概説できる(知識)山本秀樹
コアカリ外
2現在の地球環境の構成と地球レベルの元素循環生物を取り巻く環境(水圏・気圏・岩圏)の特質。環境中の元素循環(炭素・窒素・リン)とそれらに対する人間活動の介入によって生じる問題点を概説できる(知識)山本秀樹
D2(2)①1,2
3生態系と生物を介する物質循環−1生態系とその構成員それぞれの役割、および生態系における栄養物質の流れとしての食物連鎖に関して概説できる(知識)長田洋一
D2(2)①1,3
4生態系と生物を介する物質循環−2食物連鎖に伴って起こる化学物質の生物濃縮、生物学的変換、生分解の意義と、生物を介する物質循環の特質を概説できる(知識)長田洋一
D2(2)①3
5環境汚染とその対策−1(水圏の汚染)水圏の汚染(水質汚濁)の歴史と対策(洗剤と富栄養化など)。人の健康を守るための浄水法と、環境保全のための下水処理の概要とその重要性を概説できる(知識)山本秀樹
D2(2)②1,D2(2)③6
6環境汚染とその対策−2(気圏の汚染)気圏の汚染(大気汚染)の歴史と対策(ロンドン型スモッグ、ロサンゼルス型スモッグ、粒子状物質など)。大気汚染に影響する気象要因(逆転層)とその成因を概説できる(知識)山本秀樹
D2(2)②1,D2(2)④3
7環境汚染とその対策−3(化学物質の健康影響)化学物質による汚染とその影響や問題点、および有機塩素化合物(PCBやダイオキシン類)、内分泌撹乱物質、医薬品による環境汚染、家庭内化学物質などを概説できる(知識)山本秀樹
D1(3)③3,D2(1)①3,C7(1)⑫1
8廃棄物とその対策−1廃棄物処理法に基づいた廃棄物の分類(産業廃棄物、一般廃棄物、特別管理廃棄物など)と廃棄物処理の問題点に関して概説できる(知識)D2(2)⑥1,2,3
9廃棄物とその対策−2医療廃棄物の種類とその分類。産業廃棄物処理におけるマニフェスト制度や、循環型社会形成推進基本法などを概説できる(知識)D2(2)⑥1,F(2)⑥13
10地球規模の環境破壊−1地球に降り注ぐ非電離放射線の種類と影響。オゾン層破壊の発端、原因、影響、対策について概説できる(知識)山本秀樹
D2(1)④4,D2(2)①1,4
11地球規模の環境破壊−2地球環境問題の中で、地球温暖化や酸性雨の原因、影響、対策について概説できる(知識)山本秀樹
D2(2)①1,4
12環境基本法とその理念および環境問題に関する討議わが国の環境法の中で最上位にある環境基本法の理念、および環境基準を概説できる(知識) 
現在問題となっている環境問題に関して討議する(態度)
山本秀樹
D2(2)①4,5,D2(2)②2

成績評価の方法および基準

定期試験90%。
マークシートによる客観試験と筆記・論述試験を併用して評価する。
中間試験0%
中間試験は行わない。
小テスト0%
各回の講義の後に、課題(講義内容に関する問題)をLMSで配信するが、受講生各自の自己学習の機会とする。各回の課題の正答率は最終成績の評価対象とはしない。12回の講義のうち提出回数が8回を下回った場合、減点を行うことがある。
レポート10%
各回の講義の後に、課題(講義内容に関する問題)をLMSで配信するが、2回ほどレポートを課す予定である。
その他コロナウイルスのパンデミックの収束の目処が立っていない状況であり、対面の講義でなくオンラインの講義に変更する場合があるので、その場合は別途指示する。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書衛生化学詳解(下)第3版 <主として第6章 環境衛生学>大塚文徳 他7名 著京都廣川書店
参考書環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書環境省環境省
(令和3年度、6月発行予定)
参考書“パザパ”薬学演習シリーズ11 衛生薬学演習 第3版共著:緒方文彦、川崎直人、渡辺徹志京都廣川書店
参考書イラスト 社会・環境と健康 新刊
-公衆衛生学-
岸本満、須崎尚、
武山英麿、榎原毅 、細田晃文 、角田香澄、伊藤勇貴 著
東京教学社
参考書沈黙の春 (新潮文庫) レイチェルカーソン (著), Rachel Carson (原著), 青樹簗一 (翻訳)新潮社
参考書四大公害病政野淳子中公新書
参考書いのちの旅「水俣学」への奇跡原田正純東京新聞出版局
その他教科書を中心に講義を進める。必要に応じて講義内容に関する資料をLMSに配信する。印刷物は配布しないので、必要に応じて各自印刷して持参すること。場合によって講義中に演習を行うことがあるので、原則としてノートパソコンまたはタブレット(iPad等)を持参すること。

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1本講義では、薬剤師という専門職に求められる、環境・公衆衛生の基礎となる考え方を学ぶことを目標としている。また、新聞等で報道される社会問題にも関心を持って下さい。国連持続可能な開発(SDGs)を念頭において、広く学ぶ姿勢を大切にするように。
2講義前に、教科書(衛生化学詳解)の指定された部分を読んで、講義の内容をあらかじめ頭に入れ、疑問点を明確にして講義に臨むように努めること。講義後に毎回の講義でLMSに配信する課題(小テスト・レポート)に答えること。
3この講義は1.5単位ですので、予習・復習等の準備学習に必要な最低限の時間数は43.5時間であり、1回の講義あたり3.625時間となります。

その他の注意事項

1本講義は、環境と健康、衛生・公衆衛生のイントロダクションの位置づけを有する。現在問題となっている多くの環境問題を扱うが、根本的に理解するためには科学的な知識はもちろんのこと、社会・文化・歴史的な経緯の理解が不可欠である。諸問題を多角的に分析し、よりよい未来を創り出すにはどうすれば良いのか、総合的に学習すること(SDGsの視点など)が必要である。教科書以外の書物もしっかり読むように心がけること。
2本講義の内容は3年前期に開講される「環境衛生学」に密接につながっている。予習・復習の際には教科書に加えて講義資料をよく読むことが必要である。
3毎回の講義時にLMSにアップする課題(復習)に対して、解説等のフィードバックを行う。
4講義中に出された復習問題に取り組むことはもちろん、CBT形式の問題や国試の過去問で講義に該当する問題演習を行う。解答の正否(○・×)だけでなく、練習問題を通じて、課題に関する理解を深めるように努めること。
5この科目と学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)との関連をカリキュラム・マップを参照し、理解すること。

主な関連科目

講義1年
2年栄養化学
3年環境衛生学、衛生化学、毒性学
4年保健衛生学、衛生薬学特論(健康と環境)
5年
演習1年
2年
3年
4年
5年
実習1年
2年
3年薬学実習6(衛生薬学)
4年
5年

メモ