科目名分類学年卒業認定との関連
生化学1講義2年前期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※佐々木洋子(生物化学)

授業の概要

 生化学は生命現象を化学的に理解しようとする学問領域で、薬学部にとって最重要な基礎科目です。1年生の生命科学1・生命科学2で学んだ基礎を土台として、多彩かつ重要な役割を担っているアミノ酸とタンパク質についてさらに詳しく学びます。タンパク質の中でも特に受容体、膜輸送体、酵素は薬物の作用点として重要です。講義では、病態・薬理学などとの関連に触れながら生化学を学びます。薬のプロとしての責任を果たすため、他の医療従事者や一般の人たちに正しくわかりやすく説明できる能力を獲得することを目指します。

授業の到達目標

①生命現象を担うアミノ酸やタンパク質の構造、性質、機能に関する基本的事項を分子レベルで説明できる。
②アミノ酸やタンパク質の機能と薬の作用や病態との関連を概説できる。

授業形式

教科書、講義テキスト、パワーポイントなどを使った講義。
LMSシステムなどを用いた理解度確認テストと、そのフィードバックを適宜行う。

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1アミノ酸・ペプチドの機能アミノ酸の機能、ペプチドホルモン、ペプチド医薬品について例を挙げて説明できる。アミノ酸の両性物質としての性質を説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(2)③1
2タンパク質の構造 【超二次構造(モチーフ)】、三次構造を安定化する因子、立体構造の自発的形成、四次構造、【変性と巻き戻し】、【シャペロン】、【タンパク質の構造異常と疾患】、について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(2)④1
3輸送タンパク質・構造タンパク質・モータータンパク質輸送タンパク質(ヘモグロビン、トランスフェリンなど)、構造タンパク質(細胞骨格、コラーゲンなど)、モータータンパク質(ミオシン・キネシン・ダイニン)について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)①1, C6(3)④1
4受容体、膜輸送体受容体とシグナル分子、トランスポーター、チャネル、ポンプについて例を挙げて説明できる(知識)佐々木洋子
C6(3)④1
5タンパク質研究法SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、ウエスタンブロッティング、イオン交換、ゲル濾過クロマトグラフィー、アミノ酸配列決定法、【アフィニティークロマトグラフィー】、【プロテオーム解析】について説明できる(知識)佐々木洋子
C6(3)①1, C2(5)①1, C2(5)②1
6酵素:概論生体触媒、触媒反応のエネルギー論、酵素の分類法、基質特異性、最適pH、最適温度、(基質特異性の例、最適pHや最適温度が異なる酵素の例と応用(PCRなど))について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)③1, 3
7酵素:反応機構と反応速度論活性部位、酵素 - 基質複合体、遷移状態、について概説できる(知識)ミカエリス-メンテン式、ラインウィーバー-バーク式、ミカエリス定数、最大速度、酵素阻害、アイソザイム、酵素阻害剤の医薬品としての利用について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)③1, 3, 4
8酵素の活性調節機構1アロステリック 酵素の活性調節、リン酸化による活性調節、【リン酸化の調節破綻による発がん誘導、リン酸化酵素阻害剤の抗がん剤への応用】について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)③1, 3
9酵素の活性調節機構2:翻訳後修飾による調節(リン酸化以外)脂肪酸修飾、ファルネシル化、糖鎖修飾、アセチル化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシ化、プロリン残基の水酸化など、 ワルファリンの血液凝固阻害の機序、壊血症の発症機序などを説明できる。(知識) 佐々木洋子
C6(3)②1、C6(3)③1, 3
10酵素:補因子補酵素の構造と役割、補酵素とビタミンの関係、金属イオン要求酵素、について概説できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)③2, 3
11タンパク質の細胞内輸送タンパク質の翻訳後の成熟過程(細胞小器官間の輸送)、分泌タンパク質の輸送(インスリンの合成と分泌)などについて説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)②1
12タンパク質の分解タンパク質の分解、プロテアーゼ、消化酵素の限定分解による活性化、血液凝固カスケード、エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ、【プロテアソーム】、【オートファジー】について説明できる。(知識)佐々木洋子
C6(3)②2

成績評価の方法および基準

定期試験100%
マークシートによる客観試験と筆記・論述試験を併用して評価します。
中間試験0%
小テスト0%
レポート0%
その他0%

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書詳解 生化学板部洋之、荒田洋一郎 編著京都廣川書店 (2020年)
教科書カラー図解 見てわかる生化学 第2版コールマン、レーン著、川村越監訳メディカルサイエンス・
インターナショナル (2015年)
教科書“パザパ”薬学演習シリーズ(13)生化学演習野尻久雄、唐澤健、
佐々木洋子、
山下純 共著
京都廣川書店(2013年)
参考書ホートン生化学 第5版Laurence A. Moran、他著、鈴木紘一, 笠井献一, 宗川吉汪監訳東京化学同人(2013年)
参考書衛生薬学 第3版
石井秀美、杉浦隆之編著、
山下純、他著
朝倉書店(2013年)

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1履修についての【1】単位制についてを参考に予復習が必要になります。
2初回講義開始前に、1年次に学んだ関連科目(生命科学 1、生命科学 2)の、タンパク質、アミノ酸、輸送体、受容体に関連する部分を復習し、内容をよく理解しておいて下さい。20種類のタンパク原性アミノ酸の構造式を書けるようにしておくこと。(3時間程度)
3各回の講義前に予習用の資料を配信します。資料および指定された教科書のページを読んでから講義に臨むようにしましょう。(毎回0.5 ~ 1時間程度)
4講義後に復習用の資料を配信します。次の講義の前までに、教科書・資料を読み、復習問題を解き、講義ノートをまとめて、講義内容を理解しておくようにしましょう。(毎回3時間程度)
5「タンパク質」はあらゆる生命現象と密接に関連しています。日頃から関連する新聞記事に関心を持ち、関連するテレビの報道番組等も積極的に視聴するようにして下さい。

その他の注意事項

1なぜ薬が効くのか、なぜ副作用が出現するのか、効き目があり副作用がない薬を創る原理は何かなど、薬学にとっての最重要課題のほとんどが、生化学を土台にしなければ理解できません。薬学生にとっては絶対におろそかにできない科目です。講義内容については毎回その日のうちに完全に理解できる段階まで復習すること。
2名前だけの丸暗記は意味がありません。アミノ酸は名前を聞いたら直ちに頭の中に構造式が浮かぶようトレーニングしておくこと。それらに含まれるさまざまな基の特性や立体化学について、有機化学で学んだことを生化学と結びつけながら考えるようにしましょう。これらが薬学部出身のプロとして評価されるための不可欠な資質です。
3試験やレポート等に対し、解説等のフィードバックを行います。
4この科目と学位授与方針(ディプロマポリシー)との関連をカリキュラム・マップを参照し、理解すること。

主な関連科目

講義1年生命科学1、生命科学2、薬科生物学、基礎生物学
2年生化学2、栄養化学、薬理学1(総論・末梢神経)、薬理学2(情報伝達・神経)、薬理学3(感染症・悪性腫瘍)、病態・薬理学1(精神・神経・筋)、病態・薬理学2(内分泌・生殖器)
3年分子生物学、衛生化学、病態・薬理学3(呼吸器・消化器)、病態・薬理学4(代謝・血液・骨)、病態・薬理学5(腎・循環器・高血圧)、病態・薬理学6(免疫・アレルギー・皮膚・感覚器)、薬物治療学1(総論・臓器別治療1)
4年基礎薬学特論3(生物系薬学)、薬物治療学2(臓器別治療2)、薬物治療学3(悪性腫瘍・複数疾患合併症・臨床検査)、薬物治療学4(感染症・統合演習1)
5年薬学最前線
演習1年
2年
3年
4年薬学演習
5年
実習1年
2年薬学実習4(物理化学、生化学、薬剤学)
3年
4年
5年卒論実習

メモ