科目名分類学年卒業認定との関連
生薬学・天然物化学講義3年後期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※山岡法子(臨床分析学), 田畑英嗣(創薬化学)

授業の概要

 自然が生み出す薬物資源とその利用法として、「生薬学」および「天然物化学」について学びます。
生薬学では、天然物由来の薬物を扱います。薬の歴史として重要な事柄や、漢方薬や民間薬、健康食品に使用される『日本薬局方』収載の生薬について、ヒトにとって有用な多くの生薬にはどのようなものがあるか、科、部位、成分や用途等、分類ごとに学びます。また、帝京大学薬用植物園において、植物の形態等の特徴を実際の薬用植物に触れて体験し学びます。
天然物化学では、医薬品として利用される天然有機化合物の多くが、生物の生産する二次代謝物であることをもとに考え、これらは多様な化学構造を持っていますが、特徴的な構造ごとに分類してそれぞれの生合成経路を理解することにより系統的に把握することが可能です。本講義では個々の生合成経路について有機化学的な観点から学ぶとともに、主要な化合物の基原植物や薬理作用についても確認します。本科目は、実務経験(薬剤師)のある教員が担当する授業が含まれます。

授業の到達目標

生薬学では、古くから薬の原料として用いられてきた薬用植物や、現在漢方薬などに多く使われる生薬について、
①基原、性状、含有成分、用途に関する知識を有する。
②日本薬局方で規定される品質評価について知り、試験法と該当生薬を説明できる。
③天然物由来薬物の特徴や性質を理解し、適切な取扱い方法を概説できる。
天然物化学では、代表的な天然物化合物を系統立てて理解するために、
①構造式を見て名称や基原植物(及び、その科名や薬用部位)、主要な薬理作用を想起出来る。
②主要な生合成経路について、単に想起できるようになるだけでなく有機化学的な背景を理解できる知識を有する。

授業形式

プリント(配信資料)を使った講義と薬用植物園における体験学習を行います。講義では毎回、出席状況と講義内容の理解度の把握のみを目的とする小テストを実施します。講義中盤で、理解度を確認するための確認テスト(中間テスト)を実施します。

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1生薬学1:生薬学総論、日本薬局方における生薬の定義
日本薬局方の生薬総則および生薬試験法について説明できる(知識)
山岡法子
C5(1)④2
2生薬学2:薬用植物
薬用植物の学名、薬用部位、薬効などを挙げることができる(知識)、植物の内部形態について説明できる(知識)山岡法子
C5(1)①1,3
3生薬学3:日本薬局方収載生薬1
日本薬局方収載の植物由来の代表的な生薬を挙げ、基原、学用部位、薬効、成分、用途などを説明できる(知識)、生薬の同定と品質評価法、確認試験、純度試験について説明できる(知識)山岡法子
C5(1)②1
C5(1)③1
C5(1)④1,4,5
4生薬学4:日本薬局方収載生薬2
日本薬局方収載の動物、鉱物、藻類、菌類由来の代表的な生薬を挙げ、基原、学用部位、薬効、成分、用途などを説明できる(知識)山岡法子
C5(1)②1
C5(1)③1
5天然物化学1:天然物化学総論医薬資源となる二次代謝産物について生合成経路ごとに概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)④1,2
6天然物化学2:シキミ酸経路で生合成される化合物フェニルプロパノイド、クマリン、リグナンについて概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,3
C5(2)④1,3
7天然物化学3:酢酸・マロン酸経路で生合成される化合物、微生物の産生する天然化合物ポリケチド生合成と脂肪酸生合成、アントラキノン・アントロン、クロモンについて概説できる(知識)、抗生物質について概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,2
C5(2)②1,2
8天然物化学4:複合経路で生合成される化合物フラボン・スチルべノイド、タンニンについて概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,3
9天然物化学5:イソプレノイド経路で生合成される化合物1モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンについて概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,4
C5(2)④3
10天然物化学6:イソプレノイド経路で生合成される化合物2トリテルペン、ステロイド、カロテノイドについて概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,4
11天然物化学7:アミノ酸経路で生合成される化合物1アルカロイド(偽アルカロイドと真正アルカロイド)、オルニチン・リジン由来のアルカロイド、チロシン由来のアルカロイド(1)について概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,5
 
12天然物化学8:アミノ酸経路で生合成される化合物2、特異活性天然有機化合物チロシン由来のアルカロイド(2)、トリプトファン由来のアルカロイド、官能成分など特異活性化合物について概説できる(知識)田畑英嗣
C5(2)①1,5
C5(2)④1,2
13薬用植物園1薬用植物の外部形態について説明し、区別できる(知識、技能)、代表的な生薬を鑑別できる(技能)山岡法子
C5(1)①1
C5(1)④3
14薬用植物園2
代表的な薬用植物と形態が似ている植物を区別できる(技能)、法規制される植物(ケシ、アサ)、副作用や使用上の注意が必要な生薬について説明できる(知識)山岡法子
C5(1)①2,4
C5(1)③2

成績評価の方法および基準

定期試験100% マークシートによる客観試験と筆記による論述試験を併用して評価します。
中間試験0%:前年度までの定期試験問題の中から、講義の済んだ範囲に該当するものを選んで再構成したものを(iPadを用いて)実施しますが、結果を直接成績に反映することはありません。ただし、結果は真摯に受けとめ、自分の学習姿勢を考える材料として下さい。
小テスト0%:過半数(10回程度)の講義終了時にiPad上で、出席状況と講義内容の理解度を確認するための小テスト(ポストテスト)を実施します。この結果は成績評価には用いませんが、講義中に行う小テストを理由なく行わないものは欠席とします。
レポート0% 薬用植物園における講義ではレポート(観察記録)の提出を必須とします。提出のない場合は欠席とします。
その他受講態度が著しく不良な者には、定期試験の受験を認めないことがあります。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書なし
参考書最新 生薬学 第2版奥田拓男 編集廣川書店
参考書最新 天然物化学 第2版奥田拓男 編集廣川書店
参考書知っておきたい生薬100 含む漢方処方(第3版)日本薬学会編東京化学同人
参考書ベーシック薬学教科書シリーズ5 有機化学夏苅、高橋 編著化学同人
参考書生物有機化学貫名、星野、木村、夏目 著三共出版
その他プリント(冊子として配布予定)、生薬標本および写真等、(教科書については未定)、第18改正日本薬局方(ダウンロード可)

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1事前に「第18改正 日本薬局方」の生薬総則を読んでから講義を受けてください。また「薬学実習3」の”生薬・天然物化学”の実習書には日本薬局方についての説明があります。事前に読んでから講義を受けてください。(30分)生薬は天然由来の薬であり、その取り扱いは日本薬局方で規定されています。講義後にはプリントに沿って基原植物の科別のまとめを各自でおこなってください。(90分)
なお、第18改正 日本薬局方は、2021年4月、厚生労働省のホームページにてアップされます。
2天然物化学では、重要な成分の構造式や薬効だけでなく、それがどのような基原種に含まれるかも重要です。また、複雑な構造の化合物も基本となる骨格(複素環など)に着目することにより、有機化学と関連づけて理解することが可能です。各回の事後には、これまでに学習したことを整理して各回講義の復習をおこなってください。(90分)
3各回の事前には、資料の該当するページを読み、また前回講義のポストテストの見直しを行ってください。(30分)
4履修についての【1】単位制についてを参考に予復習が必要になります。

その他の注意事項

1生薬学では、およそ100種類程度の生薬について、基原、科名、薬用部位、主要成分、薬効などを学びます。配信資料を活用して、理解、知識の習得をしてください。生薬は動物性や鉱物性のものなどもありますが、多くは植物由来です。日頃から植物に親しみ、薬用植物園で実際に観察することで多くの知識が得られますので、薬用植物園講義には必ず出席してください。
2植物などの天然物に含まれる成分(二次代謝産物)は薬用原料として重要ですが、きわめて多様であるとともに構造が複雑なものも少なくありません。天然物化学では、これらの天然物の科学的多様性を、生合成経路を指標として系統的に理解することを目的としています。単なる暗記科目と考えてはいけません。
3構造式を見て生合成経路や、その化合物がどのカテゴリーに属するかを推測できるようになることを目標にしてください。また、主要な化合物の構造式から、その化合物の名称、基原植物、薬用部位や作用などを想起できるようになることも目標にしてください。
4試験やレポート等に対する解説を、資料配信または講義時間中にフィードバックを行います。
5この科目と学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)との関連をカリキュラム・マップを参照し、理解すること。

主な関連科目

講義1年有機化学1
2年有機化学2、有機化学3
3年有機化学4、医薬品化学1
4年医薬品化学2、漢方医学概論、基礎薬学特論2(化学系薬学)
5年
演習1年
2年
3年
4年
5年
実習1年
2年薬学実習3(有機化学・分析化学)
3年
4年
5年

メモ