科目名分類学年卒業認定との関連
薬物治療学2(臓器別治療2)講義4年前期必修・1.5単位
担当者(※は責任者)
※安藤崇仁(地域医療薬学)

授業の概要

 3年後期の「薬物治療学1」に引き続き、薬理、病態、といった一般論としての大きな枠の概念ではなく、患者さん一人ひとりに合った最も効果的な薬物治療を提供するにはどのような観点で薬学管理を行うか、という点を学びます。毎回、症例を基に、患者が罹患している複数の疾患を例に挙げ、患者情報に応じた適切な治療薬を提案し、実践するために、代表的な疾患への適切な薬物の選択方法と、薬物モニタリングに必要な知識を修得します。具体的には、①患者が持つ疾患の具体的な患者情報、治療目的、医薬品の適正使用に必要な医薬品情報を抽出し、②治療ガイドラインや状況にあった情報提供を行い、その効果と副作用を判断し、対応策を立案するために必要な、薬物療法に関する基本的能力を身につけます。

授業の到達目標

①患者が罹っている疾患の定義、発症原因、頻度、疫学的背景、特徴的な臨床検査値の変動、主たる症状を説明できる。
②適応が認められている治療薬の薬理作用と特徴から、患者の状況に適した治療薬が選択できる。
③患者情報、処方箋から処方意図を説明できる。
④個々の症例において、治療薬の効果と副作用の有無を判断し、継続か改善が必要かの判断ができる。
⑤薬物療法の改善が必要な場合には、その原因に応じた適切な改善案が提案できる。 

授業形式

教科書とオリジナル補助プリントを使った講義

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1泌尿器系、生殖器系疾患の薬物治療(1)慢性腎臓病(CKD)と急性腎不全、慢性腎不全の薬物治療について説明できる(知識)E2(3)③2,E2(3)③3,E2(3)③5
2泌尿器系、生殖器系疾患の薬物治療(2)ネフローゼ、過活動性膀胱の薬物治療について説明できる(知識)E2(3)③2,E2(3)③4
3泌尿器系、生殖器系疾患の薬物治療(3)前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫の薬物治療、妊娠、分娩、避妊について説明できる(知識)。E2(3)③6,E2(3)③7
4消化器系疾患の薬物治療(1)消化性潰瘍、クローン病、潰瘍性大腸炎の薬物治療について説明できる(知識)E2(4)②1,E2(4)②2
5消化器系疾患の薬物治療(2)肝疾患(肝炎、肝硬変)、薬剤性肝障害の薬物治療について説明できる(知識)E2(4)②3
6消化器系疾患の薬物治療(3)膵炎、胆石症、過敏性腸症候群の薬物治療について説明できる(知識)E2(4)②4,E2(4)②5,E2(4)②6
7消化器系疾患の薬物治療(4)便秘、下痢、悪心、嘔吐、痔の薬物治療について説明できる(知識)E2(4)②7,E2(4)②8,E2(4)②9
8呼吸器系疾患の薬物治療気管支喘息、閉塞性肺疾患及び喫煙に関する疾患、間質性肺炎の薬物治療について説明できる(知識)E2(4)①1,E2(4)①2,E2(4)①3
9骨・関節・カルシウム代謝性疾患関節リウマチ、変形性関節炎の薬物治療について説明できる(知識)E2(2)③1,E2(2)③3
10感覚器疾患(2)緑内障、網膜症、加齢黄斑変性の薬物治療について説明できる(知識)E2(2)⑥1,E2(2)⑥2,E2(2)⑥3
11免疫・炎症・アレルギー疾患(1)自己免疫疾患(総論)、アナフィラキシーショック、全身性エリテマトーデス、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症の薬物治療について説明できる(知識)E2(2)②4,E2(2)②5,E2(2)②8
12免疫・炎症・アレルギー疾患(2)臓器移植(腎臓、肝臓、骨髄、輸血)、移植片対宿主病(GVHD)の薬物治療について説明できる(知識)E2(2)②9

成績評価の方法および基準

定期試験100% マークシートによる客観試験(約70%)と筆記・論述試験(約30%)を併用して評価します。
中間試験0%
小テスト0%
レポート0%
その他欠席については、学則の定める基準で対応します。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書病気とくすり 2020(3年後期に薬物治療学1で使用したものです)薬局 増刊号南山堂
教科書エキスパートの臨床医による検査値ハンドブック中原一彦(監修)総合医学社
参考書治療薬マニュアル2021高久、矢崎監修医学書院
参考書今日の診療Web Vol.25 [学内専用]帝京大学医学総合図書館のホームページより閲覧可
その他ネットに掲載され、閲覧可能な、疾患のガイドライン等

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1履修についての【1】単位制についてを参考に予復習が必要になります。
2事前学習
毎回、対象となる疾患について、講義時点までに習った内容の復習が必要です。
①疾患の主たる臓器の機能形態と治療薬の作用点になっている病態、適応がある医薬品の作用機序について、毎回実施するプレテストの最後に、教科書「病気とくすり2018」の該当ページを示しますので、必ず読んできてください。
②疾患の診断、治療目標に関連する検査値については、教科書「エキスパートの臨床医による検査値ハンドブック」を、自習しておいてください。
③事前配信する講義資料に目を通し、よく理解できないところを見つけておいてください。
上記①~③について、各回の講義の前におよそ2時間は実施してください。
3事後学習
①毎回講義終了後に、プレテストを見直して、誤りを修正してください。
②毎回、TYLASに課題症例を出題します。講義内容の復讐を兼ねますので、行って返信してください。下記③の手助けになるはずです。
③症例のついて、講義で説明した内容はプリントに記載されたものが中心ですから、もう一度見直して、対象となった患者さんに対する最低限の情報を整理してください。
④症例ではすべての分野を網羅することはできません。教科書「病気とくすり」の後半に一般的な薬物療法の方針と副作用情報、対策が記載されていますので、まとめておいてください
上記①~④について、各回の講義終了後におよそ2時間は実施してください。
43年後期と同様、薬物治療モニタリングのポイントとして、1)患者状態の把握、2)治療目的、治療方針、治療目標の理解、3)治療薬選択の妥当性の評価、4)治療適応可能か、5)治療薬の使用法に問題はないか、6)最大効果、最小の副作用とするための患者への指導(教育)、7)効果と副作用のモニター、8)この治療がうまくいかなかった場合の対応策、といった観点で進めます。3年後期薬物治療学1と思考プロセスは変わりませんので、復習しておいてください。

その他の注意事項

11~2年の有機化学で学んだ代表的な医薬品の構造式、疾患にかかわる生体内物質の構造式の特徴(官能基や基本骨格)が頭に浮かぶようにしておいてください。1年から3年で学んだ薬理学1、2、病態・薬理学2~6、3年医薬品情報学、調剤学、薬物動態学から、取り上げた症例に必要な部分はどこか、説明できるようにしてください。。
2医療には、ここまでやればいい、というゴールはありません。自分で調べ、わからないことをそのままにしておかないようにしましょう。質問は大歓迎です。いつでも聞きに来てください。
3①プレテストの正解は、講義終了後、TYLASで問題を配信します。解答は小テストシステムを参考にしてください。
②定期試験の内容については、試験終了後、自己学習する時間を考えて、適切な時期に正答率と簡単な解説をTYLASで配信します。配信されるまで何もしないのではなく、自分から正解を探し、確認する習慣を身に付けてください。
4この科目は、患者さんの薬学的ケアをある1点でしか検討できませんが、4年後期の統合学習1では、経時的(時間経過に伴う患者さんの状態の変化等)を加味して薬物治療学の考え方を応用して薬学的管理についてつながる基本です。また、実務実習において、薬剤管理指導記録を作成する際の基本的な考え方になります。
5講義中の態度で最も注意していただきたいことは、他人の勉強機会を妨げるような行為をすることです。何が該当するかは各自で考えて行動してください。目に余る場合、口頭で注意します。
6この科目と学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)との関連について、カリキュラム・マップを参照して理解すること。
7試験やレポート等の対し、解説等のフィードバックを行います。

主な関連科目

講義1年薬学への招待2、薬科生物学、薬学への招待2
2年医学概論(症候・OTC)、生化学2、生化学3、病態・薬理学1(精神・神経・筋)、病態・薬理学2(内分泌・生殖器)、薬理学1(総論・末梢神経)、薬理学2(情報伝達・神経)、薬理学3(感染症・悪性腫瘍)、製剤学、薬理学2、病態・薬理学2
3年医薬品情報学、放射薬品学、生物薬剤学、病態・薬理学3(呼吸器・消化器)、病態・薬理学4(代謝・血液・骨)、病態・薬理学5(腎・循環器・高血圧)、病態・薬理学6(免疫・アレルギー・皮膚・感覚器)、薬物動態学、薬物治療学1(総論・臓器別治療1)、薬物治療学1、病態・薬理学3、病態・薬理学4、病態・薬理学5、病態・薬理学6、医薬品情報学、薬物動態学
4年医薬品安全性学、地域医療論、薬物治療学2(臓器別治療2)、薬物治療学3(臨床検査・悪性腫瘍)、薬物治療学4(感染症・統合演習1)、薬物治療学4(一部)
5年
演習1年
2年
3年
4年医療コミュニケーション3、薬学統合演習1、薬学統合演習1
5年医療コミュニケーション4
実習1年
2年
3年薬学実習5(薬理学)、薬学実習7(がん、感染症、代謝性疾患)
4年薬学実習8(実務実習事前学習)、薬学実習10(実務実習事前学習)、薬学実習9(実務実習事前学習)
5年薬学実務実習(病院・薬局)、実務実習

メモ

 本講義は、医薬品を適応と関連して1対1で覚えるのではなく、患者情報に基づいた適正な薬物療法を行うことを目的とします。特に、薬物療法の効果と副作用発現の可能性、回避方法は重要なポイントです。参考書に指定した「治療薬マニュアル」は、薬剤師必携の書です。毎年変りますので、手元に置いておくことを薦めます。これらの教科書、参考書は事前学習でも充分に役に立ちます。自ら学ぶ教材として有効に活用してください。