科目名分類学年卒業認定との関連
医療とボランティア講義1年前期選択・2単位
担当者(※は責任者)
※崎坂香屋子(公衆衛生学研究科), 白山裕士(医療共通教育研究センター)

授業の概要

日本社会では「奉仕=ボランティア、無償労働」という理解がいまだ強いように思われますがそれは正しくありません。本講座では理論とともに医療を核としつつ広い視野で活躍されている方たちにも登場いただき、ボランティアの意義、困難点、上手に進める秘訣等も伝えていただく構成としています。Volunteerを英語辞書で調べると「自発的意思で参画する兵士、志願兵」と出てきます。自発的に手をあげて、敢えて、しばしば未知で危険な最前線に赴く人々です。ボランティアという概念にとって一番大事な要素は「自発性」「機動性」であり、その次に「利他性・公共性」「無償性」といった要素が来ます。ボランティアは何よりも目の前にいる他者を即座に理解し共感できなければ、刻々と変化する最前線で役に立つ活動はできません。「理念なきボランティアは必要とされない」ともいわれます。実はボランティアという言葉は奥が深く、みなさんは近い将来高い専門性を有することになる医療者になりますが、本業を超えた活動、すなわち日本でもようやく聞くようになった「プロボノ」についても学ぶ機会とします。プロボノとはラテン語で「公共善のために」を意味しますが、専門職がその専門技術を活かして社会の公共善のために活動することを指します。専門性を無限に広げ、人生の幅をも広げる職能ボランティアの可能性についても真摯に学び、そして実際に動いてみましょう。本科目は、開発途上国等での実務経験(国連人口基金[UNFPA]・JICA勤務、JICAボランティア)のある教員による授業です。

授業の到達目標

本講座では医療者としての専門性を活かしつつ、活動の場を広げるあらゆる可能性に挑戦していただくための理論、留意点や多様な価値観についても習得していただくことを目標としています。
具体的到達目標は以下のとおりです。
①受講者はボランティア、およびプロボノとは何か、その背景、留意点、意義、実例、また課題について理路整然と説明ができる。
②身近な人の寄り添いや心のケアに始まり、地域規模の課題まで様々なレベルの社会貢献活動が存在する中で、医療者として社会にどう貢献できるか、また効果的な活動を行うための要件について明確に解説できる。
③受講者は学んだ理論と実践を概観し、自分が決めた社会貢献活動を実際に半日でもよいので実施し、その知見、意義、反省点、今後の展望等について筋道立てて発表することができる。

授業形式

講義

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1ボランティアとは何かその意義について述べることができる。崎坂香屋子
2大規模災害を事例としてボランティア活動について説明できる(1)事例紹介①「世界に遅れる日本の災害避難所」「東日本大震災の仮設住宅の住民の健康の変化と外部支援の実際」崎坂香屋子
3大規模災害を事例としてボランティア活動について説明できる(2)事例紹介②「避難所運営シミュテーションゲームHUGから学ぶ:どんな問題が起きるのか、予防策は?」崎坂香屋子
4医療専門職について説明できる(1)医療専門職が社会を変える:「帝京大学医学部で学び救急救命医としてカンボジアでや災害避難所で働く」(坪井基浩 埼玉赤十字病院 医師)崎坂香屋子
5プロボノとはなにかプロボノの重要性、その実際と課題について説明できる
「コロナ感染拡大下のプロボノの活動から」
崎坂香屋子
6医療専門職について説明できる(2)医療専門職が社会を変える:「終末期医療・看取り:ある医師の生き方から学ぶ」(白山裕士 本学非常勤講師、医療法人社団ますお会 第2北総病院 内科医師)崎坂香屋子
白山裕士
7専門職が地域の力を育てた事例について説明できる(1)「住民が支える地域食堂と地域包括ケア、そしてコロナ感染症の現場から」(黒田藍 八王子市保健所主任保健師)崎坂香屋子
8医療専門職と国際協力・国際ボランティアについて説明できる(2)(仲佐保 医師、SHARE代表)崎坂香屋子
9医療専門職と国際協力・国際ボランティアについて説明できる(2)(宮本勝行 元タンザニア派遣JICAボランティア、看護師)崎坂香屋子
10専門職が地域の力を育てた事例について説明できる(2)「若者自殺対策最前線:ゲートキーパーの養成」
(石井綾華 NPOライトリング代表理事)
崎坂香屋子
11「医療とボランティア」総括:「自分たちが考える医療専門職のボランティアとその可能性」(グループワーク)(1)崎坂香屋子
12「医療とボランティア」総括:「自分たちが考える医療専門職のボランティアとその可能性」(グループワーク)(2)崎坂香屋子
13自らのボランティア活動について発表することができる(1)(2)(3)崎坂香屋子
14自らのボランティア活動について発表することができる(4)(5)(6)崎坂香屋子
15習熟度確認崎坂香屋子

成績評価の方法および基準

定期試験
中間試験
小テスト
レポート
その他授業内課題の遂行・レポート提出(50%)、期末筆記試験あるいは活動発表(30%)、リアクションペーパー(20%)、
(※出席と授業内の課題の遂行を重視するのでこれらの遂行が難しいと思われる学生は履修しないこと)

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書特に指定しません。
参考書「学生のためのボランティア論」岡本栄一、菅井直也、妻鹿ふみ子(2016年、大阪ボランティア協会)
参考書「新ボランティア学のすすめ」内海成治、中村安秀(2014年、昭和堂)
参考書「国際ボランティアの世紀」山田恒夫(2014年,NHK出版)
参考書「ボランティアの誕生と終焉」仁平典宏(2011年、名古屋大学出版会)
参考書「医療の力」
武藤真祐(2012年)
参考書「幸福死のすすめ」武藤真祐(2013年)
その他参考書は授業の中で適宜示します。また提示の参考書を推薦します。
毎回授業の最初に主な講義内容を記した資料を配布することとしていますが、配布資料はすべてLMSにアップロードする予定です。プリントアウトは各自必要に応じて行ってください。

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1【事前学修】参考文献などを参照し次回の授業内容についてあらかじめ自主学習をすることが望ましい。
【事後学修】授業中の疑問点をまとめ、教科書等を利用し、次回授業までに解決しておくこと。
【必要時間】当該期間に30時間以上の予復習が必要。

その他の注意事項

1正当な理由のない遅刻欠席は減点対象とします。私語や授業に関係のない行為、周囲への迷惑行為には厳しく対処いたします。条件がととのえば半日でよいので個別に実際に何らかのボランティア活動をしていただき、その知見、改善点等をレポートに纏め個人で発表していただく予定なので事前に受け入れ先等を探しておいてください。一昨年は災害被災地支援、マラソンや健康関連イベント支援、農業支援、高齢者施設での活動などがありました。講義および発表はパワーポイントを用いて行います。外部講師のやむを得ない都合により日程が変更になる可能性があります。
この科目と学位授与方針との関連はカリキュラムマップを参照し確認しておくこと。
試験やレポート等に対し、講義の中での解説等のフィードバックを行う。

主な関連科目

講義1年
2年
3年
4年
5年
演習1年
2年
3年
4年
5年
実習1年
2年
3年
4年
5年

メモ

学部・学科により開講学期が違う場合があります。時間割等で確認してください。