科目名分類学年卒業認定との関連
医療数理科学入門講義1年前期選択・2単位
担当者(※は責任者)
※森川馨(薬学部)

授業の概要

 医療数理科学入門では、皆さんがこれから医療の仕事を行う上で必要な数学として線形代数と多変数関数の解析を学びます。線形代数はほとんどの大学理工系学部1年での必修科目となっているものです。線形代数(高校では学びませんが)は、微積分学と並ぶ数学の2本の柱の1つです。我々の仕事との関連では、薬の有効性を評価するとき、薬を投与した、しないだけでは薬の真の有効性を評価することはできません。何故なら、患者さんの年齢、性別、併用薬、患者さんの基礎疾患(糖尿病の有無)など共変量と言われる他の変数の影響を考慮することなしには薬の真の有効性を評価することが出来ないからです。ここで、多変数関数の解析(高校までの数学では1変数しか扱っていません)が必要になります。またその解析の基礎としての線形代数が必要になります。また、この科目では、今注目を集めているAI(人工知能)の仕組みも学びます。実は、AIは正にここで学ぶ数学を使って動いています。この科目では、単に教室で学ぶだけでなく、実習としてコンピュータを動かしながら理解することも行います。AIの仕組みを理解することは、脳のパターン認識の理解にもつながります。医療数理科学入門では、厳密な証明をしたり、難しい問題を解いたりすることはしません。しかし、医療において、どんな数学を使うのか、また使う際の考え方を示すことに重点をおき、ここで学ぶ数学の医療における重要性と有用性を実感してもらいたいと考えています。

授業の到達目標

 線形代数と多変数関数の解析は、医療の仕事をするにおいて必要な数学ですが、今注目を集めているAIもここで学ぶ数学を使って動いています。この科目では、
①これから学ぶ医療系科目の学習に必要な基本的な数学である線形代数と多変数関数への理解を深めるとともに計算ができる。
②数学としての線形代数、多変数関数を学ぶだけでなく、その応用としてのAIの仕組みについて説明できる。
③数学を使う医療データの有効性・安全性の評価の話題に言及し、事例を踏まえて数学の必要性と重要性について説明できる。

授業形式

講義、演習

授業計画

項目内容担当コアカリ
番号
1医療において多変数関数を考える必要性と多変数関数を扱う上で必須となる線形代数(ベクトルと行列)の重要性を説明できる。また現在注目を集めているAI(人工知能)がこれらの数学で動いていること、脳の認知機能の理解におけるこれらの知識の重要性について説明できる。森川馨
2医療データの解析には複数の変数のデータを扱う必要があり、そうした解析には線形代数の知識が必須であることを知るとともに、線形代数の基礎となるベクトルと行列の簡単な計算ができる。森川馨
3連立1次方程式を行列で表現し、連立1次方程式の行列での解法を説明できる。ベクトルと行列の計算、行列式、簡単な逆行列が計算できる。森川馨
4多次元データをどのように考え、扱うかベクトルの成分表示、内積、ベクトル空間の次元とベクトルの独立性、線形写像について説明できる。内積やベクトルの線形変換の計算ができる。森川馨
5見やすい座標で多次元データを考える(1)
固有値と固有ベクトルの計算方法に関する知識を有し、行列の対角化、固有値と固有ベクトルの幾何学的意味を説明できる。簡単な行列の固有値と固有ベクトルを計算できる。 森川馨
6見やすい座標で多次元データを考える(2)
対称行列、直交変換、対称行列の対角化、2次形式、統計の分散共分散行列など対称行列の解析の重要性を説明できる。対称行列の固有値と固有ベクトルを計算できる。 森川馨
7指数関数の重要性を学ぶ1変数関数の微分積分法の復習と指数関数の重要性を説明できる。また、医療の有効性や安全性の評価において重要な正規分布やロジスティック関数を学び、計算ができる。森川馨
81変数関数の微分から多変数関数の微分へ多変数関数の微分として、偏微分と全微分を学ぶとともにその幾何学的意味を説明できる。また、最小値の求め方として、勾配降下法を説明できる。多変数関数の微分に関する知識を有し、計算できる。森川馨
9PCを用いた実習1Excelの関数の使い方や行列や行列式の計算の方法に関する知識を有し、Excelで実際の問題が解ける。内積の意味や逆行列を用いた連立方程式の解法に関する知識を有し、Excelで実際の問題が解ける。森川馨
10PCを用いた実習2 Excelで正規分布やロジスティック関数を描き、その意味を説明できる。また、最小二乗法を用いて回帰直線を求めるとともに最適化問題を実際のデータを用いた実習で学び、Excelで問題が解ける。森川馨
11回帰分析と最適化問題多変数関数の微分の応用として、統計データで重要な最小二乗法やロジスティック曲線のパラメータの推定など最適化問題を説明できる。最適化問題としての回帰分析やロジスティック回帰に関する知識を有している。森川馨
12PCを用いた実習3Excelのソルバーの使い方に関する知識を有し、数値解析によるパラメータの最適解を説明できる。ロジスティク関数を用いたニューロンモデルの作成やソルバーを用いて簡単なデータの解析ができる。森川馨
13医学論文から実際の臨床データの解析事例を示し、医療の評価において、ロジスティック回帰分析など線形代数の考え方が重要であり、有用であることを説明できる。森川馨
14これまで学んだ線形代数、多変数関数の微分などにおける重要な基礎事項を復習し、これらの数学がこれからの医療において重要であることを説明できる。森川馨
15講義の振り返り、習熟度確認。森川馨

成績評価の方法および基準

定期試験70%
中間試験
小テスト
レポート
その他レポートとして毎回の授業で出す問題を解いた「宿題ノート」20% と小テスト10%で評価します。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書改訂版 「すぐわかる線形代数」 石村 園子東京図書
参考書Excelでわかるディープラーニング超入門 涌井良幸、涌井貞美技術評論社

事前事後学修の内容およびそれに必要な時間

1【事前学修】
 高校で学んだベクトルと微分・積分を復習しておいて下さい。
【事後学修】
 数学は話を聞いただけでは身に付きません。簡単な問題を自分で解いてはじめて理解することが出来ます。授業では、簡単な計算問題を宿題として出しますから、「宿題ノート」に自分の手で計算して、理解を深めて下さい。評価においては「宿題ノート」も重視します。
【必要時間】
 当該期間に30時間以上の予習、復習、特に復習が必要です。

その他の注意事項

1この科目では、難しい数学の講義は行いません。皆さんがこれから仕事をする上で必要となる数学を紹介します。しかし、数学は話を聞いただけでは身に付きません。簡単な問題を自分で解いてはじめて理解することが出来ます。必ず、基本的な問題を解いて、理解するように努めて下さい。
2試験やレポート等に対し、講義の中での解説等のフィードバックを行います。
この科目と学位授与方針との関連をカリキュラムマップを参照し理解して下さい。

主な関連科目

講義1年
2年
3年
4年
5年
演習1年
2年
3年
4年
5年
実習1年
2年
3年
4年
5年

メモ

学部・学科により開講学期が違う場合があります。時間割等で確認してください。