担当者 | 渡辺 隆治 | |
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学年・開講期 | 1年次 前期 [総合理工学専攻 博士前期課程(修士課程)] | |
科目の種類 | 専門 | |
区分・単位 | 選択 2単位 | |
科目ナンバー |
古典コンピュータでは現実的な時間内で解くことが困難と考えられているファイル検索や因数分解などを、量子力学の原理に従って動作するコンピュータが高速に実行できる仕組みの概要と、その仕組みを数理的に厳密に理解するための数学的基礎を学びます。
前半では、計算とは何かという概念に立ち戻り、古典コンピュータと量子コンピュータの特徴を比較します。これらをもとにグローバーによるファイル検索のアルゴリズムとショアによる因数分解のアルゴリズムを概観します。
後半では、量子計算アルゴリズムを厳密に理解するための基礎を身に付けることを目指します。テンソル積ベクトル空間、量子力学の公理等の数学、物理学の準備を行った後、量子コンピュータが量子ビットのテンソル積で与えられる状態のユニタリ変換で実現されるという数理モデルに基づいて、量子計算アルゴリズムの基礎となる量子ゲートを定義していきます。ここで定義された量子ゲートを基本的な構成要素として、量子計算アルゴリズムを数理的に理解します。
講義を主として適宜演習を行います。演習では、宿題として出された演習問題の解答の板書による発表が課されます。
本科目は、総合理工学専攻のディプロマポリシーの項目1に関連しています。
量子力学の原理に従って動作するコンピュータ上でのファイル検索のアルゴリズムと因数分解のアルゴリズムの概要を理解する。
テンソル積ベクトル空間の基礎事項を理解する。
量子コンピュータの構成に必要な量子力学の原理をもとに量子ビットの意味を理解する。
量子ゲートが量子ビットのテンソル積で与えられる状態として表されることを理解する。
量子ゲートのユニタリ変換で量子コンピュータが構成されることを理解する。
レポートを7割、演習問題の解答の板書発表を3割の割合で考慮して成績を評価します。
演習では、演習問題の解説と学生の板書発表に対するフィードバックとして講評が行われます。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 教科書は使用しません。授業用資料を配付します。 | ||
参考文献 | 『量子コンピュータの基礎数理』 | 上坂吉則 | コロナ社 (ISBN 4-339-02376-0) |
参考文献 | 『量子コンピュータ』 | 竹内繁樹 | 講談社 (ISBN 4-06-257469-1) |
復習として、講義で取り上げた重要な用語の定義・用例を確認・理解して下さい。予習として、宿題として出された演習問題の解答を作成して、各回の授業に臨んで下さい。
講義内容の復習、演習問題の解答作成、レポート作成に要する時間が、授業時間の2倍程度となるように講義内容、演習問題、レポート課題を準備します。
学部レベルの線形代数の知識を前提としますので、事前準備をしておいて下さい。
量子力学、論理回路、整数論などと関連しますが、これらについては必要に応じて補足説明を加えながら講義を行います。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 計算の概念と古典コンピュータ |
第2回 | 量子コンピュータの特徴:シュレディンガー方程式,物理系と論理データの対応 |
第3回 | 量子コンピュータの特徴:量子並列性と状態の観測 |
第4回 | ファイル検索のアルゴリズム |
第5回 | 因数分解のアルゴリズム:因数分解の手順,離散対数問題の取り扱い方 |
第6回 | 因数分解のアルゴリズム:量子フーリエ変換,ショアのアルゴリズム |
第7回 | 線形代数:2次元複素ベクトル空間 |
第8回 | 線形代数:ベクトルのテンソル積 |
第9回 | 線形代数:作用素のテンソル積 |
第10回 | 量子力学の公理 |
第11回 | 量子コンピュータの数理モデル |
第12回 | 簡単な量子コンピュータ:排他的論理和を表すゲート |
第13回 | 簡単な量子コンピュータ:論理積を表すゲート |
第14回 | 簡単な量子コンピュータ:論理和を表すゲート |
第15回 | 簡単な量子コンピュータ:転写,分岐,交換を表すゲート |