文化財を保存・活用し、歴史を考えるための資料とするためには、自然科学的な手法が不可欠です。材質や技法の分析、原材料の産地や製作地の推定、年代の測定、遺跡出土遺物の保存処理などの分野で、様々な自然科学的な方法による取り組みが行われ、多くの成果をあげています。また文化財は金属・土・岩石・鉱物などの無機物に加え、木材・漆・骨角・貝殻などの有機物といった多様な原材料で構成されているため、それぞれの素材に適応した調査法や保存処理法が必要となります。
この実習では、機器を用いて文化財の形状や構造を可視化して調べる方法、遺跡から出土した金属製品や木製品の保存処理法、火山灰(テフラ)・石器・土器などを構成する岩石や鉱物を観察する方法、発掘現場での文化財対処法などについて、実技を行います。
本実習は、8月下旬から9月初旬の間の4日間、山梨県笛吹市にある帝京大学文化財研究所内の宿泊施設を利用して、実施する予定です。
機器実習では各種測定結果を正しく評価できる。
遺物の保存処理と現場対処法の分野では、基本的な保存技術と知識を修得する。
岩石・鉱物調査では、石器や土器などの文化財の材質的特徴について基礎的知識を修得する。
毎日の授業に関する4回のレポートの内容(各25%)で評価します。レポート課題では実習内容の理解度と問題点の抽出能力を問います。
参考図書を事前に読解し機器分析の原理と目的を理解することが必要です。
先行研究における分析事例は文化財科学Ⅰ・Ⅱの授業内で紹介します。併せて履修することをお勧めします。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 機器分析実習1ー各種顕微鏡観察と色測定ー |
第2回 | 機器分析実習2ーX線透過撮影ー |
第3回 | 機器分析実習3ーカメラや赤外線スキャナー等を用いた光学調査ー |
第4回 | 機器分析実習4ー蛍光X線分析計やICP-OESを用いた材質調査ー |
第5回 | 機器分析実習5ー走査型電子顕微鏡を用いた観察と元素分析ー |
第6回 | 機器分析実習6ー質量分析計による鉛同位体比測定ー |
第7回 | 土器胎土調査1ーオンサイト岩石・鉱物観察ー |
第8回 | 土器胎土調査2ー岩石・鉱物の顕微鏡観察ー |
第9回 | 土器胎土調査3ー関東ローム層試料からテフラ観察ー |
第10回 | 土器胎土調査4ー土器中の構成岩石鉱物の同定法ー |
第11回 | 金属製品の保存修復1ー鉄器の保存修復ー |
第12回 | 金属製品の保存修復2ー青銅器の保存修復ー |
第13回 | 木製品の保存修復1ーポリエチレングリコール法ー |
第14回 | 木製品の保存修復2ー真空凍結乾燥法ー |
第15回 | 脆弱遺物の保存修復ー遺構からの取り上げと安定化処置ー |