心理学基礎文献研究Ⅰ
担当者元永 拓郎教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [心理学科 2017年度以前]
科目ナンバリングPSY-201

授業の概要(ねらい)

 心の健康が保てなくなる時、それは心の悩みとして把握されたり、異常心理として認識されたりする。それらは臨床心理学によって学問の対象となっているが、その他、精神医学、精神保健学、福祉学等のさまざまな学問領域で、実践と研究が積み重ねられている。
 心理学基礎演習Ⅰでは、それらの心の健康が不調となった状態が、学問によってどのように把握され研究が進んでいるかについて、テーマ別に検討を行う。特に精神疾患として把握される、統合失調症、うつ病等の気分障害、ストレス障害、人格障害、依存や嗜癖、認知症といった、代表的な精神疾患について検討を行い、自分の知人や友人がこのような状態になった時にどうかかわるか、サポートするかも含めて、充分な理解を深めることとする。
 また精神疾患のみでは把握することの難しい心理現象として、児童虐待、発達障害、いじめ、不登校、ひきこもり、非行、ゲーム依存、共依存、性的違和、自殺といったことも取り上げる。これらの学習において、各自が文献を収集しよく読み込んでおく必要がある。事前に学習したことをもとにディスカッションを行う。またそれぞれの不調について、どのような臨床心理学的研究が行われているかも、文献をもとに調べ、効果的なプレゼンテーション方法を身につけるとともに、グループワークでのディスカッションを行う。また、グループワークを参加者の心理面に配慮して効果的に行うためのスキルを身に着ける。
 これらのテーマに関するプレゼンテーションやグループワークの方法は、公認心理師や臨床心理士を目指し大学院進学を目指す学生はもちろん、一般就職して社会人として働くことを目指す学生にとっても、求められることになる。質の高いチーム内ディスカッションは、人生のどの局面においても確実に求められるであろう。そのような将来にむけての実践力を培うのも、この演習が目指していることになる。
 また心理学基礎演習Ⅱでは、この演習Ⅰに続いて、心の健康の不調に対する支援をテーマに、その基本的な理解を深めるための学習を行う。精神分析や来談者中心療法、認知行動療法といった臨床心理学な支援理論に関して、充分な学びを行う。支援においては、臨床心理学のみならず医学や福祉学など多学問が協働して多職種でのチーム対応が基本となる。その現状についても、本演習で取り扱う予定である。心理支援に関してどのような臨床心理学的研究が行われているかも、文献をもとに調べ、プレゼンテーションを行い、グループワークでのディスカッションを通して理解を深めていく。
 この演習は、心理学科のディプロマポリシーにある、「1.心理学の幅広い分野にわたる、こころに関する知識や法則を理解できる」「3.こころに関わる様々な問題に実践的な解決を与えうる、柔軟な思考能力と実践力を有する」の獲得に向けての臨床心理学に焦点をあてた重要な必修科目となる。

授業の到達目標

1)自ら必要な文献を収集し、内容を整理し、わかりやすい資料を作り、効果的なプレゼンテーションすることができる。
2)心の健康の不調や精神疾患について基本的知識を修得し、その知識をもとにディスカッションを深め、その知識について正確に説明できる。
3)心の健康の不調や精神疾患ついて、その概念の有効性や限界について、友人や知人がそのような状態になった際の理解の仕方について自らの意見を表明できる。

成績評価の方法および基準

 授業前資料作成20%、授業内発表30%、小テスト20% レポート30%
 到達目標に達しているかを基準とする。
 5回を超えて欠席した場合は、小テスト及びレポートの採点を行わない。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書よくわかる臨床心理学 下山晴彦ミネルヴァ書房
参考文献TEXT精神医学(改訂4版) 加藤進昌・神庭重信・笠井清登編集南山堂

準備学修の内容

 教科書の指定部分(次回授業範囲)について充分に読み込み、授業で提示した学習課題に目を通し、自分自身の意見をまとめておく。その準備をした上で、授業に臨む。授業内で発表された内容やその後ディスカッションした体験をふまえ、小テストにおいて自分の考えをまとめる。またレポートとして提出する場合もある。担当テーマについては、10本以上の文献を読み込み紹介する。文献の中には、必ず研究論文も紹介し、担当分野でどのようなことが研究テーマとなっているかについても紹介する。

その他履修上の注意事項

 自ら文献を収集し、それを充分に読み込み、わかりやすい発表資料を用意し、授業内でわかりやすく発表し、それをもとに議論を深め、それらをふまえて学んだことを整理するという学修となる。臨床心理学や公認心理師、臨床心理士の活動に関心のある人には、ぜひとも積極的に臨んで多くの学びを得てほしい。
 この科目履修に際して、「臨床心理学概論」「心理学的支援法(心理療法概論)」「心理アセスメント(臨床アセスメント法)」の履修は重要となる。

授業内容

授業内容
第1回・ガイダンス、テーマの分担 *グループワーク
第2回・心の健康と不調に関する概要 *グループワークによるディスカッション
第3回・精神障害に関する歴史
第4回・認知症についてその概要と支援の方法 *グループワークの方法の確認
第5回・発表とディスカッション
第6回・発表とディスカッション
第7回・発表とディスカッション
第8回・発表とディスカッション
第9回・発表とディスカッション
第10回・発表とディスカッション(オンライン)
第11回・発表とディスカッション
第12回・発表とディスカッション
第13回・精神障害者の長期入院とインクルージョン
第14回・発達障害をめぐる概念の変遷
第15回・まとめと展望