外国史Ⅱ
担当者高橋 裕史教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングHSG-102

授業の概要(ねらい)

 現在の日本では、英語を中心とする「外国語」の運用能力の必要性と重要性が「過度に」指摘されてきている。確かに外国語の知識があった方が、生涯教育という観点からも、また自己の啓発と向上という観点からも望ましいことであることは誰もが認めるところであろう。語学の運用力が大切であることは否定しないが、運用力という技術しか持っていないことは、見た目だけが立派な容器にしかすぎず、その容器に入れる中身が無いに等しい。語学を学ぶことは、その言語が使用されている地域の歴史・文化・社会・人々のも学ぶことをも意味する。特に歴史に関する基本的な知識・教養は、他国の人々と私達との相互理解には不可欠の素養であることは、多くの識者が指摘するところでもある。とりわけ日本の国際社会における地位の高まりにあって、日本と海外諸国との近代以前の歴史関係に関する知識の涵養も求められている。そこでこの講義では、特に今の日本人には縁遠く感じられるであろう、ヨーロッパのアジア進出と日本との歴史関係を、当時の史料が豊富に残っているイエズス会の活動を中心に取り上げる。15回の講義を通して、西欧を理解するために必要な基本的な教養を身につけ、ヨーロッパ圏の人々との歴史認識や知識を共有することができよう。ただし本講義は歴史の諸項目を「暗記する」ことではなく、歴史学の方法論に基づいた「歴史的な思考力を育てる」ことを主要な目的の一つに設定している。従って「暗記すれば何とかなる」という姿勢での受講は、大きな誤算となることを明記しておく。

授業の到達目標

●歴史学習の方法と在り方を「暗記する歴史」から「考え・発見する歴史」へと成長・発展させることができる。
●近代以前のヨーロッパの政治・経済・軍事・宗教の諸相の歴史を基礎から学んで、その要点を習得することができる。
●ヨーロッパと日本との過去の歴史を深く掘り下げて理解し、説明することができる。
●「世界史の中の」日本史・「日本史の中の」世界史という複眼的な思考能力と分析視点の基礎を養うことができる。


成績評価の方法および基準

 まず評価の方法であるが、この講義では成績評価を冷静かつ厳格に実施するつもりである。また受講諸君の多様で多面的な能力を、筆記による定期試験だけで測ることはできないので、レポートやリアクションペーパーなども取り入れて多面的に評価をしたいものと考えている(因みに前年度の本講義の単位「非 
 認定」率は24%ほどである)。具体的には、
 ・論述式定期試験のみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+リアクションペーパーの場合:前者80%+後者20%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・論述式定期試験+レポート課題の場合:前者70~80%+後者20~30%(+講義時の態度や積極的質問10%)
 ・レポートのみの場合:90~100%(+講義時の態度や積極的質問10%)
上記4種類の方法で成績評価を行う考えである。なおインターネットでの「コピペ」を防ぐために、レポートの海大は高橋が配布した文献の内容読解を中心としたものとなる。またレポート課題の論文は日本語だけではなく英語の論文も考えている(指定した期日を過ぎてのレポート提出は受け付けない)。講義日の開始時に回収する。従って、友達に依頼された分の回収は受け付けない。
*なお正当な理由で受験できなかった人は、一週間以内に教務課に届け出ること(証明書等の提示が必要)。
 次に評価の基準については、筆記による定期試験・レポート共に①問題の趣旨を正確に把握できているか、②過不足なく記述されているか、➂史実関係を正確に把握・理解出来ているか、④事実と意見を明確に書き分け、意見の根拠となる理由を明示しているか、⑤筋の通った論理的な日本語で記述されている
か、を要点とする。なおフィードバックは、リアクションペーパー実施後1~2週間後をめどに教場内での解説、或はLMS上で実施予定である。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書やや特殊なテーマと内容となるので、特定の教科書は用いず、高橋が作成したレジュメを配布する。
参考文献『世界史リブレット25 海の道と東西の出会い』青木康征山川出版社

準備学修の内容

 この項目では「学習」ではなく「学修」という語がつかわれていることに注意して欲しい。「学習」とは簡単に言うと教室で椅子に座って教員の話を聞き板書された内容をノートに写す、つまり「受け身」の学び方を指す。一方の「学修」の場合、一定の課程にしたがって知識や技術を学んで修得することを意味し、そこには「身に付ける」という「能動的」で「積極的」な姿勢が存在する。このことを踏まえると、本講義の受講希望者は準備学修として、まず世界史が好きな諸君は、なぜ自分は世界史に魅かれているのか、自分は歴史の講義を通して何を学び習得したいのかということを、反対に世界史が苦手な諸君は、なぜ自分は歴史が苦手なのか、これまで自分は歴史の授業をどのような姿勢で受けて来たのか、ということを考えて600字程度にまとめ、本講義で使用するノートに記しておいて貰いたい。次に世界史・日本史といった教科分野にとらわれず、メディアで取り上げられる報道の中に歴史的な問題が関わっているものがあるか否かについて注意を払い、新聞記事の場合にはそれを切り抜いて保存して欲しい。その上で講談社現代新書・岩波新書・中公新書・文春新書の中から時代・分野を問わずに歴史関係の本を1冊、時間をかけて読み、歴史を学ぶ事の意義・歴史的な考え方を自分なりに学んで欲しい。

その他履修上の注意事項

 本講義は外国史ではあるが、「授業の概要」で記したように、日本史とも連携した内容となるので、種子島へのポルトガル人の漂着から鎖国にいたる時代までの日本史を、教科書・年表を使って再確認しておくこと。具体的には西欧勢力の日本進出に対して、その時どきの日本の政権はどのように対応したのか、という点に特に注意を払って復習し、自分なりに重要と考えた部分を、本講義で使用予定のノートに書き出しておくこと。歴史学は様々な分野の研究領域・成果に関わっているので、政治学・経済学・法学・語学などに関する知識も、他の講義を通じて同時に学ぶことを勧める。
 講義中に必ず守ってもらうべき「規範事項」は、次の諸点である。
①「おしゃべり」「電話」「メール」は厳禁とする。スマホ、携帯はマナーモードにして貰う。
②受講態度=遅刻、私語、内職、講義の途中退室、やる気のない態度や姿勢(イヤホンやヘッドホンを着用し、椅子にだらしなく腰掛けるなどその他)の悪い学生、真面目に講義を受けようとしている学生の気力に水を差すような言動をする学生については厳しく対処する。
➂抜き打ちでの出席調査、小試験を実施する際に、授業を抜け出した友達に、スマホ・携帯・LINEを使って連絡をすることは認められない。
 その他、諸君に心得ておいて欲しいことを記すと、
①受講学生である諸君一人一人の態度や姿勢が、帝京大学の「今と将来」の社会的「評価」を、延いては諸君自身の能力・人間性・社会性そのものを決定する、ということを肝に銘じてほしい。
②少なくともこの講義では、分からない部分が多くても、将来の自分への自己投資と思って我慢強く講義に望 むことを自分に言い聞かせること。
➂学の授業は高校の授業の延長では無いので、その積もりのレベルと内容の講義をするので、心得ていて貰いたい。


授業内容

授業内容
第1回ガイダンス:講義内容の説明、守るべき規範事項の説明、講義の進め方その他について説明するので、この講義を登録受講予定の諸君は必ず出席すること。
授業:地域史とは何か(これまでの歴史学研究の主要な方法論および一国史的観点からの歴史研究の限界と、歴史空間としての地域史研究の重要性などについて学ぶ)。
第2回大航海時代とは何か:歴史学の中の大航海時代・大航海時代の前史・イタリア海洋都市とポルトガルの海外進出の基盤などを学ぶ。
第3回ヨーロッパ進出前後の日本の国際環境:西欧という新しい勢力を日本が迎え入れることが出来た前提条件などを学ぶ。
第4回Demarcación の設定:デマルカシオンの定義・ローマ教皇の政治介入・ポルトガルとスペインによる世界に分割などを学ぶ。
第5回布教保護権と日本:布教保護権の定義・布教保護権の内容と特質・日本に対するポルトガルの布教保護権の設定などを学ぶ。
第6回イエズス会の創設とその組織:ロヨラの生涯・イエズス会の創設事情・イエズス会の組織とその特徴などを学ぶ。
第7回イエズス会の日本進出:ポルトガルと海外布教・イエズス会のアジア進出事情・日本のキリスト教受容の前提条件などを学ぶ。
第8回イエズス会の対日文化戦略⑴:文化適応主義戦略・中世カトリックのウスラ問題・イエズス会の対日文化戦略と祖先崇拝の遥任・イエ ズス会の対日文化戦略と利子徴収などを学ぶ。。
第9回イエズス会の対日文化戦略⑵:海外布教の問題点・イエズス会の仏教研究と神道研究・排耶書の展開と特徴などを学ぶ。。
第10回イエズス会宣教師と日本人:日本布教の問題点・日本人司祭の養成・在日イエズス会宣教師の日本人批判と差別などを学ぶ。
第11回イエズス会と世俗社会:ポルトガル国王とローマ教皇の経済援助とその実態・イエズス会宣教師の経済活動(貿易の斡旋・不動産の取得と経営・プロクラドール)・イエズス会宣教師の対日軍事活動(武器の調達配備・長崎の軍事要塞化)などを学ぶ。
第12回近世ヨーロッパの兵器産業:火器の使用・大砲と戦争・兵器産業国家スウェーデン・ヨーロッパ大陸内の武器取引などを学ぶ。
第13回日本をめぐる修道会間の抗争:フランシスコ会の成立・フランシスコ会の日本進出とイエズス会・日本布教をめぐるイエズス会とフランシスコ会の対立・ローマ教皇の裁定などを学ぶ。
第14回統一政権の対応:織田信長の対応・豊臣秀吉の対応・江戸幕府の対応などを学ぶ。
第15回まとめ:世界史の中の日本史(種子島へのポルトガル人の漂着と火縄銃伝来の世界史的意義などを学ぶ。)
試験(定期試験期間での実施もあり得る)。