Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:EDU-201
初等教育論 森  一平
選択必修  2単位
【教育文化】 18-1-1333-4234-005

1. 授業の概要(ねらい)

 初等教育とは、子どもたちの幼児期・児童期にほどこされる教育であり、子どもたちのその後の人生を決定的に方向づけかねない極めて重要な位置を占める教育段階である。それゆえ初等教育段階で教育にたずさわる教師たちは、そのことの責任の重さを自覚し、初等教育とは何か・初等教育ですべきことは何か・初等教育に何ができるかなどといった点について考えをめぐらせ、みずからの教育実践を絶えず反省していく必要がある。
 本講義では特に「教育機会の平等」という観点から、初等教育の理念、制度や歴史、そこで生じている問題、その解決策など、様々な知識と論点を学ぶことを通して、上述の諸点について明確な見通しを持てるようになることをめざす。

2.
授業の到達目標

 ①「教育機会の平等」とはどんな状態かを説明できる。
 ②「教育機会の平等」という観点から、初等教育の役割と責任について説明できる。
 ③「教育機会の平等」に関する日本の政策や実践の特殊性を説明できる。
 ④「教育機会の平等」に関する現代的問題について説明できる。
 ⑤④の問題に対する政治的・実践的解決策を構想できる。

3.
成績評価の方法および基準

 ・中間レポート:40%
 ・最終試験:60%

4.
教科書・参考書

 【テキスト】
  特に指定しない。毎回の講義でレジュメや資料を配布する。
 【参考文献】
  ・岡田昭人、2013、『教育の機会均等』学文社。
  ・苅谷剛彦、2009、『教育と平等――大衆教育社会はいかに生成したか』中公新書。
  ・宮寺晃夫編、2011、『再検討 教育機会の平等』岩波書店。
  ・佐藤学ら編、2016、『《岩波講座》教育 変革への展望2 社会のなかの教育』岩波書店。

5.
準備学修の内容

 ・毎回の講義内容はたがいに関連しあっており、すでに講義した内容を前提にそれ以降の講義がおこなわれる。受講者は前回の講義で配布された資料を読み込み、充分に復習したうえで次回の講義に臨むこと。
 ・あらかじめ資料や文献を配布し、その読解を宿題とすることがある。その場合にはただ機械的に読むのではなく、そこから自分なりの意見を引き出すような読みをおこなうこと。

6.
その他履修上の注意事項

 ・意見を求めたとき、臆さず進んで意見を表明するような積極的な態度で参加してほしい。
 ・理由なく講義を欠席した場合、その回の資料は再配布しないので注意すること。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 オリエンテーション――公教育としての初等教育、その最重要理念としての機会平等
【第2回】
 教育機会平等論の基礎(1)――教育の機会平等とは何か
【第3回】
 教育機会平等論の基礎(2)――教育の機会平等をめぐる概念と理論
【第4回】
 日本における教育機会平等の歴史(1)――資源配分政策と教育機会の平等
【第5回】
 日本における教育機会平等の歴史(2)――戦前における「失敗」と戦後「標準化政策」
【第6回】
 日本における教育機会平等の歴史(3)――アメリカとの比較:資源配分政策と背後思想をめぐって
【第7回】
 日本における教育機会平等の歴史(4)――意図せざる結果としての「標準法の世界」
【第8回】
 日本における教育機会平等の歴史(5)――標準化政策の帰結としての「面の平等」
【第9回】
 教育機会の平等と個性化教育(1)――愛知県東浦町立緒川小学校の実践
【第10回】
 教育機会の平等と個性化教育(2)――石浜西小学校への継承とその文脈的意義
【第11回】
 教育機会の平等と個性化教育(3)――教育機会「不平等」論から見た個性化教育の可能性
【第12回】
 格差・貧困の打開策(1)――日本の教育政策の展開と能力主義の新たな諸相
【第13回】
 格差・貧困の打開策(2)――「死」の選別・配分をめぐって
【第14回】
 格差・貧困の打開策(3)――「教育」と「福祉」を結び合わせる必要性
【第15回】
 おわりに――講義全体のまとめと発展
 (注:上記計画は、受講者の学習状況や問題関心に応じて変更することがあります。)