Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:PSY-201
心理学基礎文献研究 I 岡本 潤子
必修  2単位
【心理学科】 18-1-1360-3763-005

1. 授業の概要(ねらい)

 犯罪行為に対する処罰の判断と行使とを国家に付託するのは,社会の秩序を維持するための仕組みだったはずです。被害者は,自身の被害を申告し,被疑者が正当な判断により妥当な処罰を受けることを期待します。被害者は,被疑者の処罰について,直接手を下す必要もなく,また,その権利もありません。そして,自身の受けた被害については,別途民事手続きによって損害の回復を図ります。
 様々な要因により,この仕組みに対する不満が声高に言われるようになっています。特に,公開の法廷で審理される成人の事件と異なり,非公開で行われる未成年の犯罪行為を扱う家庭裁判所の審理では,被害者の権利よりも被疑少年の権利の方が守られている,というような主張も聞かれます。 しかし,被害者と犯罪者の思いは,果たして,永遠に平行線をたどるのでしょうか。被害者と犯罪者との対話によって,解決されるものはないでしょうか。
 授業では,修復的司法についての研究者と,各現場の専門家たちによるテキストを丁寧に読み進めます,社会における犯罪・非行,被害者の置かれた立場についても考えていきます。具体的には,班別に担当箇所を分担して発表し,討論の司会をしていきます。
 あまり触れる機会がなかったであろう「修復的司法」についての学びを通して,主張の異なる著者らがどのような立ち位置から記しているのかをクリティカルに読むことを体験していきます。春学期の心理学基礎文献研究Ⅰでは,クリティカルな読みと,発表のスキルを身につけることも学修のねらいとなります。

2.
授業の到達目標

 ① 修復的司法の意味・意義について理解し,説明することができる。
 ② 著者の立ち位置を意識してテキストを読みこみ,適切に発表し,また,関心を持って討論に参加できる。
 ③ テキストの内容や討論を生かし,自分なりに考え,意見を形成できる。

3.
成績評価の方法および基準

 授業への参加状況(振り返りシートの提出と内容,討論への参加の状況)(40%),発表担当のときの資料及び発表の内容(30%),レポート(30%)を総合的に評価します。

4.
教科書・参考書

 藤岡淳子編『被害者と加害者の対話による回復を求めて』誠信書房

5.
準備学修の内容

 発表者であるか否かに関わらず,事前にテキストを読み,自分なりの問いを立てて授業に臨んでください。
 発表の準備は,班ごとに工夫して行いますが,時間外に行う必要があります。

6.
その他履修上の注意事項

 テキストは1年間使用しますので,購入することが必要です。いわゆる入門書ではないので,これまでに犯罪や非行についての授業を履修していない人には,少し難しい内容です。テキストを読むスピードはあまり急がず,十分に解説を入れながら進めていく予定ですが,疑問点は進んで調べ,また,質問をするなどの,積極的な参加を期待します。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション。発表の分担決めなど。
【第2回】
 犯罪手続きの流れ,基本的法律や処罰の種類などについての授業
【第3回】
 第1章 犯罪をめぐる「体験」について考える(岡本が発表)
【第4回】
 発表と討論① 第2章 修復的司法とは
【第5回】
 発表と討論② 第3章 被害者加害者対話とは
【第6回】
 まとめと討論
【第7回】
 発表と討論③ 第4章 当事者はVOMについてどう考えるか(第1節)
【第8回】
 発表と討論④ 第4章 当事者はVOMについてどう考えるか(第2節)
【第9回】
 発表と討論⑤ 第5章 警察における修復的司法の現状と課題
【第10回】
 まとめと討論
【第11回】
 発表と討論⑥ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第1節前半
【第12回】
 発表と討論⑦ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第1節後半
【第13回】
 発表と討論⑧ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第2節
【第14回】
 まとめと討論
【第15回】
 春期全体のまとめ