Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:
超域表象論特講 I 大野 雅子
選択  2単位
【超域文化専攻】 18-1-1410-0109-011

1. 授業の概要(ねらい)

 この授業においては、ヨーロッパの文学と芸術における「愛」の表象を探求する。イタリア・ルネッサンスにおいて、ティツィアーノが描いた「聖なる愛」と「俗なる愛」、ボッティチェリが描いた「天上の美」と「地上の美」。「宮廷風恋愛」は突如として12世紀のフランスに誕生したと言われる。イギリス文学の歴史を辿れば、ヨーロッパ的「天上の女性像」は、シェイクスピアのロマンス劇に見られるような「結婚愛」によって止揚され、18世紀に至ると、プロテスタンティズムが「ロマンティック・ラヴ」の観念を生み出す。一方、愛と死との両面価値的関係性は「エロス」として奥底に流れ続ける。その怪しげな魅力は日本の三島由紀夫をも捉えた。また、フロイトの言う「ヒステリー」が女性特有のものとされるのもエロスと関係が深い。このように、ヨーロッパに脈流のように流れる複数の「愛」の伝統を主要な文学作品と批評とを渉猟しながら学んでゆく。同時に、様々な批評を通じて「表象」に対する理解を深める。

2.
授業の到達目標

 1.ヨーロッパの文学と芸術についての知識を修得する。
 2.ヨーロッパの文学と芸術における「愛」の表象を学ぶ。
 3.「表象」について理解する。
 4.批評的観点から文学作品を読むことによって思考力を養う。
 5.英語の速読力を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 授業内提出物20%、期末テスト20%、発表60%

4.
教科書・参考書

 参考書:高階秀爾『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫)、パノフスキー『イコノロジー研究(上下)』(ちくま学芸文庫)、新倉俊一『ヨーロッパ中世人の世界』(ちくま学芸文庫)、ポール・ド・マン『盲目と洞察』(月曜社)、C.S.ルイス『愛とアレゴリー』(筑摩叢書)、ジョルジュ・バタイユ『エロティシズム』(ちくま学芸文庫)、三島由紀夫『春の雪』(新潮文庫)、ローレンス・ストーン『家族・性・結婚の社会史』(勁草書房)、ロマン・ヤコブソン『ヤコブソン・セレクション』(平凡社)、アウエルバッハ『ミメーシス(上下)』(ちくま学芸文庫)、ジョン・ミルトン『失楽園(上下)』(岩波文庫)、ブロイアー、フロイト『ヒステリー研究』(ちくま学芸文庫)

5.
準備学修の内容

 毎回の授業で発表できるように準備する。

6.
その他履修上の注意事項

 授業は学生の発表が中心である。受け身的に知識を得ようとするのではなく、自ら探求する精神が重要である。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 授業説明
【第2回】
 ティツィアーノの「聖なる愛と俗なる愛」における「天上の愛」と「地上の愛」の表象
【第3回】
 ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」と「春」におけるネオ・プラトニズムの表象
【第4回】
 『バラ物語』における愛の表象
【第5回】
 宮廷風恋愛
【第6回】
 C.S.ルイスの批評:愛のアレゴリー
【第7回】
 バタイユの批評:エロティシズム
【第8回】
 三島由紀夫における禁忌と性
【第9回】
 ロマンティック・ラヴの誕生
【第10回】
 ポール・ド・マンの批評:アレゴリーとシンボル
【第11回】
 ヤコブソンの批評:メタファーとメトニミー
【第12回】
 アウエルバッハの批評:ミメーシス
【第13回】
 ミルトンの『失楽園』におけるアダムとイヴの表象
【第14回】
 フロイトの批評:女性とヒステリー
【第15回】
 まとめと期末テスト